捜索
こんにちは
「違う。これを……」
コロが仲間とも思えるアルに心を打ち明けて出したのは一通の手紙だった。
手紙は既に誰か読んでおり、開封されていた。
「ボスが!……行ってしまった。」
嘆くコロの声を聞きながら、アルは声に出して読んだ。
《コロよ、すまん》
俺は義賊だ。コロは知っているかもしれないが、義賊というのは風と同じなんだと俺は思う。
だから、コロが嫌なのなら自由にすれば良いと思う。だけど、俺は義賊であり皆の主人でもあるから俺は旅立とうと心に決めた!
嫌、正直に言うと『もっと!俺の義賊の凄さ』を世界に広めたいと思う。
すまんな……俺は、旅立つぜ。
「え?ボスは旅立ったの!?というか何処に?
何か行き先を知らないか!?」
コロは、他のギルドの干渉と魔道具のやり取りを話をすると『そんな少ない情報だけで?』とアルが指摘すると『いや、魔道具が無くなっていてボスの部屋にこの手紙が』と机に伏す。
「コロ!落ち込む前にやらないといけない事があるだろ。
ボスが居なくなるのは寂しいけど!最後の最後まで俺達が付き添った方が!見えない所で消え失せるよりマシだろ!?
さあ!ボスの足取りを探りに、街に聞き込みだ!!」
「そうね。幸い、竜砲火というギルドがある街はレッドゾーンという街だったはずよ。
ソコへ行くには、長距離荷馬車が必要で朝と夕に一本走ってるだけだし。」
さすがは先生だ!なんだかんだで良くご存知で頼りになる。
可能性は夕の長距離荷馬車にいる確率と、時間がまだ有るので何処かの食事が取れる所を重点的に調べることとなった。
「俺とコロでボスが行きそうな食堂に行きますので、アリサ先生とエリザベレルさんは長距離荷馬車か商人の業者の方にも声をお願いします!」
そして……
皆汗だくになりつつも、日が暮れるまで探し続けた結果、夕の長距離荷馬車へは商人と旅の人が数人しか利用されなかった。
結果ボスは居ないと判明した後も、四人は探し探し続けようやく手掛かりを得る。
「それくらいの子なら、綺麗な女性の手を舐めて店の激安商品!芋づる煮を食べて大喜びしていたよ。
あの子『芋のツルは最高だぜ!』って言った後、『あの赤い飲み物は何?』って気になっていたから『アレは大人の飲み物・ワインだよ』と言うと『俺は大人です!』ときっぱり言って注文してね。
そのあと、お酒を飲んでからフラフラと歩いて向こうに行ったよ。
あれは、どう見たって酔っていたね。」
指差す先は北門!すかさず、女性連れの酔った奴の情報を聞き回るが一向に集まらず、気付くともう!太陽は沈み空は闇が支配していた。
「くそぉぉ!!あのチビ何処に行ったんだよぉ!」
ドカッと壁を叩くエリザベレルに、疲れ果てタメ息を付いたアルがビクッとなる。
「エリザ!オラァ!?坊は、立派な十六歳で大人なんだよぉ!
孤児院を卒業し、十歳で自立!たった六年で大きな屋敷持ってる奴がチビとかじゃねぇだろうが!」
果たして、ガバァとエリザベレルの胸ぐらを掴むアリサ先生をコロが止めれるのだろか?……止めれない。
だが!熱い眼差しは送れる。
「……ふう。明日!隣街に行ってレッドゾーンへ行きましょう。
エリザ!あんた騎士団休みなさいよ!!」
何も答えないエリザベレルを横目に彼等は家に帰って来て、一階のテーブルにグタァと全ての体重を預けた。
コト……
「皆さん。お疲れ様です。」
そう言ったコロは、皆にささやかな水を提供するのだった。
何も言わず、ただ無言でヒヤリとした水のコクッと飲む。
「……あ。そうだった!」
「どうかしましたかアリサ先生?」
そう言うと、おもむろに胸の間に挟まっているロザリオを取り出すと何か唱え出す。
「あー!?ボスは聖霊を持っているはず!だったら聖霊を探せば良いだけ!!
しかも強い聖霊だから間違う可能性は無い!」
アルが言った事は、全ての仲間に浸透し直ぐ顔の表面が疲れが飛んだ感じがした。
「反応。反応は……」
カッ!っと目を開くアリサは驚愕する。
「ここにいる!階は二階で位置は坊の真下!!」
一斉に皆が動き出し、目的地へと一目散に走り出した。
バガン!と扉を開けると、テーブルには魔道具と小銭が散らばっており、奥でボスが横たわっていた。
「ボスー!良かったボス。良かったですボス!」
「あ、ああ。頭が痛い……気持ち悪い。
あ!ダメ!コロ、揺らすな!!ウブゥォォ」
ユサユサ動かすもんだから、コロにゲロを吹き掛けてしまった。
「坊ちゃん?皆がどれだけ心配したと思ってるか知って無いよね??」
俺は知っている!先生が【俺を『ちゃん』付け】する時はいつもといってアレが来る。
そして、アレが来た。
不覚!あまりにも不覚である!身体が自由に動かない大人の飲み物なんてクソ喰らえだ!
俺が最高位の義賊だろうが!ふらつく足取りじゃ、直ぐに先生に捕まってしまうぜ。
「いつの日か!先生のケツを叩いてやるから!」
「ハイどーぞ。何時でも良いですよ。」
馬乗りにされ、ケツを叩かれ俺は泣いた。
「これは約束よ!一人で行動は禁止!!それと、この件は受けるつもりで皆で行くから。……分かった!?
それと、小料理屋ルルーで一緒だった女性って誰なの!?新しいメンバーか何か?」
未だ俺の背に乗っている先生に、グスッと涙を浮かべつつ俺は素直に話し出す。
「それは俺の聖霊だよぉ。水もお金取るって言われたから……。
あの子の手を吸うと、美味しい水が出てくるの。」
なんて無意識な変態だ!そして、周りは思ったに違いない!どこかの貴族かボンボンだろうと。
よそから、ホッとしたようなタメ息と呆れたタメ息が聞こえて来て俺の意識は途切れた。
俺は深い深い眠りに付いた。
今考えれば、それは只酔って眠たくなっただけだと思う。
今日もヨロシク




