溺れる女
こんにちは
「ええ!もちろんです。
ですが、私のところは入り口なのでアルジャーニ様は一番奥の席に着かれていますから、ここから奥に行った扉から入った方が色々と面倒が掛からないので良いと思いますよ。」
なんだ?この他人行儀な対応は??あのオドオドした鉄っちゃんは何処へ?
「何を驚いているのですか?」
「あー。多分、鉄君が歩んで来た道乗りと坊が歩んで来た道乗りとは欠け離れ過ぎてて、話態度とかにもソレが見えていて驚いているのよ。
……ね?坊??」
「別に驚いてなんか無い。ただ、あのオドオドした鉄が消えて、こんな立派な上腕二頭筋や俺を軽々と越えた身長。
更には、俺が言うのも何だけど……こんなにもイケメンになろうとは!?女に溺れるなよ。」
『アバヨ』とピッと格好良く挨拶して、奥のドア……つまり反対側のドアへと向かう。
後ろでは鉄が『お、溺れてねぇって!』という言葉を発した後『先生?そんな鋭い眼光しても何も無いですからぁ!』と何か騒がしい。
「先生。鉄はもう卒業したんだ。
だから、そんな暖かい目で見守ってやらんでも……アイツは、まっとうに生きて行けるさ。
アイツには、もう孤児院の壁を越えたのさ。」
「友達を過大評価するのは良いと思うけど、アレは絶対!女に溺れているから。
普通、下で彼女が働いていて年上の私に声をかけないから。」
(しかも、坊より先に!)
本当に理解してないのはどっちだ!恩師に礼を言うのは男ってもんだろ!……まあ、先生は恩師というより親みたいな感じだけど。俺は……。
考えれば考える程に、アリサ先生と鉄との関係。
更には、その発想を飛ばしてアリサ先生と俺の関係を考えた時!?何故か、妙に恥ずかしくなってきた。
「どうしたの?もう、ドア前だよ?顔が赤いよ??」
「うん。分かってる。」
だが!これだけは確認しないといけない!
代わりにドアを開けようとする先生の顔の前に、人差し指を一本立てて『これだけは聞きたい!』と叫ぶ。
「何?」
「俺は先生の何?」
「何って……。
まだまだ未熟な孤児院の子供……って言いたいけど、今は私の義賊のボスで上司。
坊には義賊では無い日、メリハリを教え未だ教えて無い大人の世を教えたいと思っている坊君かな。」
(お姉様!?なんて恥ずかしい事を!?)
後ろで、ホワワワとなっているエリザベレスを見つつ意味が理解出来ないので無視する。
「ふーん。やっぱりアリサ先生は先生なんだな。まあ、これからヨロシクな。
色々と、大人の世界を教えてくれ。」
(ああ。これって理解してないね。)
「良いわよ!大人の世界を少しずつ教えるね。
因みに!ある国は、挨拶は頬っぺにキスをする文化があるのよ?……私の故郷はソコになの。」
「そうか知らなかったなぁ……じゃ、後でする。
先にアルに会いたいし。」
私は心のヨッシャアーをしたんだけど、後から思えばイケナイ賭けをしたんだと思った。
今晩もヨロシク