第20話 国王に謁見する
扉が開くと、ふかふかの赤いじゅうたんが奥へ伸びており、その先に豪華な椅子に座った国王の姿があった。
ヨアヒムの持ってきた絵画でしか見たことがないが、薄茶色の髪に切れ長の目、年齢は30代半ばに見え、非常に若いが全身から自信の程を伺える。
僕は思わぬ出来事にその場で固まってしまった。
「ヨアヒム、アルノー両名、参上いたしました」
「うむ、待っていたぞ」
ヨアヒムは数歩進むと、その場で膝を曲げ、頭を下げた。
僕も慌ててヨアヒムと同じポーズを取る。
「はっは、そんなにかしこまらずとも良い。ヨアヒムもいつのものようにズカズカと入ってくれば良いだろう」
「坊ちゃんにとっては初めての謁見の場ですからね、少しはカッコよく見せたいじゃないですか」
国王とヨアヒムはふたりでわははと笑い合った。
僕ひとりだけ緊張している状況だ。
「アルノーよ、会うのは初めてだな。私の名はオスヴァルド・ラウデンバッハ、一応、この国の王を名乗っておる。そんなに緊張するでない」
「は、はひ!」
変な返事になった。
「急に来てもらって済まなかったな。そなたの魔法について幾つか聞きたいことがあったのだ。ちなみにそなたの境遇についてはヨアヒムより聞いている。非常に気の毒なことだと思う、私からも謝罪させてくれ」
そう言うとオスヴァルド国王は僕に対して頭を下げた。
「と、とととんでもないです! クラーバル家のことは過ぎたことですし、ぼ、僕も気持ちの整理は付けてますから!」
復讐を誓っていますとはさすがに言えない。
「そう言ってもらえると助かるよ。今後も何か不都合があれば極力、力になろう。遠慮なく言うが良い」
「坊ちゃん、遠慮なく言っていいですよ。なんならクラーバル家の領土を所望なさってはいかがですか?」
僕はヨアヒムの言葉に首をぶんぶんと横に振った。
国王はその言葉に苦笑しながら、余裕の表情をした。
「ヘンリック・クラーバルはあれで領地経営の才があってな、狡猾な男だがなかなか役に立つ。そなたが彼に復讐をしたいなら止めはしないがね」
そう言ってにこやかに笑った。
僕の心は見透かされていたようだ。
「では本題に入ろう。ヨアヒムより昨日の魔法試験の内容を聞いた。そなたの魔力は我らの持つ通常の魔力とは性質が違うという。どんなものか教えてくれぬか?」
僕は少し迷った。
聖魔術のことを話してもいいのだろうか。
僕は心配になってヨアヒムを見ると、彼はにこやかに頷いた。
「ヨアヒムに聞いても、本人に聞けの一点張りでな」
国王が眉間をもむ。
僕はヨアヒムとモニカから聞いた話をなるべくそのまま伝えた。
魔法を唱えているのではなく、契約した聖魔獣の力を借りて魔法のような現象を出していること。
その聖魔獣は古代文明の遺産ともいうべきもので、今では『聖域』と呼ばれる場所に珠となり眠っていることも。
「そうなのか、道理で……」
オスヴァルド国王は何かに納得しているようだ。
「そなたも知っているだろうが、通常はひとりにひとつしか魔力特性を持つことはできない。しかしそなたは試験中に風魔法に加え、何やら黒い空間を召喚したとか。そのどちらも聖魔獣の力だったというわけだな?」
「はい、風の聖魔獣『ウィンディ』と闇の聖魔獣『ヤミィ』の力です」
僕はそう言ってウィンディを呼び出した。
つむじ風が舞い、僕の顔の前にウィンディが現れる。
「ご主人様、呼んだ―?」
「おお、これが聖魔獣というものか」
国王は興奮している。
「今はふたつの聖魔獣と契約を交わしているのか。他にも見つかれば契約は出来るのか?」
僕は首を縦に振った。
「クリストフ、地図を」
「ここに」
いつの間にか執事卿のクリストフが国王のそばに地図を持って現れた。
その地図を見ながら、オスヴァルド国王は僕を手招きした。
「この城の裏手にある山に、国が管理している遺跡がある。中には古代文明で祀られていた祭壇があるということだ。もしかして、ここも『聖域』のひとつではないだろうか」
そう言って地図を指さす。
「確かに……ここが『聖域』なら、聖魔獣の珠があるかもしれませんね。坊ちゃん、この場所なら大して遠くありませんし、今から行ってみましょうか?」
ヨアヒムが提案する。
歩いても半日も経たずに往復できる距離だという。
僕は新しい珠が手に入るなら願ってもないことだけど……。
「私も行こう」
そう言ってオスヴァルド国王がこちらを振り返った。
「えええ! いや、でも、陛下はお忙しいのでは……?」
「気を使うな、執務よりも大事なことかもしれんしな。クリストフ、後は任せていいか?」
クリストフはやれやれといった表情で国王を見た。
「この後、ラルフ徴税長官と大事なお約束が入っておりますが、そちらをキャンセルなさいますか?」
「う、それはまずいな。では明日の予定はどうだ?」
「明日は夕方から王女様と会食のご予定が入っております。それまででしたら問題ありません」
「よし、では明日の朝一に出発しよう。ヨアヒムも予定を空けておくんだぞ。アルノー、明日、そなたの屋敷まで迎えを出そう。それで良いか?」
「は、はい!」
僕はテキパキと指示を出すアスヴァルド国王に感心した。
「すごい行動力でしょう、彼とは付き合いが長いですが、興味を持ったものにはとことん追及する性格ですからね」
そう言ってヨアヒムは苦笑いを浮かべた。
確かによく見ると少し浮足立っているようにも見える。
こうして僕らは、ひょんなことから国王と共に『聖域』と思しき遺跡へ足を踏み入れることになった。
どうしてこうなった。
いかがでしょうか。
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