016(アナザーシープの街)
ーーアキは、リュウの夢の中に落ちていた。サバンナの草原に明るい空には星が煌めく。小高い岩山に登ると、遠くでR32スカイラインGTRのエキゾーストノートが聞こえる。
「リュウ君かな」
アキは音の方に向かって手を振る。チカチカ。ヘッドライトのパッシングが見えた。
「やっぱりリュウ君だ」
徐々に近付いていくGTR。リュウは岩山の近くにGTRを停める。
「アキ!」
「リュウ君!」
「GTRに乗って」
「うん」
「ちょっと待ってよ。あの子を車に乗せる気? 私は嫌よ」
「分かった。ヤコの意見を尊重しよう。インプレッサWRXSTI召喚」
ボンッとアキのインプレッサがGTRの隣に現れた。青色のボディーに十字の白いストライプが入ってる。
「アキ、悪いけどそのインプで後を着いてきて」
「分かったとよ」
アキはインプレッサに乗り、エンジンを掛ける。
リュウはGTRを発進させ、偵察を続ける。アキは後を着いてく。10分ほど直進してると目の前に街が見えてきた。2台は街に向かって走る。
「ねえ。あの子、アナザーシープだって信じてるの?」
「さあ、分からない。普通の夢の中だと思ってるかもね」
「戦力外ね」
「アキはドリフトのテクニックが一級品だ。戦力になるさ」
ヤコはふてくされてる。リュウはGTRを停める。
「どうしたの?」
「ここからは歩きで行こう。車だと目立つ」
リュウとヤコはGTRを降りる。アキもインプレッサを停めて降りた。
「リュウ君、どうしたと?」
「ここからは歩きだ。GTRとインプレッサ収納」
パッと2台が消えた。
「凄い。夢の中だとリュウ君は魔法使いと?」
「夢をコントロールするんだ。空を飛んでみて」
アキは飛べと念じると、フワッと体が浮く。
「わわ。初めて夢の中で自由に動ける」
「これがアナザーシープの世界だ。解ってくれたかな?」
「ちょっと信じるとよ」
「じゃあ行こうか」
リュウとヤコは街に向かって歩き出す。
「リュウ君、飛んで行った方が楽とよ」
アキは浮遊しながら宙返りする。その言葉にヤコはカチンと来た。
「ヤコが高い所は嫌だって言うからさ」
「私だって飛ぼうと思えば…………」
ヤコも飛ぼうとするが飛べない。潜在的に恐怖心があるからだ。
「ヤコ」
リュウはヤコをお姫様抱っこする。
「これなら良かろう。さ、街の偵察だ」