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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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20/110

20 デートしようよ(4)

 馬が草原を走る。


 エマとヴァルを乗せた馬は、町へ出るのとは反対方向、シュバルツの屋敷の方角へ走っていた。

 空ばかりが見える景色。

 風を切る音。


 顔に当たる風は涼しくて、火照った頬を冷ますのにちょうどよかった。


 次第にシュバルツの屋敷が見え、そして通り過ぎていった。

 どこまで来たのか、山が見え、木々が生い茂る場所が見えた。

 馬は、林の中へ入っていく。


 怖くは、ない。


 木々の間から陽が差し、花が咲く。


 馬は、速度を落とし、カポカポと歩く。

 相変わらず、ヴァルのホールド加減はそのままだ。


「綺麗なところだね」

「だろ?」

 ヴァルはどことなく得意そうだ。

 お気に入りの場所に連れてきてくれたのかもしれない。


 程なくして、目の前がチカチカと輝くのが見えた。

「水?」

「ああ」

 目の前に現れたのは、小さな泉だった。

 透き通る水。

 シュバルツは綺麗なものが多いと、父が言っていたっけ。


 エマは、泉の縁にしゃがみこんだ。

「触ってもいい?」

「ああ。落ちるなよ」

 ヴァルは、馬に泉の水を飲ませている。


 湧水、なのかな。

 水面は微かに波打っており、キラキラと陽の光に反射し輝いた。

「あ、けっこう冷たい」

 ぴしゃぴしゃと触れる水は、暖かな空気に反してとても冷たい。

 ブーツを脱いで裸足になると、爪先に水を触れさせる。

 水が、パシャパシャと弾ける。


「冷たーーーーーい!」


「おい、本当に落ちるなよ」

「はぁああああああああ!!!!!」

 “はぁい”と返事をしようとした、その矢先だった。

「おいっ」

 石の上で足を滑らせる。


 落ちる……!


 ぎゅっと目を瞑った時。

 ぐっと腕を引かれる。


「…………!!」


 地面に倒れ込むエマの代わりに、腕を引いたヴァルが泉に落ちていく。

「ヴァル……!」


 バッシャーン!!


 激しい音を立てて、ヴァルが水の中へ落ちた。

 幸い、泉のその辺りはそれほど深くなく、ヴァルがびしょびしょになるだけで済んだ。

「冷てぇ……」


「ふっ、ははっ」

 笑いながら、ザブザブと泉の中に入り込み、ヴァルを助け起こす。

「お前が入ってきてどうするんだよ……。俺の苦労を……」

「うん、ありがとう」

 言いながら、どうしても、そんな姿のヴァルを見るのは初めてなので、笑いがこぼれてしまう。

 腕を引き、ヴァルが立つと、ヴァルがつけたマントから水がぼたぼたと滴った。

 ザボ……ザボ……、という音をたてながら、なんとかヴァルが岸に辿り着く。

 ヴァルがマントを近くの木にかけるのを見届けてから、エマは水の中で遊び始めた。


「冷たいけど、少しなら遊べそう!」

「それに倣って、ヴァルもバチャバチャと水の中に入ってきた。


 二人、水を蹴飛ばしながら、しばらくそこで遊んでいた。

 馬は草を喰み、ぶるぶると鼻を震わせる。


 しばらく遊んだあと、草地に二人、腰を下ろした。

「じゃあ、エマ、火の方な」

「わ、わかった」

 左手を突き出し、集中。


「炎」


 エマが唱えると、左手に着けた腕輪の前に魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 左手前方に、小さな、といってもマッチの炎よりは大きな火の塊が現れた。


 そこへ重ねるように、ヴァルが、


「ワール・ウィンド」


 と唱える。

 ヴァルが持つ短剣の前に魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 すると、エマの炎を取り巻くように、そよそよとした風が巻き起こった。

 火で温められた空気が、さやさやと周りに振りまかれる。

「あったかーい」

 ちょっと緩めのドライヤーといった感じ。

「もうちょっと大きな火が出ればよかったんだけど」

「いや、数分もつだろ?かなり頑張ってるよ」

 それでも、意外と身体も服も温まる。


「今日はたくさん遊んじゃったね」

「たまにはこういうのもいいな」

 マントの様子を見に行くヴァルの後を、ちょこちょこと付いて行く。


「ねぇ、ヴァル」

「……ん?」

 エマが予想外に真面目な顔をしているので、ヴァルもそれにつられ、真面目な顔になった。

「これってさ、」

 きゅっと、ヴァルの袖を掴んだ。

「デートってことで……、いいんだよね?」


「へ…………?」


 その瞬間、ヴァルは、素っ頓狂な声を上げて固まった。

本編が終わっても、もちろん仲良しですよ!

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