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第23話 王女と対面する


 その祭壇は洞窟の壁をくりぬいて作られており、石で出来た階段を5段ほど上った先にあった。

 左右には火を灯す台が複数設置され、中央には装飾を施された壁の前に、人がふたりは入れるような石櫃が飾られている。


「これが祭壇か……」


 オスヴァルド国王は隅々まで周りを見て回ると、石櫃の前に立った。


「目的は聖魔獣の珠だったな、近辺には落ちてないようだが、あるとすればやはりこの石櫃の中か」


 そう言って石櫃の蓋をコツコツと叩いた。


「特に禍々しい感じはしないが、開けてみるか?」

「そうですね、坊ちゃんは少し離れて待っててください」


 そう言ってヨアヒムと国王は石櫃の蓋に手を添え、思いっきり力を入れた。

 ズズズッとゆっくり蓋がずれていく。

 僕は中から魔獣が飛び出してくるかもと警戒したが、そんな必要はなかったようだ。

 蓋を半分をずらした後、ヨアヒムは中を覗き込んで、僕を手招きした。


「あった」


 僕はヨアヒムに照らして貰いながら、石櫃の奥を覗き込むと、そこにはモニカから譲り受けた珠と同じようなものがひとつ転がっていた。

 慎重に手に取って観察すると、その珠はうっすらとした白地に黄色い縞模様が入っている。

 聖魔獣の珠で間違いなさそうだった。


「この珠から聖魔獣が生まれるのか、早く見たいぞ。アルノー、この場で呼び出せるか?」


 アスヴァルド国王がワクワクしながら僕を見た。


「陛下、聖魔獣の力は呼び出してみないとどんなものかわかりません。専門家の前で呼び出したほうがトラブルが少ないかもしれませんよ」

「ふむ、それもそうか。ヨアヒム、そなたの師匠に来てもらおう、手配できるか?」

「かしこまりました、ここを出たらすぐに手配しましょう」

「よし、では急ぎ城へ戻るぞ!」


 僕たちは珠を大事に持ちながら、聖域と呼ばれる不思議な場所を後にした。

 帰り道も特に問題が起こることもなく洞窟の出口へ辿り着くと、入るときは短かった柱の影が大分長くなっていた。

 思いのほか長い時間、洞窟の中にいたようだ。


 僕たちを乗せた馬車は、来た道を再び軽快に走り始めた。

 次はどんな聖魔獣が出てくるんだろうと僕は期待に胸を膨らませたが、ヨアヒムの言うように制御できない聖魔獣が出てこないか、不安も感じていた。



◇◆◇◆◇



「パパ、遅いよもう!」


 城に帰り着いた僕たちを待ち受けていたのは、オスヴァルド国王の長女、アリシア王女だった。

 馬車から降りたオスヴァルド国王はアリシア王女に駆け寄ると、その身体を空高く持ち上げた。


「きゃっ」

「ははは、すまんすまん、大事な用があって少し時間を過ぎてしまった。許してくれアリシア」


 国王はそのままアリシアを持ち上げたままくるくると回転した。

 その様子を馬車から降りて見守っていた僕とヨアヒムに、国王は振り返って声を掛ける。


「アルノー、紹介しよう。私の愛娘のアリシアだ。今年で14歳になる。良ければ仲良くしてやってくれ」

「は、はい!」


 国王の娘、すなわち王女ということだ。

 サラサラな金髪を腰まで伸ばし、青く澄んだ瞳とおっとりとした顔立ちで不思議な魅力を感じる。

 僕は膝を曲げて頭を下げる。


「わ、わ、わ!」


 国王に持ち上げられたままのアリシアは僕たちの姿を見つけると、慌てて地面に降り立った。

 そして国王の背中に隠れる。


「アリシア様は、同年代の方と交流が少ないですから、緊張しちゃいますよね」 


 ヨアヒムがアリシアを見て微笑んだ。

 そして僕のほうを見て視線で合図する。

 ここは男から声を掛けるべきということかな。

 僕も引きこもりだったから、声を掛ける緊張は負けてないんだけど。


「あ、あの……アルノーと申します。今日はお約束のお時間を守れず……失礼いたしました!」


 勇気を振り絞ってアリシアに声を掛けた。

 するとアリシアは国王の背中から顔だけを出し、僕に返答した。


「いえ、その……お見苦しいものをお見せしました……」


 アリシアは真っ赤になって引っ込んだ。

 

「ところでアルノー、聖魔獣の召喚を見せてほしいのだが……」


 そこまで言ったところで、クリストフが国王のそばへやってきた。


「陛下、モニカ様とお付きの方が中でお待ちになっております」

「わかった、中庭に連れてきてくれ。アルノー、ヨアヒム、いよいよ聖魔獣の召喚を見せてもらうぞ!」


 そう言って国王はウキウキしながら中庭に向かった。

 僕とヨアヒム、そして遅れてアリシアも中庭に移動することにした。


 中庭へ行くには一度、城内に入り、ぐるっと長い廊下を渡る必要がある。

 僕ひとりでは迷子になりそうなので、必死に先頭を歩くヨアヒムについていく。

 すぐ後ろにはアリシアが静かについてきていた。


「アリシア様は、お城の外へお出かけになることってあるんですか?」


 僕は沈黙に耐えきれなくなり、世間話をアリシアに振った。

 話題はなんでもよかったけど、咄嗟に何も思い浮かばなかった。

 やっぱり経験は大事だ。


「い、いえ、父からあまり出ないように言われて、ほとんどお城の中で過ごしています……」

「そうなんですか……僕と一緒ですね」

「え、アルノー様も……?」


 僕はクラーバル家の名前を出さず、かつ決して暗くならないようにこれまでの経緯を話した。


「ですので、何か失礼がありましたら申し訳ありません、経験不足によるものですので……」

「わ、私も、殿方とお話しすることが今までないので、変なこと聞いちゃったらごめんなさい!」

「いえ、気にしないでください、僕のほうこそ緊張して変なことを聞いてしまうかも……」

「そんな、私のほうこそ常識がないので……」


 お互いに謝り続ける様に、つい噴き出してしまう。

 それを見たアリシアもくすくすと笑った。


「私、大人の皆様から王女と呼ばれ続けて、少し疲れてしまいました。出来れば、ここだけは普通におしゃべりしませんか?」

「そうですね、なるべく普通に話をしましょう」


 僕にとっても同年代の友人はいないため、彼女の境遇がなんとなく理解できる。

 それにふたりで会話する練習が出来るのは非常に良いことだと思った。


「あ、あの、こうやって異性と歩く場合、殿方が女性の手を取って歩くと聞いたことがありますが……本当でしょうか」

「え?」


 確かに、いろんな書物には男性が女性の手を取りエスコートする内容が書かれていた。

 てっきり馬車を降りる際や、足元が悪い時だけだと思っていたが、実際は違うのかもしれない。


「で、では、お手を……」

「は、はい!」


 アリシアが差し出した左手を恐る恐る握る。

 ぴくッとアリシアの緊張が手を通して伝わってきた。

 俯いた顔を見ると真っ赤になっている。

 僕は王女に対して不義があってはいけないと緊張しつつ、そんなアリシアの仕草が可愛いと思ってしまった。


いかがでしょうか。

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本作品を最後まで楽しんで頂けるよう、全力で頑張りますので、是非ともよろしくお願いいたします!

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