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深夜ロンリーデスティニー論争

作者: 椰子森みり
掲載日:2017/07/02



運命ってなんだろうか。

街を、テレビを、雑誌を見ていてそう思う。

正直嫌悪感を禁じ得ないものの方が多い気もする。


わたし、運命を掴んだんです。とか、

ぼくにはあの人しかいなかったんです。とか。

全然そんな話、聞きたくないのだ。

いや、あくまで私は。

運命だなんて、あまりにも言い方が良すぎではないのか。


ただただ運命なんて、タイミングが良かっただけである。

例えば好きになるタイミングが、結婚したくなるタイミングが、相手に収入を機嫌を損ねず聞くタイミングが。


こう思うのは、私だけ。

かもしれないが、

実は大概の女子はそんなことを思っていたりする。いや、男性諸君も同じところかもしれないが。



要するに私たちは、人の幸せ話も、人が自分よりタイミングよく何かを成し遂げるのも、またそれを聞くのも、大嫌いである。

で、この根底にあるものはきっと、嫉妬である。

いいね、そんなに単純でいられて。

運命だなんて、あるはずがないのにね。

と思いながら私は、私のなかに、他でもなく、

世の中に冷め切らない、冷めきれない確かな「女の子」の姿を確認する。


ああ、まだいたんだな。

その実感は、苦く、重く、私を支配する。

「女の子は誰でも」の歌詞にあるように。

表ヅラいくら冷めきった顔をしていたって、

内心に飼っているのは所詮若いままの、青いままの自分である。

女も男もなく、自分である。


そんな自分は、決まって運命を掴んだあのタレントがあるいは星より多いような女のなかから1人を選んだあの俳優の言うような存在より運命的で、絶対的な、唯一無二の存在なのだ。




チェーザレ・ボルジアというスペイン人が好きだ。

はじめて彼についての小説を読んだとき、

私のなかの「女の子」は、

滅茶苦茶、破茶滅茶に、痺れていた。色んなところが。


もっとも、彼が生きていたのは500年も前のことである。

ルネサンスを生きた人だ。

この話をすると大概皆笑うが、なぜだろう、とある時考えた。

500年も前に生きていたからだろうか。


もう死んでいて、会えないからだろうか。


確かに彼には会えない。


どんな手段をこうじようとも。

なんてったって、とっくに死んでいる。




だが結論、会えないと好きになれないなんて、

そんなの、超つまらんことである。

私たちを恋に、愛に走らせる理由がそんな瑣末なことだなんて、考えたくもない。

あのタレントや俳優は、

人口が減り続けているこの国で、

たった1億そこらから、

たまたま同じときを生きていた人に

たまたま出会えて、

良いタイミングと仄暗い妥協を重ねた結果、

お互いの将来を誓ったのだ。

それが、運命なのか。



本当に?


いや、それもきっと運命なのだろう。

私がそこに、なんの価値も見出せないだけで。



私は純白のヴェールを被りたいとは思わない。

純潔を、死守する女にはなりたくない。

ただ私は、重度のバタフライ症候群で、

極度の中二病であるから、

心が打ち震えるような、

甘く痺れて立てなくなるような、

想像しただけで醜い欲に支配されるような、

そんな愚かな、美しい恋に憧れるのだ。


中二は妥協が嫌いなのである。

バタフライは、狭いお国じゃあ羽を広げられないのだ。

アダムとイブでももう少しマシだろうか。

彼らのせいで、女は妊娠のくるしみを、男は労働の苦しみを、それぞれ得たのだそうだ。

なんと罪深いふたりだろう。


彼らこそ、運命なのだろうか。

それとも、ただのタイミング野郎の鉢合わせだろうか。



結局わからない。

多分一生そんなことはわからない。

わかれない。

でもそれで良い。

たまにこうして、眠れぬ夜にひとりで、

何かに書いて、朝の寝ぼけまなこに、それがどれだけ浅はかで稚拙で、

私を一瞬のうちに羞恥心のかたまりにさせるようなものに見えても、

多分大丈夫だ。

それって健康なことだなと、いつも思うのだ。

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