033(第2の三角関係)
ーーリュウはタニア国王と一緒に王座の間で結婚式の日取りを相談していた。リュウはヤコの事をすっかり忘れてる。タニア国王一直線だ。出会ってその日に結婚をするには決め手が多くあった。だが、リュウは南木曽峠が恋しい。ドリフトがしたい。
「タ~ニア」
「なぁに?」
「一旦、里帰りさせてくれないかな」
「逃がさないよ」
「束縛厳しいー。地球には良い山があってな」
「登山が趣味なのか?」
「いや。モータースポーツだ」
「自動車か? それともバイク?」
「自動車だよ。街では見掛けないが、草原地帯で武装した車とバトッたよ」
「我が軍の機動部隊ではないか。演習中に全滅したようだが」
「わりぃ、俺が倒しちゃった」
「全く。魔力が強力過ぎるのも問題だな」
「で、里帰りは?」
「必ず帰って来るか? 約束出来るか?」
「勿論」
すると、1匹の柴犬が王座の間に入ってきた。
「わんわんお! わんわんお!」
これはヤコ犬だ。リュウは気付いてない。タニア国王が立ち上がり、ヤコ犬を抱き寄せた。
「可愛いワンちゃん。どこから来たの?」
「地球から」
「怖っ。喋った」
ヤコ犬からしたらタイミングが良かった。リュウとタニア国王が一緒に居る。ヤコ犬は尻尾を振りながらリュウの元へ駆け寄る。
「わんわんお! わんわんお!」
「お前は魔界の犬かな?」
「リュウ、目を覚まして。私よ、ヤコだよ」
「ヤコだと!?」
ボン。ヤコは柴犬から普段の姿に戻る。
「リュウ。私と共に帰ろ」
「本当にヤコだ。俺はヤコの元へは帰らないよ。里帰りはするけど」
「目を覚ましてよ。アナザーシープの連中は敵よ」
タニア国王は、リュウとヤコの間に入る。
「リュウ! この女はそなたのなんだ?」
「元カノだよ」
「そうか」
タニア国王はなんだか悔しい気持ちになった。ヤコも悔しい気持ちになる。リュウの元カノ発言で。
「元カノって何よ! まだ付き合ってるでしょ!」
「ヤコ…………」
リュウとヤコが視線を交わしたのをタニア国王は見逃さなかった。
「ダートスリープ」
タニア国王はヤコに魔法を掛けた。そして、パンパン。タニア国王が手を叩くと、近衛兵が数人現れた。
「この女を牢屋に」
「「はっ!」」
ヤコは抵抗むなしく、投獄されてしまった。