表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/110

1 もし、好きだって言ったら

「ねえ、先生。もし、アタシが、先生のこと好きだって言ったら、どうする?」


 それは、とても明るい青い空が窓から覗く、長閑な午後のことだった。

 季節はすっかり春で、紅茶をアイスにするかホットにするか、少し悩んでしまうくらい暖かな日。

 食堂で、偶然二人になった。

 そこでの雑談の中で、チュチュはつい、シエロに向かって口にしてしまったのだ。


 言ってしまった……。


 シエロが怪訝な顔をする。

「もちろん、弟子が師匠を慕うのは当たり前だけど?」

 一呼吸おいて、シエロは言葉を続ける。

「それは……、恋愛対象として?」


 そうだよ。


「そうそう!もしもの話だよ?」

 努めて、明るい声を出す。

 せめて冗談として受け止めてもらえるように。


 大きなテーブルの斜め向かいに座るシエロは、いつもと同じように、にっこりと笑顔を作る。

 二人の目の前にあるミルクティーの表面に光が落ちる。

 シエロの金色の髪が揺らいで、青空のような青い瞳が深く輝く。

 いつもと同じ、天使みたいな綺麗な笑顔。

 そして、シエロはこう言った。


「どうにもならないね」


 どうにも、ならない…………。


「だって、僕と君じゃ、違いすぎるだろう?君が僕をどう思ってようと、好きだろうと嫌いだろうと、今と何も変わらないよ。僕が君を恋愛対象として見ることはないからね」


 当たり前だ。

 学園の先生と生徒という関係。

 幼い頃から師匠と弟子の関係。

 近付くことはない14歳差の年齢。


 言っちゃいけないことは気付いてたはずなのに。

 言ってもどうにもならないことは気付いてたはずなのに。


 どうしてこんなこと言ってしまったんだろう。


 それでも、現実を突きつけられるのは、……きつい。


 そんな現実を前に、アタシは笑うしかできなかった。


「そりゃ、そうだよね〜」


 アハハって笑う。

 バレないように。

 バレないように。


 頭の奥を真っ白にしながら。


 泣かないように、息をして。


 笑って。


 この関係が壊れないように。


「こんなかわいい美少女に目がいかないなんて、先生は見る目がないなぁ〜」


 面白そうに見えるように笑いながら、チュチュは立ち上がった。

 薄い茶色のふわふわツインテールが揺れる。

「そろそろ行くね」

 にこっとシエロに笑いかけると、ひらひらと手を振った。


 シエロも、いつもの優しい顔で手を振り返す。


 そのまま、いつもの足取りで、食堂から廊下に出ると、パタンと小気味よい音をさせて扉を閉めた。


 こんなことで、泣かない。

 こんな分かりきってた事で。


 目をウルウルさせながら、顔を上げると、

「え?」

 そこにはメンテが居た。


「チュチュ……」


 メンテは、チュチュのエメラルドのような深い浅葱色の瞳が揺らぐのを見て、小さく呟いた。

 けれど、その顔は見なかったことにしたかのように、そのまますれ違う。


 チュチュも、そのまま目を逸らし、階段へと歩を進めた。

さて、昨日ぶりの新連載!

本編の方は読んでくださったでしょうか?

読んだ人は、ここまで付いてきてくれてありがとう!

読んでない人は、興味があったら読んでほしいな!


この物語は『転生少女は過去の英雄に恋をする』の続編です。

番外編的な位置づけで、あくまで本編は『転生少女』の方。


今回は、本編直後からの物語。

本編主役エマとヴァルの隣にいた、チュチュとシエロくんが主役です。

どうぞよろしくね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ