046(危険な予感)
ーーこの日、リュウは初めてアナザーシープで眠った。タニア国王と同じベッドで。天蓋付きのキングサイズのベッドだ。タニア国王は今まで寂しかった。だから一緒に寝てくれる伴侶が居るだけでこんなにも心が満たされるのかと喜んだ。25歳なのに無邪気にはしゃぐタニア国王。リュウはそんなタニア国王がいとおしい。シャッとカーテンを開けるリュウ。
「おはよ。飯食ったら機動部隊の視察に行こうぜ」
「おはよう。また空を飛んで行く。頼んだぞ」
「ああ、任せろ」
部屋に朝食が運ばれてきた。朝からフルコースかと思いきや、数種類のパンと赤ワインだけだった。タニア国王はベッドに腰掛け、パンをかじり、赤ワインで流し込む。リュウは赤ワインを飲まず、パンだけにしといた。ゼニア姫が言った通り、城のパンはあまり美味しくなかった。タニア国王と一緒に作った餃子パンは美味しかったが。
ーーその頃、地球では憲一郎が動いていた。リュウがアナザーシープに懐柔されてしまった。リュウは地球サイドでは希望の星だった。憲一郎はリモートで鬼軍曹達から聞き取りをする。だが収穫はなし。鬼軍曹達は未だに手足が犬のままだった。憲一郎はリュウクラスの戦える者を選抜する。すると、日本国内閣総理大臣から連絡が入った。
「総理、久しぶりじゃな」
『憲一郎さんも元気そうで良かった。手短に話します』
「ああ。クローンの事は聞いとるな?」
『はい。稲葉リュウが使えなくなったと内閣情報調査室の方から上がってきました』
「他にアナザーシープで戦える者はおらんのか?」
『その前に、内閣情報調査室のエージェントがアナザーシープにゴミを棄てるなと言っていた。これ以上は全面戦争になると』
「ならアナザーシープを滅ぼすしかあるまい」
『やはり憲一郎さんは恐ろしい方だ。全面戦争は避けられないか。アメリカ系日本人で数人、訓練を受けた者が居ます。ゴミ棄て担当の者です』
「その者達を呼び寄せてくれ」
『一人はもう手元に居ます。奥の手として取って置きたかったが使います』
「そうしてくれ」
『それでは失礼します』
「身体に気を付けてな」
『はい』
電話を終えた総理大臣。すぐに特殊部隊の編成を通達する。今度は鬼軍曹達などのヘッポコ部隊と違い、正真正銘の特殊部隊だ。目的はタニア国王の殺害。
ヤコは悩んでいた。上に上げた情報でリュウがピンチに陥らないか心配していた。アメリカ仕込みの特殊部隊編成の一報も聞いた。ヤコは特殊部隊突入前に特使としてタニア国王に会わせてくれと上に掛け合った。上司であるマスターは更に上の者と話して、ヤコの意見が通った。ヤコはすぐにリュウのマンションへ行く。そして、アキの部屋を訪ねた。ヤコとアキは再び手を組む。アキもリュウの事が諦められないでいた。