005(ドリフトデート本番)
峠のドリフトは基本的に登りのみ。下りはリスキーだ。認可峠に来るドライバーは楽しくドリフトが出来れば良いと考えてるか、サーキット走行のトレーニングか。大まかにこの二種に別れる。
グリップ走行で感覚を掴んだアキ。リュウとアキはまた5連コーナーを下った所でスピンターンする。信号機は青。スタートだ。
リュウはGTRを加速させて、コーナー手前でブレーキング、クラッチを切る、ステアリングをインに切った。これを同時にやる。そしてアクセルを吹かし、クラッチを一気に繋げ、リアタイヤを流すと同時にステアリングのカウンターを当てる。クラッチ蹴りというきっかけだ。あとはアクセルとステアリングのコントロールでドリフトは出来る。
アキはリュウのGTRが四駆でないことを見抜いた。リュウはGTRの四輪駆動システム、アテーサETSを解除してある。R32型だけに許されたシステムが未完成が故にできる芸当だ。
「速かねぇ、リュウ君。でもうちも負けとらんよ」
アキもクラッチ蹴りでドリフトして、GTRにぴったり着いていく。やはり、インプレッサのが峠では分がある。
リュウは次のコーナーのS字を繋げた。慣性の法則だ。
「すごかねぇ。ガチ勢はリュウ君の方やん。そんなテクニック魅せられたら好いてしまうとよ」
アキはS字を繋げずに滑っていく。そして4つ目のコーナー。リュウがグリップ走行の時に減速した所だ。コース幅の割りにスピードを落とす。アキは見抜いた。ここが魔のコーナーだと。
「なるほど~。リュウ君、優しかね」
4つ目のコーナーはバンクがマイナスだ。つまりコーナーで外側に引っ張られるようにタイヤが滑ってしまう。ドライバーからは気づきづらいから知らぬ間にオーバースピードでコーナーに突っ込み、側壁にぶつけてしまう。アキはそこまで見抜いていた。
「危なかコーナーや。だからスピードを落としたやね」
リュウとアキは最終コーナーまで無事に滑りきった。二人は左側の駐車場に車を停める。アキはインプレッサを降りて、GTRの運転席側のウインドウをノックする。リュウはウインドウを開けた。
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「リュウ君、すごかよ~」
「アキだってすごいよ。ゼロバンクの第4コーナーで無茶しなかったのに、全く千切れなかった」
「リュウ君がヒントをくれたからやけん。ありがと」
「あれで解ってしまうとはな。すごいセンスだ」
「フフフ」
ーーリュウとアキは休憩を挟みながら、3時間目一杯遊んだ。辺りももう暗くなってきた。タイヤの山ももうない。
リュウは真っ直ぐ帰ることにした。アキを飲みに誘ったが、寄る所があると断られてしまった。