019(G退治)
リュウは起き上がる。ヤコはまだ夢の中だ。時間は深夜の3時だった。リュウは取り敢えず、アキの様子を見に行く。アキは呆然としていた。
「お姫様姿、似合ってたよ。これで信じてくれたかな?」
「うん。リュウ君、うち分かったとよ。悪いのは人間だって」
「それについては、じいちゃんに報告だな」
「おじいさんって寝る前に説明してくれた人の事?」
「俺の祖父、稲葉憲一郎」
「何でおじいさんはアナザーシープの事を知ってたと?」
「解らない。だが、地球のゴミを棄ててるってのは信憑性がある。俺達以外にもアナザーシープへ行ける奴がいるのは確実だ」
「…………仕事に行って来るたい」
「仕事?」
「眠らないとアナザーシープへ行けないたい。だったら起きてる間は働くとよ」
「ああ。アキはパン屋の看板娘だったな。今から行くのか?」
「アナザーシープに行く前にも言ったと思うけど、パン屋は朝早くの仕事やけん。今から行くとよ」
アキは起き上がり、リュウの方を向く。
「どした?」
「…………キスして」
「ゴキブリ」
「あっ! うち、そもそもゴキブリから逃げてきたんだ。燻煙剤を用意してほしいとよ」
「すぐ持ってくるよ。ちょっと待ってて」
リュウは上手くかわした。リュウは懐中電灯とマスターキーを持って部屋を出る。そして1階の倉庫に行く。扉をマスターキーで開けて懐中電灯で照らす。
「燻煙剤…………燻煙剤…………」
リュウは倉庫の上の段から探していく。すると、ゴキブリ用燻煙剤のパッケージを見つけた。
「あった。切れてたらコンビニに駆け込むところだったぜ」
リュウは倉庫の鍵を閉めて自分の部屋に戻ると、アキはドアの外で待っていた。そしてゴキブリ退治が始まった。リュウはアキの部屋に入り、燻煙剤を設置する。
「今のうちに装備を調えてくれ」
「分かったとよ」
アキはリビングからトートバッグを持って玄関に戻った。ゴキブリとエンカウントしないかドキドキおっかなびっくりしたが大丈夫だった。
「じゃあ焚くぞ」
「やっちまいな~」
リュウは燻煙剤を焚き、アキと共に部屋から退室した。
「これで大丈夫だからな」
「ありがと。流石、大家さんとよ。じゃあ行ってきます」
「行ってらー」
アキは徒歩で藤原パン店に向かった。リュウは自分の部屋に戻ると、ヤコがリビングで待っていた。