第0話『おとぎ話と黒いサンタクロース』
十二月二十四日の夜にはサンタクロースがやってきて子どもたちにプレゼント゚を渡すのだと言われている。サンタクロースには二種類あるとも言われている。赤いサンタクロースは子どもたちにプレゼントを贈り、黒いサンタクロースは子どもたちにゴミを贈ると。
そして、十二月二十四日の夜。これはある家庭で起こった事件だ。
「サンタさん、まだかなあ。僕、新しいゲームをもらうんだ!」
小学生くらいの男の子がクリスマスプレゼントを楽しみにしている。
「そうね。きっと、いい子にしていたから貰えるわよ」
そんな少年を微笑ましく見守る母親。
そして、ドアがノックされる。
「あっ、サンタさんだっ!」
少年はずっとドアの前でサンタクロースが来るのを待機していたのでノックされてからドアを開けるまでの動作は数秒で完了した。
「サンタさんっ!」
楽しみにサンタクロースを待っていた少年だったが、嬉しそうな表情はそのサンタクロースを見てすぐに消えた。
「さ、サンタ……さん?」
「やあ、こんばんは。はい、プレゼントだ」
サンタクロースといえば、普通、暖かそうな赤いコートを着て、赤い帽子を被っている姿を思い浮かべるだろう。だが、そのサンタクロースには赤という色は一ミリも見当たらなかった。全身、真っ黒のサンタクロースだった。