ステータス確認
色々と忙しくて投稿が遅れてしまいました。
それでは、どうぞ。
少年は姉と一緒に昼下がりの参道で楽しいお出かけに興じていた。
少年は姉のすぐ横にぴったりとくっついており、誰が見ても姉弟の仲が良いことは一目瞭然だった。会話も弾み、お互いに笑いあっていると、不意に
「危ない!」
という声と共に少年は背中に衝撃を受け前に倒れこんだ。そして続いて聞こえるガラガラガシャーン‼︎という大きな音。
少年は何事かと思い、後ろを振り返る。
少年の表情が固まった。
目の前には長さ3mはある鉄骨が無数に散らばっており、その中の一つに本来茶色のはずが赤く濡れている鉄骨が1本あった。
その下には、倒れている頭から鮮やかな赤い液体がとめどなく溢れている姉の姿が。
「キャアアアアア!!」
通りを歩いていた誰かが叫んだ。
耳に響くはサイレンの音。
目に映るは非常事態の姉の姿。
少年は理解する。それと同時についさっきのことから1つの結論に至る。
僕のせいだ。
少年の回らない思考の中では、そのことが延々と繰り返していた。
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目がさめると、頬を一条の涙が流れていた。
遠い過去の記憶を思い出し、冬夜は暫くぼぅっとした。最近は見なかったこの夢は、小さい頃は毎日のように見ていた。
ではなぜ今になって再び見たのか。それは冬夜にも分からない。大方不可解な出来事が起きて無意識に精神が不安になっていたのだろう。
そんなことを考えていると、数回扉をノックする音が聞こえた。
「失礼します。皆様に昨日の客間に集まってもらっております。起床されているならば、客間に集まっていただきたく思います。」
「わかりました。」
冬夜は短く返事をし、みんなの元へ向かうべく、身支度を始めた。身支度といっても、寝癖を直し、支給された服を着る程度なのだが。
客間に着くと、もうほとんどの人たちが集まっていた。その中には涼たちの姿もあり、心なしか安堵した。
みんなはもう席についており、自分だけ寝坊したのかと少し恥ずかしくなりながらも、冬夜は座った。
と、そこで先ほど冬夜が入って来た扉が開け放たれ、そこから3名の男女が入って来た。
1人は昨日、僕たちと話をした美少女で、後の2人は煌びやかな衣装に身を包み、先ほどの彼女と同じ金髪に冠をのせた20代前半の青年と、白髪をオールバックにした険しい顔つきの50代のおじいさんだ。
3人は僕たちを一度見回すと、上座となる場所に座った。
「皆様、昨夜はよくお休みになられましたでしょうか。申し遅れましたが、私はセルバリス王国の王女、ニニア・エル・セルバリスと申します。」
言われてみれば、僕たちはまだ彼女の名前を聞いていなかった。
「そう言えば、俺たちもまだ名前を言っていませんでしたね。この際ですし、僕たちも自己紹介をしますか。」
僕たちは順番に自己紹介をしていって、最後の人まで終わると、タイミングを測っていたかのように、青年とおじいさんが話し出した。
「私はこの国の国王のオーディン・エル・セルバリスだ。まずは此度の召喚に応じてもらい感謝する。この国において、貴殿たちの身の安全は私が保証しよう。」
応じたんじゃなくて無理矢理こさせられたんだけどな。
思わずそうツッコミそうになったのは僕だけじゃないはずだ。
「私はマグナ・ドネ・クシートだ。宰相を務めている。貴殿たちの働きには期待しているよ。」
この人の瞳には僕たちはどのように写っているのか。先ほどの2人の態度とは全く違く、まるで物を見るような目だ。僕はどうもこの人は好きになれないと思った。
「本来はもっと大々的にお披露目をしたかったんだがな、先代の国王である父上が亡くなられてすぐだったもんで、王国内もごたごたしているのだ。まずはそこを詫びさせてもらおう。」
そう言うとオーディン国王は頭を下げ、謝罪の意を示してきた。
「オーディン様‼︎このような者たちにあなた様が頭を下げるなど…!「マグナ!」…失礼しました。」
頭を下げられたこちらとしては、どうすればいいのか分からず、ただただ困惑していた。
「…すまないな。マグナは仕事のできるやつなんだが、少々頭が凝り固まったやつなんだ。大目に見てやってほしい。」
「いえいえ!お気になさらず。ところで、これから俺たちはどうすればいいんですか?」
「はい。それにつきましては、当分は皆様に強くなっていただくために訓練をして頂きます。訓練にいたっては、我が王国の騎士団長に一任しております。もちろん強制というわけではありません。皆様の精神をないがしろにするような待遇はしないと誓います。」
「わかりました。それで他のことなのですがーー」
ニニア王女と涼が色々と話をする中、僕はマグナ宰相の視線が涼に釘付けになっているのに気がついた。たしかに彼の容姿や雰囲気は人の視線を集めるのだが、マグナ宰相のはそれとはまた違うような気がした。そしてその目は涼を値踏みするような陰湿さを含んでいた。今後マグナ宰相には気をつけたほうがいいなと冬夜は1人思った。
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話が一通り終わると、僕たちは王城のすぐ近くにある訓練場のような場所に連れていかれた。広い敷地に木製の案山子などが無数に置かれ、数人の騎士たちが訓練をしていた。こちらに気づいた騎士たちは軽く挨拶をし、すぐに訓練に戻った。そして僕たちを迎えたのは身長2mほどの屈強な男だった。身につけているのは胸や関節などの重要なところだけを守る軽鎧で、ところどころから見えている肌は筋肉でこれでもかというほどオ盛り上がっている。黒髪を短く刈りそろえてあり、イケメンというよりはダンディというような言葉が似合う30代ほどのその男は、ニニア王女の言っていた騎士団長なのだと一目でわかった。
「俺が騎士団長のグランだ。国王よりお前たちを強くするように言われている。まーこれからよろしくな。」
「それでグランさん。強くなるって言ったって具体的にはどういう事をするんですか?」
「『さん』なんてつけなくてグランでいい。まぁとりあえずこれを渡しとこう。」
渡されたのは、鉄のようなもので作られた手のひらサイズの板だ。片面は何もなく、もう片面には魔法陣のようなものが書かれてあった。
「それはステータスプレートって言われるやつでな。その名前通り、使用者のステータスが表示される。んでもって、今針を配るから、それで血を一滴それに垂らしてくれ。そうすれば使用者が認識され、そのプレートはおまえ達にしか使えないようになる。おっと、どうしてそうなるかなんて聞かないでくれよ?そうゆうのは作ったやつに聞いてくれ。」
いよいよ自分のステータスが見れる!冬夜の興奮度はMAXだった。
冬夜はいわゆるゲーマーという部類の人間で、RPGなどに必ずあるステータスが自分にもあると聞いて、興奮しないゲーマーはいないだろう。
冬夜は嬉々として針を人差し指の腹に刺し、血を一滴プレートにたらす。するとプレートの何も書いてなかった方に文字が浮かび上がってきた。
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桐原冬夜 LV1
種族:人間
性別:男
職業:園芸師
称号:勇者・植物使い
筋力:5
体力:5
耐性:5
敏捷:5
魔耐:5
魔力:5
スキル:園芸・鑑定・言語理解
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……うーん。これはどうなんだろうか。なんとなく嫌な予感がする。
そんな冬夜の予感が的中したのか、続くグランの言葉で冬夜の顔は引きつった。
「一般人の平均ステータスは10といったところだが、お前たちはそれを軽く越していると思う。それに皆強力なスキルを保有してるだろうしな。」
それを聞いた冬夜は冷や汗が止まらなかった。それもそうだ。なにせ一般人よりもステータスが弱いのだから。
それにこのスキル。強力・・・なわけないか。
現状わかっているのは、冬夜はとても弱いということだ。
ちなみにグランのLVは57で、ステータスは平均350だそうだ。彼より強い者は王国内にはおらず、実質王国最強らしい。だからこそ騎士団長なんだろうな。
「冬夜。ステータス見た?見してくれよ。」
冬夜が思考の渦にはまっていると、涼が近づいて来た。冬夜のステータスを覗き込むと、微妙な表情をし、温かい目を冬夜に向けた。
その後来た香穂、七海、清純も冬夜のステータスを見て、同じような視線を向けて来た。
そんなみんなのステータスはこうだ。
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黄戸涼 LV1
種族:人間
性別:男
職業:守護騎士
称号:勇者・守りし者
筋力:100
体力:50
耐性:100
敏捷:50
魔耐:50
魔力:50
スキル:剣術・盾術・反射・身体強化・鑑定・言語理解
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白石香穂 LV1
種族:人間
性別:女
職業:支援魔法師
称号:勇者・戦女神
筋力:50
体力:50
耐性:50
敏捷:50
魔耐:100
魔力:100
スキル:支援魔法・杖術・状況把握・鑑定・言語理解
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黒井清純 LV1
種族:人間
性別:男
職業:賢者
称号:勇者・魔の探求者
筋力:50
体力:50
耐性:50
敏捷:50
魔耐:50
魔力:200
スキル:炎魔法・風魔法・高速魔力回復・鑑定・言語理解
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赤城七海 LV1
種族:人間
性別:女
職業:疾風剣士
称号:勇者・疾き剣
筋力:50
体力:100
耐性:50
敏捷:100
魔耐:50
魔力:50
スキル:剣術・神速・身体強化・鑑定・言語理解
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………なんだこれは。
僕以外みんなチートじゃないか。
ステータスは低いので僕の10倍はあるし、スキルをだって3・4個持ってる。
「ま…まぁ、冬夜のすごさはこういうのじゃないんだって。気にすんなよ。」
「そ…そうだよ!冬夜くんがすごいっていうのはみんな知ってるから!」
……やめてくれ。気遣っているのかもしれないが今は心に響く。一縷の望みをかけてグランに『園芸』のスキルはどういうものか聞いてみる。
「それは……あー……まぁ、植物の成長を促したり、作物の種子を作ったりできるやつだ。まぁぶっちゃけ農家の奴はほとんど持ってるやつだな。まさか…それしかスキルがなかったのか…?」
僕は無言で自分のステータスプレートをグランに見せる。グランはそれを確認し、一瞬驚いたような表情をし、その後困ったような表情をした。
僕が自分の不利すぎる状況に遠い目をしていると、一連の流れを見ていたクラスメイトの1人、五十嵐亘が僕見てニヤリと笑う。そして僕を指差し、みんなに聞こえるような大声で喋り始める。
「おいおいこいつのステータス見てみろよ!マジで一般人以下だぜ!しかもスキルが『園芸』って!みんな戦闘系スキル持ってんのにお前だけねーのかよ!」
彼の言葉を聞いた皆はそれぞれの反応を示した。哀れみの目を向ける者、五十嵐と一緒になって笑う者、苦笑いを浮かべる者。それを僕は黙って眺めていた。しょうがない。事実なのだから。
五十嵐亘はクラスでもよく目立っていて、いわば中心的人物だった。彼の父親は有名な政治家で、よくテレビにも映っていた。そんな人の息子だからなのか、彼の言葉は人を惹きつける力がある気がする。
が、本人の性格は良くなく、その力を悪いことによく使っていた。問題を起こしても親の力でうやむやにできるのだからなおタチが悪い。
はぁ…と僕はため息をついた。それもそうだ。異世界転移された初期ステータスは一般人以下で、強いスキルは何一つもない。こんなスタートダッシュあるだろうか。おまけにクラスメイトからは哀れみの目を向けられる。………泣きたい。
が、そんな現状を良しとしない者たちがいた。
「おい。冬夜がどうだろうと同じクラスメイトだろうが。くだらねぇこと言ってんじゃねぇよ。」
「まったくですね。同じ人間として恥です。これは罰を与えないといけませんか?」
「いくらみんなだからって、冬夜くんを馬鹿にしたら許さないよ!」
「やめときなさい。この人たち相手にしたって無駄なだけよ。冬夜、気にすることないからね。冬夜が強いのは私たちが知ってるから。」
「みんな………ありがとう。」
僕は思わず泣きそうになった。そうだ。みんながいるから僕はまだ大丈夫だ。
「けっ!御涙頂戴の芝居かっての」
「なんだと!」
「やめんかお前たち!」
グランに諌められて殴り合いが勃発することはなかったが、涼たちと五十嵐の雰囲気はギスギスしていた。
「はぁ…それじゃ今後のことを話すぞ。まずはーー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今僕は自分の部屋にいる。
そして部屋の中には当然の如く居座る4人の男女。
あれから1週間。現在の僕のステータスはこんな感じだ。
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桐原冬夜 LV5
種族:人間
性別:男
職業:園芸師
称号:勇者・植物使い
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔耐:10
魔力:10
スキル:園芸[下位種子創造][成長促進][土壌変換][生命の種]・鑑定・言語理解
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はい。ようやく一般人並みになりました。この1週間、僕たちは訓練をし続け、自己強化に励んでいた。それと同時進行で座学も行い、この世界のある程度のことは知れた。また読み書きにおいて、この世界の言語はスキルの言語理解のおかげで話すことも読むこともできるのだが、自分が文字を書いて相手に伝えるのは出来なかった。そのため、文字の書き方を学び、日常生活に不便がないくらいには書けるようになった。
そして今日も今日とて雑談の時間です。ここ1週間で定着したこの時間は寝る前の1時間程、僕の部屋に集まって文字どおり雑談する時間だ。今日の話題は明日から始まる古代遺跡訓練だ。