艦長
「輸送艦の艦長に、攻撃が教えらるのか、とか言っていたよね。」
ガウディは、笑みを浮かべながら、サザビーをからかった。
「勘弁してくれよ。一体、あの艦長は、何者なんだ。」
通りかかった副官のマテウスが二人に言った。
「ただの輸送艦の艦長だよ。」
士官候補生の二人は、敬礼をしようとしたが、ここではいいと合図をした。
「ご存知なのですか、艦長のことを。」
赤毛のガウディが、話しかけた。
「2年前から練習艦で一緒になった。ただ、話を聞くと他の艦長とは考えていることが違うな。」
「なぜ、輸送艦の艦長に?」
サザビーが尋ねた。
「聞いたところによると、一番艦長になりやすのが輸送艦だったらしい。それと、副官のころ退役前の艦長について、そこで多くのことを学んだと。そこが分岐点だったと。」
副官は、ここで話題に挙っている艦長のところに急いだ。
スクリーン上で動かなくなった戦艦レッドサンダーを苦々しく見つめているのは、アロイス・ホーネッカーだった。アルテミス軍のことは、気にしていたが、まさか内部に反抗する艦があるとは。
主力艦には、事前に同志を潜り込ませておいた。一体、どんな艦にやられたというのだ。上がって来た情報を聞いて、笑ってしまった。
「練習艦だって?」
完全にノーマークだった。ただ、練習艦が直前で艦を変更していることがわかった。新造艦で、極秘裏に製作されていた「新兵器」であることに気がつくのは、もう少し後のことだった。
カザミ艦長は、マテアスが到着するとすぐに話を始めた。
「実は、どうしても決めておきたいことがある。」
「何をですか?」
「この艦の名前だ。」
「確かに、名前はありませんが、特に不都合はないと思うのですが。練習艦とか、潜水艦とか、みんな適当に呼称していますが。」
「いや、先程の攻撃成果を大々的に宣伝してやろう、と思ってね。その際、名前があったほうがいいと思うのだが。」
「このまま、深く潜って、さっきのような戦闘を続けるつもりではないのですか?」
「いや、そう何度も通用しないと思う、次は敵も警戒するだろう。それに実弾が少なすぎる。」
艦長の言うことも、一理あると思った。ふと、頭の中によぎった言葉を副官は呟いた。
「ピースメーカー・・・、ピースメーカーというのは、どうでしょうか?」
「なるほど。マテアスの案を採用だ。」
カザミ艦長は、とてもご機嫌だった。どうやら、次の一手は、すでに彼の頭の中にあるようだった。