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第28話 冒険者ギルド


「アルノー、いるか?」


 唐突に部屋の扉が開き、モニカが入ってきた。


「も、モニカさん! いきなりビックリするじゃないですか」

「お、そうか、お前も年頃の男の子だもんな、気が利かずにすまん」

「ち、違いますよ、そういう意味じゃなくて!」


 慌てる僕をニヤニヤしながらからかうモニカ。


「珍しくこんな昼間に仕事から解放されたんだ、せっかくだからお前をいいところに案内してやろうと思ってな」

「いいところ?」

「『冒険者ギルド』だよ。これから世界中を旅するんだろう? 冒険者の登録はしておいたほうが良いぞ」

「え、僕が、冒険者……ですか?」


 冒険者ギルドは主に魔獣の討伐や未開の地の探索などを目的とした、剣技や体術を鍛えたものが登録する場所と書物で読んだ。

 魔法を使うものは魔法管理局へ登録するため、基本的には住みわけが出来ている。

 いまいちピンとこない僕を見て、モニカが説明した。


「冒険者ギルドは、いわば国を超えた寄合みたいな感じだな、登録しておけば相応の特典を受けられるんだ。まぁ登録にも審査があるんだが……お前なら大丈夫だろ」


 そう言ってモニカは僕をベッドから引き起こすと、下で待ってると言い残して部屋から出ていった。

 確かに旅をするということは、いわゆる冒険者と似たようなものなのかもしれない。

 僕は服を着替えると、玄関前で待っていたモニカと合流し、屋敷を出た。

 そういえばこの街に来てから、ゆっくりと外を出歩くことがなかった。

 隣にいるのがイリーネではなくモニカというところに少し違和感を感じるけど。


「そういえば、イリーネの姿が見えなかったんですが、買い物にでも行っているんですかね」

「イリーネならローレンツと何か忙しそうにしていたぞ」

「そうなんですね、出来ればイリーネも誘いたかったな」


 商店街に入ると急に人通りが多くなった。

 広い石畳の道の脇には色とりどりのお店が並び、上品に着飾った夫人が往来を行き来している。

 クラーバル領で見た商店街も活気が溢れていたが、それとはまた違った賑やかさだ。

 そんな商店街を歩いていると、ひと際大きい石造りの建物があった。


「着いたぞ、ここが冒険者ギルドだ」


 モニカはそう言ってギルドの扉を開けた。

 中に入ると広いロビーの奥に受付のカウンターがあり、不規則に並んでいる円卓には鎧をまとった冒険者らしきグループが話に花を咲かせていた。

 モニカは真っ直ぐ受付まで歩み寄ると、僕をちらっと見て受付嬢に話しかけた。


「この子に冒険者登録をさせてやりたいんだが」

「冒険者登録ですね……ってこの子供にですか?」


 受付嬢は僕を見て驚いた。


「別に冒険者になるのに年齢制限はないだろう?」

「いえ、それはそうですが……登録には審査がありますので、必ず登録できるものではないんですよ」

「ああ、わかってるよ。とりあえず審査してもらえるか?」 


 受付嬢は軽くため息をついた。


「では、無駄だとは思いますが審査しますね。ボク、奥の部屋にきてくれるかな?」


 そう言って奥の扉を開け、その先へ僕を案内した。

 そこは屋内なのに天井が高く、相当の広さがあった。

 普段は冒険者の実技指導を行う場所らしく、今も3組ほどの冒険者が剣を交わらせていた。

 受付嬢はそのうちの一組の指導員を呼ぶと、僕の審査を行ってほしい旨を伝えた。


「こんな小さな子供が冒険者登録に来たのか、世も末だな」


 指導員はやれやれといった感じで両手のひらを上に向けた。

 それを見た受付嬢は指導員に近づき、耳打ちをした。


「子供を冒険者登録させて旅先で死なれたら、冒険者ギルドの責任問題になります。自ら登録辞退するよう厳しく審査してください」

「わかってるって、じゃあ君、こっちへ来てくれるかな?」


 僕は指導員の指示に従い、部屋の中央までやってきた。

 よく見ると木の板で出来た床には、縦横10メートルほどのラインが正方形に引かれている。


「冒険者に一番必要なことってなんだと思う?」


 指導員に質問され、答えに困ってしまう僕。


「はは、そんなに緊張しなくていいよ。答えは逃げる能力だ。敵と戦う力も必要だが、死んでしまっては意味がない。だからこの冒険者ギルドでは、どんな境遇でも逃げ果せることの大事さを教訓にしてもらってるんだ」


 そう言って指導員は壁際に転がっていた直径20センチほどの球を片手で掴んだ。


「これから君目掛けてこの球を投げる。君はこの10メートル四方のラインから出ないようにしながら、全ての球を避けてくれ。1回でも当たったら失格だよ」


 唐突に指導員が手に持った球を僕に投げつけた。

 僕は寸前のところで身を屈めると、耳元に風切り音を残して球は通り過ぎていった。


「ほお、良く避けたな、では本番と行こうか」


 そう言って指導員はどこにあったのか、球が大量に入っているかごを持ってきた。


「私はラインの外から球を投げる。いいか、一発でも当たったら怪我は免れないからな、止めたかったら辞退するんだぞ」


 確かに不意を突かれたとはいえ、今の一発を見る限りはとても逃げ果せる気がしない。

 でもこんなところで無意味に怪我をするなんて理不尽すぎる。

 絶対に逃げ切ってやる。

 僕は『タイガ』から教えてもらったもうひとつの魔法陣を思い浮かべた。

 そして今まさに球投げようとしている指導員に聞こえないよう、しゃがんだ状態で左手の甲に魔法陣を描いた。


獅子躁妓の理(フェイトラーゲン)


 次の瞬間、僕の周りから音が遠ざかって行った。


いかがでしょうか。

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