017(入れ代わり作戦)
ーーリュウ達は街に着くと着陸して茂みに身を隠して様子を見る。そこは中世ヨーロッパの様な世界だった。赤いレンガ造りの建物が並び、塔も聳え立っている。街歩く人々は皆、中世の格好している。犬もいる。
「さて。ここからどうやって進もうか」
「私達も似たような格好になる?」
「変装か。俺、騎士の格好が良いな」
「じゃあ私はお姫様ね。この子は従者」
ヤコはアキを指差す。それにアキはムッとした。
「うちがお姫様たい」
ボンッ。アキは魔法を使い、青色の華々しいドレスに変装した。
リュウも変装する。ボンッ。軽装の騎士に変装した。
ヤコも魔法を使い、ボンッ。みすぼらしい女中姿に変装してしまった。
「何で上手くいかないのよ~」
「別にいいじゃん。これで敵の奥深くを探れる。行こ」
「うん」
「えー」
リュウ達は茂みから出ると、城の従者達があちこち人探しをしながら近付いてくる。そして、一人の老執事がアキを見た。
「ゼニア姫、こちらに居ましたか。さあ、城に帰りましょう。軽々しく街に出ないでいただきたい。いいですね?」
「うちはゼニアじゃっ……」
リュウは咄嗟にアキに耳打ちをする。
「アキ、入れ代わり作戦だ」
「で、でも…………」
アキとゼニア姫は瓜二つだ。リュウは逆手に取って、アナザーシープの戦力を確認しようと考えてる。リュウはゼニア姫を知らないが。
老執事はリュウとヤコを見る。
「女。お前は城の者か?」
「え、ええ、まあ」
「男。お前はどこの部隊所属だ。近衛兵には見えんが」
「俺は勇者だ」
「おお! そなたが噂の勇者殿でありますか。失礼を致しました。地球人の殲滅は頼みましたぞ?」
「任せろ」
リュウは口から出任せを言う。何だか上手く事が運びそうだ。
「では、我がアナザーシープ城に案内致しましょう」
老執事はパンパンと手を叩く。すると、馬車がやって来た。
「ゼニア姫と勇者殿はお乗りください」
「私は?」
ヤコは嫌な予感がしている。
「女中、丁度いい。馬車のドアの前で四つん這いになりなさい」
「何でよ」
「ヤコ」
リュウはアイコンタクトする。ヤコは仕方なく言われた通りにする。
「では、ゼニア姫。女中を踏み台にして馬車にお乗りください」
「はーい。ごめんね」
アキは躊躇いなく、ヤコを踏み台に馬車に乗り込む。ピンヒールがヤコの背中に突き刺さる。
「いったー。覚えてなさいよ?」
「フフフ」
リュウはヤコを踏み台にせず、馬車に飛び乗る。老執事はヤコを退かして乗り込む。そしてリュウ達はアナザーシープ城へ向かう。ヤコは走って馬車を追いかける。