表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/110

23 いつの間にか、君は男の子だった

「ぬぬぬぬぬぬ」

 チュチュは、戸棚に腕を伸ばし、唸っていた。

 けれど、目的のものに届かないばかりか、戸棚の目的の棚までも手が届かない。

 どう頑張っても、戸棚に張り付くばかりだ。


「どれ?」

「上から2段目の〜、奥の〜、ローズマリーの瓶」

「どうぞ」

 チュチュの腕の中に、ローズマリーの瓶が降ってくる。

 チュチュは、それを見て、頬を膨らませた。

「チュチュはちっちゃいからしょうがないよ」

「でもメンテに取ってもらうなんて」

 振り向くと、ちょっと偉そうなツンとした顔で、メンテがチュチュを見下ろしていた。

「くやしい」

 するとメンテが、「フフッ」と嬉しそうに笑う。

「ついこの間まではアタシよりず〜〜〜っとちっちゃかったのに」

「……いつの話してるの。身長超してからかなり経つけど」


 お喋りしながら、二人はキッチンへ向き直る。

 今日の夕食当番は、チュチュとメンテだ。


「ちっちゃい頃は、可愛かったんだけどなぁ」

「今でもかわいい弟分でしょ」

「かわいくない〜〜〜」

 ぷっと頬を膨らませる。


 フライパンの中で、鶏肉がパチパチと弾ける。

 メンテは、隣で人参のスープを作っている。


 そういえば、昔は、双子は料理なんてできなかったんだっけ。

 メンテもリナリも成長して、食材も以前よりずっと必要になった。

 特にメンテだ。

 ……男の子だもんね。


 小さく寄り添うように学園へやってきた双子と出会って、頼りになるお姉ちゃんで居たいと、そう思い続けてきた。

 上手くできているだろうか。


「チュチュは今でも、頼りになるお姉さんだよ」


 どうやら、同じことを考えていたようだ。


「それは、光栄だねぇ」


「でも、もう、ぼくも頼りになると思うよ」


 頼りに。

 そう。料理だって魔術だって、もう一人分の仕事を任せられるくらいには頼りになることを、チュチュはとっくに知っている。


「うん。もちろん。頼りにしてるよ」


「困ったときは、いつだって頼っていいんだ。ぼくなら、いつだってここにいるから」


「うん」


 頼りにしている。

 もちろん頼りにはしているけど、だからって甘えられる相手ではないから。

 メンテの顔を見ることはせずに、じっと焼けていく鶏肉を眺めた。

 パチパチと、小さく爆ぜる音だけが聞こえた。


「いつまでも、頑張ってお姉ちゃんでいなくても、いいよ」


「……うん」


 そうは簡単に言っても、お姉ちゃん気分がそうそう抜けるわけもない。

 それとも、どんどん追い抜かされて、もうお姉ちゃんで居られなくなる日が来るんだろうか。

 そうなったら、……寂しくなるだろうか。


「ハーブの棚だって、ぼくならもう届くよ」

「うん。……じゃあそれはお願いしよっかな」

メンテは本編よりも今の方が出番があります!

現在13歳!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ