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さらば担当の時

ハイ、ぜんかいのおはなし~!


メイや沙耶たちがガールズバンドを結成しました!

おしまいっ!

「どうだい? 司馬クン。そちらの首尾のほうは?」

「余裕だな、西村朋晃サンよォ。…本気で首獲ってやるから覚悟しときな…」


K大祭当日、朝から暑苦しい戦いが始まっていた。その相手は西村朋晃、司馬の同期でK大の院生である。


「ま、まぁまぁ、司馬さんも西村さんもここは落ち着いてください。美味しいお茶でも淹れますから、今はどうか争わないでください」

メイが男たちの中に割って入る。

「大体、勝負は最終日のステージで決まるんです。今からそんな調子ではお体が持ちませんよ?」

「いやぁ、メイちゃん。噂に聞いていた通り、まるで天使のような優しさだ。こんな男臭くて胡散臭いしょうもないオトコのところにいること自体、信じられない」

「男臭くて胡散臭いとはよく言ったもんだぜ。そういうお前は、なよっちィモヤシ野郎だろうがよ!」

「全く… 君には気品というものが全く感じられないのだな。これでは君のところにいる女性陣がかわいそうだ」

「確かに、男臭くて胡散臭いことには間違いありませんわね」

秋帆まで中に割って入ってきた。おいおい、騒ぎだけは勘弁してくれよ?

「気品も教養も下の下だと… そう思いますわ。でもね」

秋帆の鋭い瞳が西村を捉えた。

「仲間を想い、慕われる素地は一見の価値アリですわよ? そうは思わなくて?」

「お嬢…」

司馬の瞳がかすかに潤んでいた。

「フン、それはどうだか。大体、研究室で最年長だってだけだろ?」

「そう思われるなら、それもよし。ただし、こちらもただでは済まさないとお思いくださいませ」

メイが淹れたお茶を一気に飲み干すと、西村は白衣を直しながら退出した。その場にいた女性陣全員がその背に舌を出してブーイングの意思表示をしてみせる。

「まったく困った野郎だねぇ…」

村山が司馬の傍で一言。

「まぁ…今度の失態を引き起こしちまったのは、俺だ。何言われたって仕方ないさ」

そして、司馬は秋帆の方を見て一言。

「お嬢…、アンタの言葉、この司馬繁しかと受け取った。俺の演出した明日のステージ、楽しんで演ってくれ」

「言われるまでもないですわ。私は私の意志でこの富野研に居たいんですの。そこのところをお間違えなく」


◇     ◇     ◇     ◇


「マスター、一緒にいろんな展示を見て回りませんか?」

「俊樹。あたし見てみたい展示、あるんだけどな?」

メイと沙耶。どちらも肝心な俺の方見てないじゃないか? お互いを見合ったって、決定権は俺にあるんじゃないのか?

「おいおい、一度に誘われてもどうこうできないぞ。だいたい俺は退院して間がないんだ。慌てるな」

「そんなこと言って。お医者さんに『超人的な治癒スピードだ!』って言われてたじゃない」

沙耶が口を尖らせる。時に見せる、駄々っ子モードに突入してしまった。

「そんなこと言ってもだなぁ…」

「そうですよ、沙耶さん。マスターは病み上がりなんです。あんな大怪我の後ですから、あまり無理させてはいけません」

「じゃあ、メイちゃんが遠慮なさいよ。いつもいつもメイちゃんばっかりなんて、ズルいと思う!」

やっぱり俺の方を見てない。…全く、お前ら俺をどうしたいんだ?

「一番悪いのはマスターの方です!」

「そうね。ハッキリしてくれない俊樹が一番悪いんだわ!」

二人の視線が、いきなり俺に向けられた。

「そんなこと言ってもだな、俺は沙耶やメイ達の衣装、全部一人で作ったんだぞ? 少しは休ませろ!」

「人の気も知らないで、マスターは全く無神経です!」

「この人参野郎!」


で。

結局ジャンケンして、一時間の交代で学園祭を回ることになった。

最初はメイと。

そして沙耶と回った後、衣裳の試着と手直しという超ハードなスケジュールをこなすこととなった。

故に、二人と巡った学祭での内容は、残念だが割愛させてもらう。俺の頭は身も心もデリケートな女性陣の衣裳サイズのことで手一杯だったのだ。最初に測ったサイズで合っているだろうか? 否、幾分か余裕は持たせて計測している。本人の申告はあえて無視して作らせてもらった。後はピンなどで仮止めして、ざっと縫いを残すのみなのだ。


残すのみ?

そう思うだろう。しかし、違うのだ。

衣裳を手作りするコスプレイヤーの皆さんにはきっと、経験があるかもしれない。

ただ現場で合わせるだけなら、安全ピンで留めるだけでいいのだ。

しかし、今回は違う。ステージでの激しいアクションが待っている。

演奏中に衣裳が破れたり破損することだけは避けないとならないのだ。


でありながら、本人のプロポーションを活かしたデザインを崩さないよう気を配らねばならない。

何とも悩ましい案件だ。俺は大きなため息をついた。


◇     ◇     ◇     ◇


俺がデザインした衣裳というのが、キャンパスライフをイメージした袖なしのトップスにネクタイ。舌は赤いチェックのスカート又はレギンス、どちらか好きな方を選択させてある。レディースの衣裳というものはコレでなかなか値が張る物が多い。故に、生地から型紙に合わせて切り抜き、縫い合わせ、組み立てるのだ。勿論、激しい動きに合わせて伸び縮みする素材を使用してある。ベースはそれ。そこまでで2回ほど訂正をくわえた。その上での各自コーディネートをするには全く問題無しとしてある。そこのあたりのアレンジは、男の俺より女性陣のほうが確かな目を持っている… 筈だ。

時間は限られている。なんとか早く最終試着してもらって、本番に間に合わせなくては…!


◇     ◇     ◇     ◇


ステージの当日!

俺は朝からやはりと言うかなんというか、やっぱり発生した衣裳の手直しで殆ど寝ていない。故に、少し眠らせてもらうことにする。おやすみ、騒々しい毎日よ。これで俺の役目もひとつ、終わる…。

そんな訳で、本番前の中休みです。

次回はいよいよ、学祭ライブの本番!

いや~、一体どうなるんでしょうね~。

怖いですね~、ハラハラしますね~。

それではそろそろお時間です。

皆さん、今夜も(公開日時は昼ですが)さよなら、さよなら、さよなら~♪

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