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#6

#6

カプッ・・・カジカジ・・・・・

いきなりの激痛に僕は目を覚ました。

じくじくと痛む指先を見ると、少女の口。

「またか・・・」

僕が呟く間も少女は僕の指先を齧っている。

この行為は前の飼い主とあった少し後からする様になった。

何の意味があるのかは分からないけれど、それをした朝の少女は朝食をいつもより多く食べるため、ただの空腹のサインと思うようにしていた。

「少女、そろそろ起きて。そのまま噛んでても美味しくないよ」

僕が少女の腹部をポンポンと叩くと、

「にゃー」

うっすらと、少女は目を開けて僕の指を口から出す。

「おはよう」

僕がニコリと微笑むと、

「にゃん!」

少女も微笑んで、起き上がり、伸びをする。

猫耳少女なのが関係するのかは知らないが、猫のような伸びをする少女は可愛い。

偶に伸びの最中に背中をつつくが、少女が本気で怒るので偶にしかできない。

だから、今日も僕はその姿を見るだけにする。

「にゃにゃー」

伸びを終えた猫が頭を下げながら朝の挨拶をする。

「ん、それじゃあ朝食にしよう」

僕はパジャマのまま台所に立ち、フライパンを暖めながら食パンを焼き機に入れたりと、準備をする。

その間に少女は着替える。

着替えが終わる頃には食パンや、目玉焼きとウィンナーも焼き上がり、

コーヒーと紅茶も出来上がっている。

そこから二人でいただきますを言い合い食べ、終われば僕が片付ける。

「結構、慣れてきたね」

「にゃん♪」

この生活が始まってそろそろ半年が過ぎていた。

その間に僕らは喧嘩もしたし、仲直りもして、送られてきた書類から彼女の誕生日を知って祝ったりもした。

少女はすっかり僕の妹のような存在になり、きっと今彼女が居なくなったら僕は何も出来ないだろう。

僕と少女はそれだけの関係になっていた。

でも、最近その関係に変化が生じ始めていた。

何故か分からないけれど、少女のことを考えすぎてる気がする。

最近は月詩の手伝いで彼の家にいくことがあるのだが、少女は留守番。

手伝いをしてる最中も、彼のところから帰ってくるときも、

それどころか、少女に行ってきますと告げて扉を閉めたときから気になって仕方ないのだ。

「これはなんというか、過保護とか、そういうのを越えてる気がする」

僕がそう月詩に相談すると、

「いやはや・・・・百合は冗談で言ったんだけど、まさか本当になるとは・・・・」

「前々から気になってたんだけど、百合とは何の事だい?花ではないと思うけれど?」

「んー・・・・怒らないでね?」

「事による」

「不安だな。まぁいいや。同性愛といえば分かりやすいかな?

BLって聞いたことない?あれはボーイズラブの略で、男の子同士の恋愛を指していて、

女の子同士だとGLとか百合って言うことが多いんだけど・・・・」

「・・・・・・・・・・・つまり、僕が少女に恋をしていると?」

「違うのかい?」

そう聞かれると、よく分からなくなってきた。

確かに少女のことは大切だし、そばにいたいと思うが、それは姉妹のようだからではないのか・・・

「・・・・分からない」

「少女はどうなの?」

「どうなのと聞かれても、僕は恋する乙女とは縁がない人生を送ってきたんだよ?

分かる訳ないじゃないか」

「んー・・・今度、お邪魔してもいいかい?」

「構わないけど、大丈夫かい?生徒は」

「後4日で夏休みさ。

教師の仕事も塾の先生と交代。

僕のクラスは賢い連中ばかりだから補習なし」

「それに、今作ってるのも、宿題だよ?」

言われてプリントのタイトルを見てみれば

「夏休みの宿題!」

と書かれていた。少女のことばかりで周りが見えてないようだ。

「恋は、盲目ってね」

僕の心を読んだかのように月詩がニヤリと笑う。

「うるさい。僕は失礼するよ」

「はいはい、お疲れ様。

残りは、僕一人で出来るから。明日からは彼女とゆっくりね。

この分の給料は明後日もって行くよ」

その月詩が来るのが今日だ。

前に来たメールだとお昼くらいに来るらしく、昼食のリクエストを聞かれた。

僕は適当に店屋物を取るつもりだったのでその旨を伝えると、

「なら、一緒に外食でもどうだい?

そろそろ暑くなってきたし、ご馳走するよ」

との事なので、駅前で待ち合わせすることになった。

「少女、今日のお昼は僕と月詩とお出かけだ。

覚えてるかい?」

僕がコーヒーを飲みながら声をかけると、

「にゃー・・・・・にゃん!」

思い出したようだ。

「今日は噛み付かないで、仲良くとは言わないけれど、喧嘩はしないでね」

「にゃう・・」

俯く少女。少しは前回のことを反省しているようだ。

反省してるなら繰り返すことはないだろう。

「女の子なんだから、おしとやかにね」

それだけ言って、少女と出かける支度を始めた。

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