あのチクリ魔
こんばんは
「そうそうボス知ってました?」
「いや、知らんけど。何?」
これは、ゆっくりとした一日が経過する上で大事な儀式であり、仲間としてのコミュニケーションをしている。
普段から仲間との意志疎通をしていることは、いざとなった時にはたいへん役に立つものだ。
「ボス。肉巻き肉ソーセージです」
「コロ。サンキュー」
コロは我が家では大まかに料理担当だ。
アルは掃除と整理整頓担当である。
「最近、グレイン聖騎士団がダンジョンで『草食魔法使い』という【職陣】を発見したみたいですよ。」
アルがあまり興味を持たない俺に、どのようなスキルが得れるのか、力強く説明し始める。
まるで、この先の事を見据えているかのような……それともアルの何かの要望が表れているのか。
「それで、なんと!効果は【魔法で植物を操作】出来るみたいですよ!」
「え!それじゃあ、私が植えた全然育たないというニマワリが育つんじゃあ!?」
アルは俺の為に持って来た情報なのに、意外と驚いたのはコロだったことにビクン!と反応していた。
が!突如アルが、本来の目的を指し示したいのか強く机をバン!と叩き注目させた。
「で!!私達も誰よりも早く【義賊の職陣】を見つけに行きませんか?
ボスは現在、盗賊の職陣が刻み込まれていますし。」
「うんうん。見た感じ、形はまだ一種しか印刷してなかったし。
生まれて六才で強制的に初級の職陣が印刷されるから、今のボスだと盗賊はカンストしてるんじゃない?……ってどうしたの??」
俺に職陣の!盗賊の!!話をするなかれ。
アレハ、思い出しても憎いものだったよ。
「俺はな。好き好んで、盗賊の烙印を押された訳じゃ無いんだぜ。」
この職陣、体の何処かに印刷しているものだ。
更に多種多様の職陣を印刷すると、ソレは重なり合って統合し変化して行く為、パッと見では他者から判別出来ない代物となっている。
だからと言うべきか、人は初級の戦士・武道家・狩人・盗賊を複数印刷するのが主流となっていた。
俺の負の黒歴史が語り始まる
「何でだよ!国の定めとかで俺の心は支配されないぜ!アリサ先生だっていつも『力で人を傷付けてはいけません!』って言ってるじゃないか!
俺は断じて屈しないぞ。」
(あー。アリサ先生の苦労が目に見えるなぁ。)
「アリサ先生はソッと目を閉じると
今から先着五名に、今日の晩御飯が一品追加されます。これは嘘ではありません。
現に、今日の坊の晩御飯は消えます。
……坊?もう一度言います。この大陸はグレイン・グラードという王が納めていて、その王と世界各国の王が決めた法に、『六才から職陣をする』というのが決められています。
もちろん強制ですから、最初は皆さんタダで出来るのです!これで孤児達は色々な職に着いているのですよ?」
「そんな法なんて知らねぇよってんだババァ!」
「ハァ、教えましたがねぇ。残念です。」
最後の『残念です』と発せられてから、他の孤児(同じ釜を食べる者達)は連携し大きな壁へと変化して行くのだ。
未だかつて、こんなに連携よく動ける事が出来る集団だったか?否!違うハズだ。
「お前かぁ!」
ソコに立ちはだかったのは宿敵とも言うべき、悪魔のチクリ魔のルルルだった。
ルルルは、孤児院の中じゃ最年長で皆から『お姉さん』と呼ばれ、既にアリサ先生の後釜を狙うシスター見習いだった。
(あの冷静沈着のルルルさんが悪魔って?)
「ソコを退いてもらおうか……じゃないと、そのスカートを豪快に捲れてしまうぜ。」
「……あら?良いですよ。
でも、そんなことをして義賊が出来るのカシラ?」
ハッ!!そうだった。
義賊という者は、ハレンチなんて厳禁だ!ましてや、大人にも成って無い女性に手をあげるなんて!?
突然、アリサ先生が叫び出す。
「確保ォ!!」
「俺は捕まってしまった。義賊だというのに!」
ギュッと握り、あの悪夢とも惨劇を力を込めて話すのだが、アルとコロは少しヒキ気味と半笑いを我慢している。
(ルルルさんが悪魔ね。避けてたのはそのセイね。)
「なのに!ルルルは、俺の上に乗って『肌はココしか見えて無いので、ココでお願いします』とか言いよって無理矢理したんだ!!」
(あー、皆で押さえられてだったのか。だから、オシリに印刷してたんだね。)
「両手両足は動いたからか、同じ釜を食った仲間と思っていたのに!アイツ等が取り押さえてヨォ。
大の大人のアリサ先生が肩にかける背中に乗って頭を固定し、ルルルが!ルルルが俺のケツをメクリ『はい。ココ』って指示したんだ!
許せん!許すまじ行いだぁ!」
(でも逆に、今だったらアリサ先生とルルルちゃんに乗って貰えるのなら普通ならあり得ないことだよね。)
「だが!俺はそんな事では終われ無い。
刻印に来ていたグレイン聖騎士団とルルルとアリサ先生に俺の丹精込めた屁をブッ放してくれてやったわ!ハハハハ。
まあ……その後、ケツを叩かれたけど。」
(ボス、よく首が飛ばなかったね。)
「そうでしたか……」
もう最初の吹き出し辺りで、二人してそうなって行くんだろうなぁと思っていたのが、ほぼほぼ大正解だったのに対して少し窶れ顔と成ってしまう。
「言っとくけどな、この出来事はお前達に分かりやすく話しただけで、本当は激闘の三時間だったんだぞ。」
「ボスの義賊の志には、いつも感服します。
で、ですね。
私達でダンジョンへ行って新たな【職陣】を探しませんか?」
『義賊の志』って言われたもん!
「探そう!俺の、俺達の義賊を!」
そっこうで、ノッた。
明日もよろしく