武器がなんであろうと!
こんばんは
咄嗟にゆっくりと動いたフードの男は、ルルの目の前まで行って首の付け根を武器のグリップ部分で殴ろうとしていた。
なのに、ルルの奴ったら!無抵抗で殴られそうになってた所、俺が助けた形となったのだが。
(同じ世界に生きる奴か……というか、こいつは一体何者なんだ?)
「って!オラァ!!ルルルに攻撃仕掛けんじゃねぇ!今、戦っているのは俺だぁ。」
「ええ。そうですねぇ。
私はねぇ、大人で汚くって……なんでもかんでも痛め付けて従わせて縛って叩き付けたいのですよぉ。
その為なら、なんでもするぅ。……こーやってなぁぁ!!」
小型武器の形状を詳しく言うなら、根元だけは普通の剣よりも太く分厚いのに、ナイフ程の長さなのだ。
だから!今さっきから力任せに叩き切りつける行為が俺のナイフとカチ合わせる度に、甲高くナイフが響き俺の手首を痺れさせる。
「っ……痛って。」
「そろそろ潮時かな?さあ、アナタが血反吐を吐いて倒れるのなら!彼女はどう思うでしょうか?廃人でしょうか!?それとも……仲間の全滅という選択も良ろしいでしょぉぉなあぁ。」
戦っているのは俺だけではないのか!?……そう一時の想いを生じた時だった。
フード男は、そのまま鈍器の様な小型武器を俺の胸へと流れる様に、殺気も歓喜も何もかもを込め男の欲望がスッ……と
「なにぃいぃ!?」
「仲間の全滅だとぉ??」
確実に胸へと送り込まれた尖った鈍器は、ボスの胸直前で止まった!……いや違う。
スッと入り込んだ鈍器というナイフは、男が気付か無い程に差し出した腕にナイフが刺され止まったのだ。
「今頃で痛みかぁ!?……んぐぅ!これはぁ!」
バシィと太く分厚い敵のナイフに刺さっているのはボスのナイフ。
何時?いつ攻撃したのかフードの男は内面的には混乱を隠せない。
「俺の仲間に何をしたぁぁ!!?」
ザクリ、ザクリとフードの男が何の動きを取らないままに、ひたすらナイフが刺されて行く状況を精神だけが正常に見守るルルルは思ったに違いない!……そして、コイツも
(これが盗賊レベル、三万の超スキル)
「まさか!?レベル三万の神への挑戦状までたどり着いたのかぁ!!?」
サクサクと二十のナイフが刺さる。
「どうだ?動けないだろう?」
フード男の重要となる間接部分には、歯止めとしてナイフがサクッと刺され身動きが取れないようにした。
それに付け加えて、男が何も出来ない様に床へ叩き落とした所でスローワールドの消える気配がした。
とりあえずは終わった。そう誰もが終わったと思った。
だが、一つだけミスがあった!そして俺は気付かなかった!目の前に同じ時を過ごす者がいるというだけで、俺の体感時間は何か狂っていて、ソレによる『心の安らぎ』を求めてしまった。
「おーい!!俺はミスった。全員集合だ!!」
そう言えば、顎の間接は刺して無かった。
そして、敵の仲間を呼ばれる事態へと。
これは、俺のミスだ!お互いのスローワールドで激戦を潜り抜けて!からの、スローワールド内で動く超神速・スキル名を【韋駄天】で、自分のみが早く動き働いたせいで周りの感覚がズレてしまったのだ!
これだけは言える!……戦いは始まったばかりだ。
「ボス!!襲撃されっ……大丈夫だったようですね。」
後ろから聞こえるのは、走って来たアルの声なのは分かる。それに、音からしてプラス何人かの足音は聞こえてくるし、アルからには誰かの怪我の話なんてもんは無い!……俺はそう信じる。
というか、コイツが叫んでから黒の顔を隠した奴等がシュババッ!と三人出て来た所だ。
アル逹の姿を見たフード男は、目を見開いて驚愕している。
一呼吸したフード男は『ハハハ』と笑い語りだした。
「おー、おー……我が神を討ち取った宿敵の一人!アルジャーニと、俺逹を裏切ったイチコロじゃ無いかぁ。
イチコロォ……お前からの傷はぁ、痛いってもんじゃあ!オォォグッゥ」
全身が動かないフード男に三人は寄り添い、肩を担ぎながらもフード男はイチコロという男の過去の話を語り出そうとした。
だが俺は、聞きたくも刺さりっぱなしというのも嫌だったので、全てのナイフに戻って来るよう命じた。
「さあ!お前逹は暁のボスに喧嘩を売ったばかりでは無く、仲間を!ルルルを連れ去ろうとした行いは許さん!……ここで終わって貰おうか。」
二十のナイフ内、大聖霊が着く七本のナイフを俺の目の前でクルクルと優雅に、一つの生き物の様に動かし敵の隙を伺う。
目の前には、二十のナイフが一斉に抜かれた事で多量の血がポタポタと流れ落ちて三人は慌てふためいていた。
そんな中に『ライル司教!お気を確かに!』と聞こえた瞬間!
「お前、神教の幹部!瞬殺のライルか!?」
アルが、いつになく怒涛に叫ぶのだった。
明日もよろしく




