#7
僕には約束の5分前には集合場所に着くという癖がある。
中学のときに無理やりそうした。
男性は少し遅れてくる女性のほうが好ましいかもしれないけれど、僕は嫌だ。
待っていて時間が過ぎると怖くなるのだ。
日付や日時が間違ってないかと心配したり、
事故にあってないかと不安になったり。
まぁ、連絡があってから遅れるのはかまわないけれど。
待つ間、お昼前の噴水で僕と少女はぼんやり過ごしている。
少女ははじめは噴水に心奪われていたけど、
2分くらいでヘリに座っていた僕のひざの上に座り、道行く人を見ている。
約束の時間1分前に
「悪い、10分くらい遅れる」
と、月詩からのメールを受け取ったころ、
「少女、ちょっと暑い」
僕が右手のうちわで扇ぐと、
「にゃー」
ワンピースのすそをパタパタ広げたり閉じたり・・・・
「はしたない」
左手ですそを押さえるためにかがむと少女の顔がすぐそこにあった。
「ん・・・・」
少女はそのまま僕に口づけをした。
「・・・・っ」
少女の張りのある小さな唇は3秒ほどで僕のそれと分かれた。
その間僕は大きく目を開けて、全身を固まらせた。
唇が離れたことで戻った意識で僕は鼓動を高まらせる。
それは僕の胸とくっ付いてた少女の背中にも伝わっただろう。
少女は子供のような、でも、どこか魅惑的な顔で笑った。
やられた。
ぼぉっとした意識で思う。
「少女?」
問いかけると
「にゃー?」
笑顔のまま返事をする少女。
「何でいきなりキスしたの?」
にゃーとしかなかない少女に問いかけても無駄とわかりながら聞かずにはいられなかった。
「にゃん」
僕は考えるのを諦めた。
月詩がくる理由がなくなったな。
ぼんやりと、ため息をつく。
少女は僕のことが“好き”なのだ。
あとは、僕が受け入れるかどうかなのだ。