亡命
ピースメーカーが”浮上”した。
その場所は、コンコルディアの国境を超えた辺りだった。
突然、姿を現したのでコンコルディア政府は驚きを隠せなかった。国境を警備していた艦の一つは慌ててピースメーカーに接近した。
艦がピースメーカーに近づいた段階で、カザミ艦長がマイクを片手に話しはじめた。
「こちらは、ブリタニアの戦艦ピースメーカー。貴国への亡命を希望する。」
亡命・・・。
他人事のように見ていたコンコルディアの艦は、突然、当事者になってしまった。
「こちらは、コンコルディア軍戦艦トネール、艦長のトリュフォーだ。まず、武装解除を要求する。」
「了解した。そちらの指示に従う。」
コンコルディア政府は、突然の訪問者に大騒ぎである。
「ピースメーカーの亡命は、チャンスではないですか。」
若手筆頭の国務長官は、言葉を続けた。
「艦の戦闘力は、折り紙つきだ。他国への抑止力にもなる。」
財務長官の老紳士は、言葉を遮るように発言をした。
「しかし、我々も他国の革命に巻き込まれることになる。」
話を聞いていた大統領は、腕を組み話を聞きながら考えを巡らしているようだった。
そして、重い口を開いた。
「困って我々を頼ってきたのだ。無下にもできまい。」
そういうと、亡命の手続きを進めるように指示を出した。
ピースメーカーと名付けられた艦の中は、静かだった。武装解除のために乗り込んできたトリュフォー艦長が目を光らせていた。
トネールの後を追うように、ピースメーカーは、コロニーに吸い込まれてた。
ピースメーカーの亡命は、成就した。