#3
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♪〜〜〜♪〜〜〜
朝の僕の部屋に携帯のメロディが響く。
「うぅ・・・携帯相手じゃ「後五分・・・」が使えないじゃないか」
文句を言いながら布団から出ようとすると
「ふにゃぅ〜」
捲くられた布団の下には日の光に目を細めるパジャマ姿の猫耳少女。
「折角ベッドを譲ったのに・・・まぁ、いいけど」
僕は布団代わりに使ったソファーから携帯に手を伸ばす。
「こんな朝から着信か・・・・もしもし?」
電話は昨日のお巡りさんからだった。
前の飼い主を呼んだので、交番に来て欲しいらしい。
僕は電話を切ると
「少し、出掛けるよ」
僕は電話で聞いた内容のせいで、声が硬くなっていた。
「ふぁ〜・・・・っにゃぅ」
僕は彼女の着替えを手伝って朝食をとる。
「にゃぉ?」
僕はきっと怖い顔をしていたんだろう。彼女はそれが気になったらしく、首を傾げてる。
「なんでもないよ」
僕は顔を笑った顔に変えて、彼女の頬のパンくずを指で落とす。
「みゃぁ〜」
彼女は笑った。なんとなく、その可愛さはずるい気がした。
「さて、そろそろ行こうか」
朝食を終え、少したった頃。
僕と彼女が紅茶を飲み終えた頃に僕はハンガーポールからシャツを取る。
「にゃー」
袖を通してから彼女に帽子を渡す。
「昨日の交番に行くよ」
財布をポケットに入れてから彼女の寝癖を直す。
「忘れ物・・・・ないね」
携帯をポッケに入れて振り返れば、彼女が部屋の鍵を持っていた。
「妹・・・もしくはそれに近い存在になりつつあるね」
僕はきっと悲しい顔をしていたんだろう。だから彼女から鍵を受け取るためにしゃがんだ時に
「にゃにゃ」
彼女の右手が僕の頭を撫でてる事に気づくのに時間がかかった。
「子ども扱いとは失礼だね。でも、ありがとう」
僕は彼女を抱きしめた。
(誰かに、頭を撫でてもらったのは何年ぶりだろうか)
僕は少し彼女を抱きしめた後、首をかしげる彼女を連れて、部屋を出た。
「あ、おはようございます。この人ですよ、前の飼い主」
交番に着くと、お巡りさんに40過ぎのおじさんを紹介された。
「はぁ、おはようございます」
「にゃぅ」
「おはようございます」
僕らは適当に挨拶を済ませ、そのまま本題に入る
「彼女は、貴方のですか?」
「ああ、散歩中に逃がしてしまったんだ」
「ちゃんと、可愛がってました?」
「当然だ」
僕はあまり人付き合いが得意じゃない、だから話し相手の目を良く見るようになっていた。
その経験から分かる。嘘だ。
僕は彼女の正面にしゃがみ、視線を合わせる
「あの人は、君の主人?」
「にゃー」
彼女はゆっくり、はっきりと首を振る。
「おいおい、忘れたのか?まったく、猫は恩を三日で忘れると・・・・・」
「おじさん、彼女は猫だけど、猫じゃないよ。その辺を理解して無い時点でパートナー失格だ」
「にゃん?」
僕は彼女に微笑み、おじさんに無表情を向けながら
パァンッ!
彼の右顎にビンタを当てる。お巡りさんには見えないはずだ、速度的に。
「知ってるかい?人は顎部を急に揺すられると暫く動けないらしいよ。
良かったね、一つ賢く慣れたから僕に殴られて馬鹿になった分が帳消しだ」
僕は、それを置き土産にするように交番から立ち去る。
「帰るよ、それとも、彼のところにいるかい?」
「にゃ」
彼女は僕を選んだようだ。後ろから足音がする。
「お巡りさん、彼のこと、よろしく」
「ご協力感謝しますよ」
彼は慣れた手つきで、おじさんに手錠を掛ける。
彼女の事はよく分からないままだけど、今はそれでいい。
今はただ、家に帰って静に過ごしたかった。