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歓迎会

 入団テストに合格したパーティーは新人説明会オリエンテーションの後、評価順に、所属するチームと、常駐する町や村を選択した。


ルーキーエリア帯には全部で12個の球団がひしめいているが、現在冒険者を募集しているのは5チームだった。その中には『東部3区カウカウズ』の名前も当然ある。山田たちはコニーとの約束を果たし、『東部3区カウカウズ』に入団。常駐する村としてメイランドを選択した。カウカウズは他のチームと比べて、所属冒険者が15人と少なく、出場機会を考えれば悪い選択ではないように思えた。


 ちなみに、トップでの合格を果たしたエストたちは、迷うことなく、ファンボーケンの街を本拠地にする『中央区スプラウツ』を選んでいた。スプラウツは50人以上の冒険者が所属するルーキーリーグの盟主であり、リーグ戦では常に不動の1位。腕に覚えのあるパーティーが出場機会を求めて切磋琢磨しているらしい。


 自信家のエストらしいと山田は思った。


 入団テストの翌々日、パーティーは定期馬車に乗ってメイランドを目指した。


 〇


 メイランドの村に着くと、村長とコニーが入口で歓迎してくれた。


「おお! 待っておりました! 本当にこの村を選んでくれるとは感激です!」


 コニーは走ってきて山田に飛びついた。


「にーちゃん! 約束守ってくれたんだな!」

「あぁ! 当たり前だろうが! 指切りげんまんしただろ? だから今度は、コニーが約束守る番だぞ? 俺たちの応援、よろしくな?」

「うんっ!」

「長旅でお疲れかと思いますが、冒険者ギルドでカウカウズの監督があなたたちを待っています。早速、挨拶に向かいましょう」


 パーティーは村長について冒険者ギルドへと向かう。

 野球場に隣接した木造の小屋。中に入ると無精ひげの男、ジャックが椅子に座っていた。


「よぉ。待ってたぜ。座ってくれ」

「あなたは入団テストの時の……」

「あぁ。改めて自己紹介をしておこう。『東部3区カウカウズ』の監督を務めるジャックだ。よろしく頼む。にしても、よくこんな辺鄙へんぴなチームを選んでくれたな? ルーキーリーグでも不動の最下位だ。なかなか新しいやつが入ってくれなかったから、歓迎するよ」

「実はクエストで村に来た時に、子供と約束したんです。合格したら、この村の常駐パーティーになるって」

「そんな理由でチームを選んだのか?」

「まずかったですかね?」

「いや……はは。変わってると思っただけさ。俺は嫌いじゃない。冒険者はガキの期待に応えてなんぼだからな」


 それからジャックは1枚の紙を机の上に置いた。試合の日程が書かれたカレンダーだ。


「今日はお前たちに、今後の予定についての説明に来たんだ。ま、気張らずに聞いてくれ。これがルーキーリーグの試合日程表だ。メジャーリーグと同様に年間120試合。2月から11月までかけて、週末の3日間に各チームの本拠地で3連戦を行う。今は4月半ばだから、まだまだ序盤戦ってところだな」


 それから今度は、東の大陸の中央――ルーキーレベル帯が拡大された地図を取り出して日程表の隣に広げた。

 地図には全部で12個の球団ロゴと球団名が書かれている。


 中心のファンボーケンの街に2球団。そしてその街を取り囲むように、等間隔に10個の球団が円形に並んでいる。東側に5つ。西側に5つ。ルーキーリーグは移動の負担を減らすために東と西の2リーグに分かれており、各リーグに6球団ずつが所属している。


 東部3区カウカウズは、ファンボーケンの南東のエリアに位置していた。鼻輪を付けた乳牛がバットを構えている。チャーミングな球団ロゴだった。


「ルーキーリーグの多くのチームがそうであるように、我らカウカウズも複数の村を本拠地にする球団だ。この村メイランドと、隣村のホーランド、さらにその隣のレイランド、3つの村を拠点にしていて、本拠地での3連戦は各村の球場で1試合ずつ行う。そんで、各村の常駐パーティーは、その村で行われる試合には必ず出場させる。これはルーキーリーグ全体としての方針でもある。本拠地での試合は隔週で行われるから、お前たちはよほど不真面目でなければ、6試合に1試合は出場できるってわけだ」


 ジャックは日程表のメイランドで試合が行われる日を順に指差した。


「その他の出場冒険者に関しては、試合のない日のクエスト達成数、レベル、野球の実力等を総合的に判断して俺が選ばせてもらう。そこはまぁ、従ってくれ。毎日お前たちの練習を見ることはできないが、日々のクエストの達成状況は見ている。俺にアピールしたいなら、冒険者としてクエストを頑張ってくれ。そうすりゃレベルも上がるしな。魔物を討伐するのも冒険者の大事な仕事だ。さて、ざっとこんなとこだが、他になんか質問はあるか?」

「はい」


 山田は食い気味に挙手した。


「お、威勢が良いな。なんだ?」

「どうやったら上のリーグに上がれるんですか?」

「はは。良い質問だな。野心があるのは良いこった。なぁに簡単だ。ルーキーリーグで活躍して、上のリーグでも野球の技術が通用すると監督会議で判断されたパーティーには、昇格クエストに挑戦してもらう。それをクリアして成長限界を突破できれば、晴れてリーグ昇格って寸法だ」

「成長限界?」

「あぁ、お前は召喚獣だから知らないのか。成長限界ってのはまぁ、レベル上限のことだ。例えばルーキーランクなら、レベルは20までしか上がらない。それよりレベルを上げようと思ったら、ランクアップする必要がある。ランクは自分の限界を超えるような経験をすることで上がる。昇格クエストはその為の試練ってわけだ。命の危険があるから、野球の実力を見込んだ人間にしかやらせないんだ。ほいほい挑戦されて、死んでもらったら困るからな」

「なるほど……」

「他にはないか?」


 手を上げるものはいなかった。


「ま、やっていてわからんことがあったら、ここの村長にでも聞くと良い。彼も冒険者ギルドの人間だから、力になってくれるはずだ。俺もたまには様子を見に来るしな。よし。じゃあせっかくこの村まで来たんだし、お前らの野球の実力を改めて見させてもらうかな。グラウンドに出ろ。ノックを打ってやる!」


 パーティーはその後、陽が沈むまで、ジャックによるノックを受けた。



 〇



 練習を終えて冒険者ギルドの小屋に引き上げると、村長が待っていた。


「練習お疲れさまです。今日は村を上げて、皆さんの歓迎会を催す手はずになっております。準備ができましたら、広場までお越しください。ジャック監督も、ぜひご一緒に」

「おぉ、良いんですか? それじゃ、お言葉に甘えて」


 一行はルーチェの”浄化ピュリファイ“の魔法で練習でかいた汗を流してから、広場に向かった。


 広場には村中の人々が集まっていた。机がずらりと並び、その上に置かれた料理の香りが辺りに充満している。中央の水晶映星が置かれたステージには横断幕が掲げられており、『歓迎・ルーチェ様ご一行』と書かれていた。


「すげぇ……」


 山田は息を呑む。お祭りのような光景だった。

 パーティーが広場に現れると村民から歓声が上がった。


「さぁ、皆さんこちらへ。今日はあなた方が主役です」


 村長に案内されて、パーティーとジャックはステージ上に設置された主賓席に座った。席の前には各自の名前が書かれた紙が貼られている。机の上には麦酒エールも置かれていたが、山田だけは頼んで水をもらった。


 村長は麦酒エールを持って前に立ち、村民を見渡して挨拶を行う。


「前の常駐パーティーがFランクリーグに巣立ち、はや2カ月が経ちます。めでたいことではありますが、やはりみなさん寂しかったでしょう。ですが今日、この村に再び、常駐パーティーがやってきてくれました。我らの村を魔物の脅威から守り、そして、我らの期待を背負って野球をやってくださるルーチェさん達に、拍手を!」


 歓声と共に拍手が巻き起こる。村民たちはみな期待の眼差しを送っていた。

 まるで英雄のような扱い。高校で開かれた、甲子園の送別会のことを山田は思い出した。ノアとドレミィは平常に見えるが、ブラットは目を回しそうになっている。


「ではパーティーを代表して、ルーチェさん! ぜひご挨拶と、乾杯の音頭を!」

「は、はいぃっ!」


 突然指名されたルーチェは、ビクッと背筋を伸ばして立ち上がった。


「さ、他の皆様もご起立ください」


 ルーチェはおどおどと広場を見渡す。その様子を見ていたジャックが、ルーチェと山田にだけ聞こえる程度の声量で言う。


「おい。シャンとしろ、シャンと。俺たちは人に見られるのも仕事だ。これくらいでビビるんじゃねぇ。バシッと決めろ」


 言われてルーチェは目を閉じ、深呼吸を一度した。


「みなさん! 今日はこんな風に歓迎してくれて、ありがとうございます! これからこの村に常駐するパーティーとして、周囲の魔物を討伐して安全を守り、そして野球の試合で活躍したいと思います! まだまだ新人なので、至らないことも多々あるかと思いますが、どうか応援のほどよろしくお願い致しますっ!」


 ぺこりと頭を下げる。

 村民たちは、やんややんやの大喝采。


「つまんねぇ挨拶だが、ま、堂々と言えただけ良しとするか」


 ジャックは言葉に反して笑顔であった。


「では、みなさん! ジョッキを持ってください! ……良いですか? か、かんぱーいっ!」


 ルーチェが叫ぶと、広場中から乾杯の声と、次々にジョッキをぶつける音が聞こえてきた。



 〇



 楽しい宴会。ノアは弦楽器リュートを鳴らして歌を歌っていた。周囲には村民たちの人だかりができている。


 山田たちは振る舞われる肉料理に舌鼓を打っていた。山田以外のメンバーはお酒も楽しんでいる。今日は絶対に醜態をさらさぬようにと、山田は隣に座るルーチェが飲む酒の量に、厳しい監視の目を光らせていた。


 酒に酔って赤い顔をしたジャックが、背後から山田の肩を組む。


「なぁおい、召喚獣様よ。お前、酒飲んでないけど、ちゃんと楽しんでるのか?」

「酒なんてなくても楽しんでますよ。でも、プレッシャーも感じてます。まだなんにもしてないのに、こんなに歓迎されるとは思わなかったです」

「そりゃお前、自分の村に冒険者が来てくれるってのは、それだけ嬉しいことなんだよ。みんなお前たちに期待してんだ」


 山田は広場を見渡した。こちらの方を見て何やら楽し気に話している人々。彼らは自分たちをに期待し、これから野球の試合で応援に来てくれるのだろう。

 頑張らなければと思った。


「期待に応えないとですね……」

「んなもん、当たり前だろうが。期待に応えるのが冒険者の仕事なんだ。お前の活躍に一喜一憂する人間が、こんなにたくさんいるってことを、胸に刻んでおけよ?」

「……わかりました」

「よぉし。その意気だ。今週末の1試合目は、ちょうどタイミングよく、この村で開催される。その試合、早速お前を先発で使ってやるから、ちゃんと覚悟しとけよ?」

「はい! もちろんっす!」


 山田の胸は高鳴った。先発で使うと言われて、喜ばないはずがない。

 ようやく試合ができるのだ。


「ルーチェもだ。入団テストの時みたいに、しっかりこいつをリードしてやれよ?」

「わかりましたっ!」

「はは。2人とも良い返事だ。こりゃ試合が楽しみだな」


 ジャックはジョッキをグッと煽った。

 それからぷはぁっと酒臭い息を吐いた。



「なぁ、ところでよ。話は変わるが、お前らはあれか? 付き合ってんのか?」



 ルーチェはブフゥと麦酒エールを吹き出した。



「な、なな、何を言ってるんですかっ! 突然っ! そんなわけないじゃないですかっ!」

「そんなわけないってこたぁ、ねぇだろうがよ。冒険者にとっちゃ結婚相手が同じパーティーの人間ってのは、良くあることだろ? 俺の嫁も、元々同じパーティーだったしな」

「そんなのありえないですっ! イッキューはただのゴブリンですからっ!」

「はは。そりゃひでぇ。何とか言ってやれよ、イッキュー」

「まぁ、もう、言われ慣れてますからね……ゴブリンって」


 出会った時からゴブリン扱いである。

 思えば異性として見られた記憶が一切なかった。


「ほら、あれだ、異世界から召喚された伝説の勇者も、最終的に自分を呼び出した召喚士の女の子と結婚したらしいぞ? なんともロマンチックな話じゃねぇか! ルーチェも勇者にあやかって、ゲン担ぎにイッキューと結婚しといたらどうだ? ははは」

「け、けけ、結婚んぅ!?」


 ルーチェは顔を真っ赤にしていた。酒だけのせいでは無さそうだった。


(この世界にはセクハラって概念はなさそうだな……)


 山田は水をすすりながらそんなことを考えた。ジャックは監督なので、下手するとパワハラでもある。


「おい。イッキュー。なーに涼しい顔してんだ。お前の方はルーチェのことどう思ってんだ? ん? キャッチャーは女房役って言うくらいだろ? なぁおい。おじさんに聞かせてくれよ?」


 酒癖の悪いおじさんである。


「えぇ。んなこと言われても……」


 山田はルーチェの顔を改めて見つめる。

 ツインテールの美少女がそこにいた。


「そりゃまぁ、可愛い……と、思いますけども」


 山田はぽりぽりと頬をかいて答えた。

 何かを聞かれたら素直に答えてしまう男。それが山田一球である。


「んなっ。何言ってるんですかっ! ばかゴブリンっ!」

「はは。よかったじゃねぇか。ルーチェ。可愛いだってよ?」。

「もうーっ! やめてくださいっ! そんな言葉は私には不要です! 色恋沙汰など、人を惑わすだけなのです! イッキューはただのゴブリンなんです! からかうのはいい加減にしてくださいっ!」

「からかってるわけじゃねぇさ。いいか? 良く聞け若人わこうどよ!」


 ジャックは椅子に足をかけて立ち上がり、ジョッキを掲げた。

 演説でもするかのような格好である。


「人は守るべきものができた時に、さらに強くなれるんだ。想いが人を強くする。ルーチェ。それがわからないうちは、まだまだお子ちゃまだぜ? なはは」

「むぅ! 余計なお世話ですっ! 私はじゅーぶん大人なんですからっ! 麦酒エールだってほら! こんなに飲めるんですっ!」


 ルーチェは話を誤魔化す様に麦酒エールを一気に煽った。


「あっ! おいこら! バカっ! やめろ!」


 山田が止める暇もなかった。

 ルーチェの赤い顔がさらに真っ赤になっていた。



「……あうー」



 それからすぐに、ぐるぐると目を回し、バタンと机に倒れ込む。


「あぁもう、またやりやがった……。監督、こいつ、酒弱いんで、煽るようなこと言わないでください」

「……いや、すまん。酒を飲ませる気は、これっぽっちもなかったんだが」


 ジャックは目をぱちくりとさせていた。確かに、酒を飲めとは一言も言っていない。ルーチェが勝手にてんぱって飲んだだけである。


「カッとなると一気飲みする悪い癖があるんですよ……。目を光らせてはいたんですが」


 ルーチェは机に突っ伏してすぅすぅと寝息を立てていた。


「こりゃ起きそうもねぇな……。イッキュー、お前運んでいってやれよ。みんなには俺の方から言っておいてやるから」

「……はぁ、そうします」


 イッキューはルーチェを背負った。相変わらず軽い。


「手ぇだすなよ?」

「出しませんよっ!」


 ルーチェを背負って夜道を歩く。


 野球場に隣接した小屋の、ルーチェとイッキューに割り当てられた部屋につくと、ルーチェをベッドの上に寝かせてやった。今からもう一度広場に戻る気にもなれなかったので、山田も隣のベッドで横になる。

 ノックで疲れていたこともあり、すぐに眠気に包まれた。


 〇


 深夜、ルーチェは不意に目を覚ましてしまった。むくりと体を起こす。


「あぅ……」


 鈍い痛みが走って、ルーチェは頭を抱えた。

 またやってしまった……。自責の念。


「調子に乗って飲みすぎるからだよ」


 声がして隣のベッドに目を向けると、山田が目を開けていた。


「……あ、イッキュー。すみません。起こしてしまいましたか?」

「あぁ。ま、気にすんなよ。にしても、何回おんなじ間違いをすりゃ気が済むんだ?」

「面目次第もないです……」


 恥ずかしい。つい布団で顔を隠す。


「ったく。待ってろ。水汲んできてやるから」


 山田は起き上がると、隣のリビングから水の入ったコップを持ってきてくれた。


「ほれ」


 水の入ったコップを差し出す大きな手のひら。月明かりに照らされる山田の顔を見ると、不意に心臓がトクンと跳ねた。


 戸惑う。


「あ、ありがとうございます」


 水を受け取って、誤魔化す様に、くぴくぴと喉を鳴らして一気に飲む。

 冷たい水が体に染み渡るようだった。


「ふぅ……」

「ご主人を見てると酒を飲もうって気がなくなるな……。記憶とかはちゃんとあるのかよ?」


 山田は呆れたような顔をしていた。


「記憶…………」


 言われてルーチェは、記憶を掘り返す。



(そりゃまぁ、可愛い……と、思いますけども)



 山田に言われた言葉が脳内に反響して、ボッと顔が熱くなった。

 無言になってしまう。


「おいおい、まさか記憶ないのか? ご主人、大丈夫かよ?」


 山田が心配そうな顔でこちらを見てくるが、直視することができなかった。


(あぅ。この男。あんなことを言って、どういうつもりなんですか?)


 ――いや、ダメだ。

 男だと思ってはいけない。


 自分は男に関わると、ロクなことがないのだ。

 自分には、そういう血が流れているのだ。

 そういう家系なのだ。


 改めて自分に言い聞かさなければ。


(イッキューはゴブリン。ゴブリンゴブリン。ゴブリンゴブリンゴブリン……)


 念仏のように心の中で唱える。そうすると、多少は落ち着いた。


「おい? ご主人?」

「だ、大丈夫です。ちゃんと覚えてますよ。楽しい宴会だったのに、私のせいでごめんなさい」

「まぁ、それは気にすんなよ。ちょうどお腹もいっぱいだったしさ。でも、これからは気を付けてくれよな? ほんとに」

「そうですね。気を付けます」

「んじゃ、俺はもう1回ねるよ。おやすみ」

「えぇ、おやすみなさい」


 ルーチェも目を閉じる。しかし隣にいる山田の息遣いが聞こえると、顔が熱くなった。

 心臓が高鳴って、目が冴える。とても眠れそうにない。

 おかしい。どうやら、まだお酒が残っているようだ。


「……私は寝付けそうにないので、ちょっと外でバットを振って、汗をかいてきます」

「熱心だな。夜も遅いし、ほどほどにな?」

「えぇ、無理はしませんよ」


 その夜、ルーチェは雑念を振り払うように、黙々と素振りをした。

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