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15 ティータイム

 その日は、女子三人、チュチュの部屋でお茶を飲んでいた。


 チュチュが黙って、お茶を飲む。

 ストローから口を離した。


「…………」

 その様子を、エマとリナリが黙って窺っていた。


「アタシ……、先生に好きだって言っちゃった」


「…………!!!!」


 リナリが目をキラキラさせて驚いた顔をしたし、エマが齧っていたクッキーを喉に詰めそうになった。

「ごほっごほっ」

「エマ、大丈夫……?」

「……っだ……」

 落ち着いたエマが顔を上げる。


「大丈夫じゃないよ……なんでそんな事になったの」


「なんか……言いたくなっちゃった?」

 にこっと二人に向けて笑顔を作る。


 エマが少し、心配そうな顔をした。

「それで、先生何て?」


 聞かれて、う〜〜〜〜〜ん、と思い出すそぶりをする。


「珍しい声を聞いた、かな」


 好きだと言った瞬間、

「…………へ?」

 と、シエロは少し、驚いた表情をした。

 けれど、すぐに持ち直して、笑いかけてくれた。

 その顔が、いつになく可愛く見えて。

 その顔を見て少し泣きそうになって。

 泣きそうな顔のままで笑って。


 それで終わりだった。


「……それだけ」


 そう。

 付き合って欲しいでもなく、返事があるわけでもなく。


「…………!」

 もうすっかり潤んだ瞳で、リナリがチュチュの手を両手で握りしめる。


「少しでも、先生の心のどこかに引っかかれば、それでいい」

 静かにそう言ったチュチュに、エマが優しく微笑んだ。


 それから3人は、エマが「デートがしたい」という話で盛り上がって、チュチュの話はそれきりになった。


 数日後の実習の時間。

 また、先生と二人、実習室での実習だ。


 ガチャ。


 また参考書を手に実習室に入ったチュチュは、床を見た。


 ……先生、また寝ちゃってる。


 そこには、シエロがまた床に仰向けになって寝ていた。

 そばに座り込む。

 金色の髪も白いマントも、床に無造作にぱっさりと広がっている。

 ……ほんと、意外と大雑把なんだから。


「せーんせ、時間だよ」


 呼びかけるけれど、起きる気配がない。


「むぼーび」


 窓から陽の光が差す。

 金色の睫毛が、光の中で輝く。


「……ちゅーしちゃうぞー」


 小さい声で呟く。


 と、シエロが少しぎょっとした顔でこちらを見た。

「……チュチュ」


 起きちゃった。


 聞こえてしまった。

 ドキドキしたけれど、少し強気な顔で、シエロに笑いかけた。


 シエロが、困った顔でチュチュを見上げる。


 その顔が可愛く見えてしまったものだから。


 好きだって伝えたところで、どんどん好きになっていってしまうから。


 ねぇ、先生。まだ、好きでいていいかな。


 ずっとずっと好きでいても、そばに居ていいかな。

ここで一旦区切りますが、これで終わりにはならないです。続きもお楽しみに〜!

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