怒られた
こんばんは
俺はモソッと一口朝食を食べ始めると、ポリポリとアルが頭を掻いて大声で『今日も良いこと有りますよーに!いただきます!』といつも通りのルーティンが始まる。
そう!コレこそが、俺の朝が始まるという風が吹くのさ。
「朝食中すいません。ドアを開けてくれませんか?今、グレイン聖騎士団で住民の確認をしてまして、大丈夫なら大丈夫だという確認だけでも判別したいのです。」
一間の空気を泳がして無視をしたのに、外のグレインとやらが急かすのだ!全くもって鍛練を知らん奴等よ。
「出ないんなら私が行きますね」
「ぅおい!?……それはボスの役目だ。」
どうせ必要ない事を言うのだろ!という感じで先生を引き留めたのは、またもや先生にハメられたかもしれない。
何故なら先生は、俺が引き留めた時『あ、どーぞ』と、もの凄く早く席に着いて朝食を食べ出した姿を見て、コレハ!?と思ったね。
「はぁい。私達、いつでも大丈夫です。」
俺は精一杯の我慢をしている。
何故ならば、後ろでパキ・メチと食べていますねん今!という音が静かに聞こえる。
「体に不調とか有りませんか!?」
「不穏な声が続かないとも限りません!なので、明日から見回りしますから、どうかヨロシクです!」
ビッ!と敬礼して彼はお向かいさん宅へ行った。
俺は、あー……ソイツの背中が見えなくなるまでずーと見守っ
「やめなさい!別にやましい気持ちがあって、ヤッて無い事は知ってるからその辺で帰って来なさい。
そんな睨んでいると、そんな目付きに成っちゃうよ。」
なに言ってんの?意味わかんない……という感じで席に着いて朝食を食べ始める。
「所で、他の大聖霊の特性を前もって調べておいた方が、後々と目につけられずに行けるんじゃないの?」
この先生の思い付きは、思いの外アルとコロが身を乗り出してまでノッて来て『そう言えば……言ってませんでしたっけ?』と口を開いて来る。
「確か……枕元に七本のナイフが置いてあった次の日“変な人達を見た”と言ってましたよね?」
フッ。そんな、俺の自伝を聞きたいか?ならば話せばなるまいて!
「あれは……そう!あれはお尻に盗賊の烙印を押された次の日だった。
あれは、にわか雨があったような……」
「うん。その日の次の日ね。」
先生よ!アルは俺の自伝を聞きたいと言ったのだよ。それを分からんのか?……これだから女って奴は。
「アルはな、俺のロマンを聞きたいのだよ!そうだよなアル!?」
アルは、食べるのに夢中という雰囲気があった。実際に俺の返事は『ふぁ!?食べる音で聞こえませんでした』と言い訳を……
チョイ待て、仲間を信じようではないか?そうだろ。だって先生はまだまだ若輩者なのだから。
「先生はまだまだ義賊に入って間もない!という事をふまえて全てを許す!
いやぁ、忘れてしまっていたよ。先生は俺がガキだった頃は、周りからは『今日も綺麗だねアリサ先生!』と呼ばれていたが、今ではもう。
だが!アリサ先生は、この義賊では子供同然ではないか!ここは大人としての対応をしようぜ」
何かに勝ったのか、俺はガッツポーズを見せ腕を天高く上げる。
コレハ、このポーズは三人揃えば怖いもの無し!という俺達の男義賊のポーズだ。
チラ……
「「そそ。そうだ!俺達は義賊!暁の義賊!!」」
(まあ、少し遅れたが良しだな。)
ドカッと座り直して話し出した。
「確か最初ドアの前に立っていたのは……鎧を纏った馬と馬の上に乗った騎士だった。ソイツは、俺と目が合うと【ブヒュンブルル】と馬がくしゃみした感じに話したんだ。
だから俺は、チィース!ってな感じで頭を下げたら消えて行った。」
俺の話は、単に大聖霊と出くわしたが、何のリアクションもしないまま再び寝入るという話は
「違う!!坊の大聖霊の能力を聞いてるの。形式とか鳴き声とかどうでもいいから!!」
「は、はい。」
久しぶり真面目に怒られてから『えーと、これは自由に火がでるの』とか『これはね、風呂の水をお湯に変えたり綺麗に出来るの』とか『大地に刺すと成長を促進して・触るとひんやりとして良く眠れるの』とか伝える。
「ボス……声、ちっさいッスね。」
ちっさい声が尚も続く
「あとの二つは、持つだけで気持ちがワクワクしてね……いつもだともっと元気にねハハハ。
本当はもっとテンションが上がるのにね……フフフ。」
両手に一つずつナイフを持ちながら、全てが落ち込んでいる俺。
そして、それは起きた。
『もう一回寝る』とウルウルと涙は流さず背を向けて去ろうとした時、流石に行き過ぎたか!?と思ったのか『ちょっと!』とアリサ先生が声を掛けた時ソレは起きた!
テーブルの上に残った五本のナイフは勝手に宙に浮かび上がると、ボスとアリサ先生との間に入り込んだ。
そして、話した者達が次から次へと浮かび上がりアリサ先生の行く先を阻んだ。
俺が見えなくなると、大聖霊達も消え失せて行くのを見て先生は走って追いかけた時『フハハハ』と骨爺の声が何故か部屋に響いた。
「!!……うう!き、気持ち悪い。」
「アリサ先生!?」
「これが大聖霊の力?……この力は……」
俺は、俺は涙は流さなかったが逃げてしまった。俺は怒っていたのか?違うかな、子供の様にスネてしまったと思う。
寝転んで、目が覚めてトイレに行って先生に出くわしたら又逃げて寝た。
(情けないなぁ……)
そうして朝を迎えたんだ。
……
時間は遡り
「それで?聞き込みではどうだった?」
こう聞き返すのは俺達の新隊長で、最近飛ばされて来た貴族だ。
いや、貴族崩れと言ったところか。
「は!特に問題無いかと。
エリザベレル隊長も気にし過ぎでは?この街に【大聖霊・紫の混乱を呼ぶ者】がいるはず無いでしょ。きっと鑑定士と占い師の御二人が間違ったのでは?」
もういいって!こんな平和な街に、時々希に起きる事件なんて少しの暴力沙汰しかない。
俺達は、そんな些細な暴力事件の悩みを聞き入れるだけで良かったのになあ。
だって、街には変な団体がいて暴力を振るおうという奴は“暁の”とか言う、たった一人の輩が勝手に解決してくれる。
なのに!なのに!!いきり立った隊長が出陣すると俺達の前にアル男が『ボスの命令でな、ここは通せないね』と通せんぼした時にゃ、火に油を注ぎ込んだもんだ。
あれから、街の平和より立ちはだかった【仮面の男】を探し捲っているんだ。
「いや。そうは言ってられん。
現に、多数の民が被害に合っているのだからな。
で?被害が無かったのは、元冒険者ギルドに住むとかいう輩か。」
「ハ!問題無く元気に朝食を食べていました!」
(見える。また、火がボウボウと……面倒だ。)
ホウと言うと『かなり怪しいな』と言い、『明日も行くと伝えたよな?』からの『良いぞ』とエリザベレルは大層喜んでいた。
これは、紛れもなく一大事が起きると俺は見えたぜ!
明日もヨロシク




