会見
通された部屋は、古い調度品で飾られていた。カザミは、ここしばらく硬い椅子にしか座ったことがない。ふかふかのソファに身を委ねて緊張が解けていく。じっと目を閉じて大統領が来るのを待った。
警備の人間が先にドアを開けて入ってきた。次に大柄な温厚そうな大統領が現れた。
大統領は、大きな手をカザミに差し出した。
「ようこそ我が国へ。」
「よろしくお願いします。」
艦長も立ち上がり、手を握り返した。
大統領は、ソファに腰を下ろすと単刀直入に聞いてきた。
「あの船は、我々に提供してもらえるのかな?」
「ええ、当然です。船のコンピュータにある設計図も含めて差し上げます。」
「そんなに簡単に手放していいのかい?」
「ピースメーカーが、抑止力として機能すれば、何も問題ありません。」
「なぜ、我が国を亡命先として選択したのかな。」
大きな体を少し揺らしながら、質問をしてきた。大統領の目をまっすぐ見つめながら、カザミは答えた。
「きっと、宇宙にバランスをもたらすため、ですかね。」
「なるほど、覇権を目指すだろうブリタニアは、きっと我が国を狙って来るだろう。ただ、この船があれば、簡単に手を出すことは、できないだろう。」
「悪い話ではないと思うのですが。」
「宇宙に存在する国家の中では、一番非力だ。しかし、このピースメーカーが味方につけば、十分な戦力だ。」
「ブリタニアも簡単に戦争はできないはずです。」
「同感だ。改めて君たちの亡命を歓迎しよう。そして、君たちが祖国を取り戻すその日まで、協力を惜しまない。」
大統領も満足そうな笑みを浮かべた。
亡命のニュースは、宇宙を駆け巡った。このニュースにより力関係が大きく変わった。ブリタニアの敵ではなかったコンコルディアが大きく立ちはだかった瞬間だった。
カザミは、入艦する際に使用する通路のカエルのステッカーの前にいた。ステッカーに触りながら、呟いた。
「ここまで、無事に届けてくれてありがとう。」
乗員全てを無事に、ここまで連れてきて彼の伝説は継続された。ただ、彼が本当に望むのは、独裁者からの祖国の解放である。カザミの戦いはまだ続いていくのだった。
ここで、クーデター発生(第一部)を完結します。
改題してこの世界観で、続編を考えています。