表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/17

記憶

 「ピースメーカー」の名前が知れ渡るのに、時間はかからなかった。戦闘映像がいろいろなチャンネルを通じて伝わった。ペイント弾により赤く染まったレッドサンダーの艦橋が大写しになっていた。

 クーデター軍には、まるで挑戦状のようにうつった。アルテミスやコンコルディアにとったら、この戦艦が欲しくなるだろう。さらに、抵抗を試みるブリタニア軍残党には、鼓舞に感じられた。

 ピースメーカーと呼ばれる艦がいる限り、ブリタニア領域内の航行といえども、警戒が必要になる。ピースメーカーは、再び、行方不明になった。

 

 オペレーションセンターで、情報収集作業が開始されていた。すでにアレックス・カザミ中佐の経歴は、すべて調べられた。学生時代の成績から乗艦履歴、とりたててるほどの業績は見当たらなかった。

 ホーネッカーは、集められた電子媒体を自分専用の端末で覗いていた。刻々と、データはアップデートされた。そのとき、カザミ映像を見た時、思い出した。確か、士官学校時代、自分より学年が2つ上だった。昔とあまり変わらない容姿のおかげでカザミを思い出した。ただ、彼は士官学校時代も、目立つ存在ではなく、アジア系であることだけが、彼の記憶に残っていた。一度訓練で同じ班になったことはあるが、特に会話もなく、訓練をこなした。

 なぜ、この男が邪魔をするのか。凡庸な男は、静かに従っていれば命を落とさずに済んだものを、そう考えずにはいられなかった。

 

 練習艦の艦長シートで、集まった情報を選別しているカザミがいた。クーデター実働部隊の首謀者がホーネッカーであることがわかってきた。カザミも、同じように士官学校時代のことを思い出していた。優秀な成績をおさめて何度も表彰されていたので覚えていた。一度だけ同じ班で訓練したことはあるが、普通な青年だった。理想と現実の板挟みにあい変貌したのか、それとも、羊の皮をかぶっただけだったのか、今となっては確かめようがなかった。


 ホーネッカーは、有能な側近を呼び寄せた。

「ハンス、次の敵の一手は、最前線の艦を背後から襲うか、その最前線の補給を断つか。」

「私も、その考えに賛同します。」

「そこでだが。」

彼は細かな指示を伝えた。

「なるほど、妙案ですな。」

ホーネッカーは微笑を浮かべた。

長身のハンスは、作戦を実行すべく準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ