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第35話 レア魔獣との遭遇


 次の日、僕とイリーネはまだ暗い中、海岸を目指して歩いていた。


「潮風が気持ちいいですね~」

「うん、海がこんなに独特の匂いがするなんて知らなかったよ」


 僕は本の知識では手に入らない新鮮な驚きに嬉しさを感じていた。

 まだまだ僕の知らないことが世の中にいっぱいあるのだろう、そう考えるとワクワクしてくる。


「アルノーさんは海を見たことがないの?」


 前を歩いていたシーラが僕に疑問を投げかけた。


「うん、生まれ育った街から出たことがなくてね」

「へぇ、そりゃ気の毒にな。せっかくだからこの村で存分に海を楽しんで行けよ」


 シーラの横を歩いているライナーが振り返って言った。

 イリーネはニコニコしながら時折、僕の顔を覗き込んでくる。


「それにしても、こんな朝早くに起こして悪かったな。地引網を監視するだけなら俺だけでも良かったのに」

「母さんもああ見えて心配性だからね……兄貴だけじゃ心配になるのもわかるわ」

「俺ってそんなに信用ないのかよ……」


 ライナーはがっくりと肩を落とす。


「まぁ手に負えないようならギルドへ依頼を出すと言ってたし、まずは地引網ズタズタ事件の原因を探ろう……魔獣がいたら速攻逃げるぞ」


 気を取り直したライナーは、半ばやけ気味に歩く速度を速めた。

 僕たちもそれについていく。

 程なく砂浜に到着した僕らは、地引網のある方角を目を細めて見た。


「あの岩場付近に網を仕掛けているんですよね?」

「そうよ、ここからじゃ良く見えないわね、少し近づいてみましょう」


 僕の言葉にシーラが返答する。

 僕らはなるべく足音を立てないようにゆっくりと岩場に向かっていった。

 網までおよそ10メートルほどまで近づいた時、岩場の影から何やらもぞもぞと動く影を見つけた。


「ひっ!」


 ライナーが身体を硬直させ、声を上げた。


「兄貴、うるさい」

「す、すまん……」


 よく見ると岩自体が動いているように見える。

 僕はライナーから松明を受け取ると、ゆっくり近づきながら揺らめく明かりを照らした。

 影がぐぐぐっと持ちあがり、岩に見えたそれは巨大なひとつの塊であることがわかる。


「これ、もしかしてジャイアントシザークラブ?」


 シーラが巨大な塊を見て言った。

 よく見ると影の左右から腕のようなものが伸びており、先端のはさみで網の中を漁っている。


「もしかして、網にかかった魚を毎晩、捕食しに来ているのかな」

「そうか、それで左右のはさみで網を切り裂いてしまっているのね」

「この大きさのジャイアントシザークラブなら俺とシーラだけでも倒せそうだな。このまま討伐しちまうか」

「オーケー、兄貴!」


 そう言ってふたりは岩場のほうへ向かう。

 僕とイリーネは少し離れて様子を見ることにした。


「イリーネはあの魔獣、見たことある?」

「はい、ギルドの討伐依頼ランクは確か『D』くらいだったかと……それほど強い魔獣ではないようですよ」


 僕はイリーネの言葉に少し安心した。

 ライナーとシーラは腰に刺さった剣を抜くと、ジャイアントシザークラブの横から斬りつけた。


「おりゃああ!」


 ガキィン!


 暗闇に火花が散った。

 

 キシャアアアア!


 ジャイアントシザークラブの咆哮が辺りに響き渡る。

 その勢いのままふたりは様々な角度から剣を振り下ろした。


 ガキン! ガキィン!


 その都度火花が散り、一瞬ジャイアントシザークラブの甲羅が光って見える。

 それはまるで金に覆われたように輝いて見えた。

 ライナーとシーラは調子よく剣を振っていたが、何度目か剣を振り抜いた後に首を傾げだした。


「全然斬れないよ兄貴、コイツ、こんなに硬かったっけ?」

「こっちもだ、どうなってんだコイツ」


 その様子を見ていたイリーネが立ち上がって言った。


「もしかして……ジャイアントシザークラブじゃないのかも」

「そ、そうなの?」

「さっきから剣を振るたびに金色に光って見えるんです。ローレンツさんから借りた文献に、似たような記述があって」


 気が付くと辺りは少しずつ明るくなっており、魔獣の姿がぼんやりと見え始める。


「やっぱり! これはジャイアントシザークラブじゃありません! 目撃情報が少ないレアモンスター、ゴールドシェルクラブです!」


 イリーネの言葉にライナーとシーラが振り返った。


「なんだって!?」

「一回、離れてください! ゴールドシェルクラブは通常の攻撃では傷ひとつ付けられないくらい、頑丈な甲羅が特徴です。過去、一度だけ冒険者ギルドに討伐依頼が出回ったときは、依頼ランク『A』だったとか……」


 それを聞いてライナーとシーラが慌ててこちらへ逃げてくる。

 しかし怒りを買ったのか、ゴールドシェルクラブも凄いスピードでこちらへ近づき、ライナーの背中目掛けて右手を大きく振りかぶった。


「あ、危ない!」


 僕は慌ててライナーの前へ出ると、左手の甲に魔法陣を描いた。


鈍風の塊(ウィンド・マッセ)!」


 振り回されたゴールドシェルクラブの右腕を僕は左手でガードした。

 するとバイン!と弾力により跳ね返されたゴールドシェルクラブはヨロヨロと体制を崩した。

 攻撃を受けた僕も2メートルほど地面を滑り、後退する。

 どうやら鈍風の塊(ウィンド・マッセ)も強い衝撃には耐えられないようだ。

 受けた左腕がじんじんと痛い。


「お、おい、大丈夫か!?」

「ライナーさんとシーラさんは下がってください! イリーネ、何か弱点とかない?」

「えーと、えーと……」


 イリーネが必死に呼んだ文献の内容を思い出す。


「あ、ゴールドシェルクラブはお腹の部分が若干耐久度が落ちると書いてありました!」

「お腹の部分か……」


 僕は冷静に自分の持つ聖魔術でゴールドシェルクラブに勝つパターンを探すことにした。


いかがでしょうか。

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本作品を最後まで楽しんで頂けるよう、全力で頑張りますので、是非ともよろしくお願いいたします!

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