こう来て……こう!
こんばんは
「ちょっと待ちなさい。アルさんに任しておけば、大丈夫だから。」
後ろから聞こえて来たのは、俺を必要としない感じの発言だ。
「なに言ってんの?俺はアルの!」
声を高らかに言わなければ!と思い『アルのボスだぞ!』という俺に対して、『坊は知らないと思うけど』から始まり
「……アルの本名が、アルジャーニ・デトロトとかビックリしたわ。」
「アルジャーニ・デトロト??知らないな。」
先生は驚愕したあと、少し考えて『義賊のみだったか?』とボソッと言うと自分で頷いていた。
「アルジャーニ・デトロトと言うのはね、有名な冒険者で勇者と共に悪神と戦って帰って来た者の一人なのよ。」
『へぇ』という俺の答えに対して
「やっぱり義賊しか興味ないのね。」
「『しか!』ってなんだよ。俺には色々と興味は有るんだよぉ!……たとえば神経衰弱とか、ご飯は何だろう?とか弱い悪党出ないか?とかな!」
ほぼ義賊じゃね?というか、今暇な時に考え付くヤツじゃね??
「……そう。じゃあ……ご飯何処かへ食べに行く?」
答えは勿論!
「行く!!」
ウキウキ気分で出たものの、アルはアルジャーニ・デトロトという名前で有名人となれば、俺としては名声をかっさらって行きそうな雰囲気がしてたまらない。
別にアルが、裏切るとか無いとは思うんだけど……見たい!アルの今を見たい!!
「所で、アルとコロも誘いに行こう。先生!ギルド竜放火って何処にあんの?」
(やっぱり気になるのか心配なのね。素直じゃ無いなぁ。)
クスと笑う先生は、喜んで手を差しのべて来る。
「なんでやねん!俺はそんなガキじゃねぇ。」
「……でも、私はここまで背負って来たのよ?」
「それは、アレだよ。疲れていたんだよ!」
俺がワタワタと、だだっ子みたいに言い訳する仕草が面白いのかチョイチョイと突ついて来る。
「何に疲れたの?」
「言っても、信用してくれないだろうな。」
「信用するから言って。」
本当かなぁ?と思いつつも、ここで立ち止まっては居られず、とりあえずは話ながら行く事にした。
「先生達がぶっ倒れた後、それでも神経衰弱をしたかったので、大聖霊の骨爺と碧の冷姫を呼び出し三人でやっていた。
そしたら、何故かたったの五回目で頭がクラクラして来てね。」
「そりゃそうでしょ。大聖霊を呼び出すのにも、持ち主の力が相当いるのに、わざわざ勝負とかおかしいよね?」
ハ?となっている俺に、『これは、教えて無いけど』とその場で教えて始めた。
「聖霊というのは、持ち主と一緒に成長していくものなの。
聖霊と心を通わせるだけで、相当の力がいるし現世に呼び出すことや、力を借りて使うってのも相当必要なの。」
(まあ、そう考えるとアノ神経衰弱は本当に良い訓練素材だと思うわ。
アレを、魔術教会や他のギルドとかに伝達出来ればもっと凄い事になるのだろうけど……坊の、そのあとの面倒さを考えれば、止めた方がいいわ。)
無関心に聞く俺に『坊は、中々疲れないというのは凄いことよ』と誉められた事には、特に嬉しがるのは無かった。
ただ、この言葉には反応した。
「大聖霊と聖霊をあんなに従わせて疲れ無いのは、アル意味天才かもしれないわ。」
「そだな。俺は天才なのは知ってはいるが、……やはり人から言って貰えた方が、しんみりと俺が天才なんだろうな!って思って来たようだ。」
この会話には、本当はもう一人の人物がいる。
それは後方にいる人物だ。だから、クルッと後ろを向きながら歩き出す。
「なあ?エリザなんちゃら、俺は天才って知ってるよな?」
「天才だったら、私の名前呼んで下さい。」
「何言ってんの?俺はお前のボス!俺がなんと言おうが俺の勝手なんだよ。
エリザベレス!お前のニックネームは、エリザなんちゃらなんだよ!?……それとも、何かあった場合は『エリザベレスゥ!エリザベレスゥ!』と大きな声で連呼すっぞ!?
それでも、良いのかな?貴族さんよぉ。」
明らかにエリザベレスは停止した。
そして、腰が油切れなのかギギギと錆び付いて折れ曲がり、なおもギギギと顎を開けてヒュアーァ……と、空気を吸い込んだ。
「私は、エリザなんちゃら。エリザなんちゃらと呼んで下さい。」
「俺はボスなんだぞ!?なめんなよ!?」
ガクッと成ったエリザベレスを見ながらニヤリとして、心の中で【任務完了】として、クルッと前へと向き直した。
「ぶわぁ!っ痛ぇ。……おっぱいに金具を入れるな!あー痛。」
「どれどれ?鼻からは血は出て無いし大丈夫よ。所で、歩く時は前を見ないと事故に繋がるって教えたでしょ?
ぶつかったのが、私で良かったと思う日が必ず来るから……その時はお礼を言ってね。」
おっぱいに金具というのは、ロザリオの事である。
「それと、着いたわよ。」
明日もヨロシク




