戦術
「艦長、トドメを刺さなくてよかったのですか?」
副官は、確認をした。
「これで十分だ。」
カザミ艦長は、自分に言い聞かせるように言葉をつぶやいた。
「それに、こちらには、もう武器がない。」
艦長は、少し伸びた顎髭を触りながら言葉を続けた。
「そうですね。食料もそろそろ限界です。」
副官は、話を続けた。
ブリッジの会話を聞いていた操舵手は、不安を感じた。今までは、勝利に酔いしれていれば良いだけだった。補給が受けられないという現実は、あまりにも悲観的だった。
「そろそろ、次の段階だな」
カザミ艦長は、次の手を考えているように感じられたが、本当に全員が助かる手はあるのだろうか?操舵手は、目の前の計器を見つめながら考えていた。
そのとき、副官が操舵手に近づいてメモを渡した。
「次の目的地だ。」
「ここれは・・・」
操舵手は、驚きの表情だった。鳩が豆鉄砲を食らうとは、この顔だろう。
ホーネッカーは、レッドベアの敗北をオペレーションセンターのいつもの席で受け取った。
「ハイデックが破れたか・・・。」
負けは、認めざるを得なかった。ただ、彼らも追い詰められていることはわかっていた。
「補給なしでは、もう限界だろう。」
最後に交渉のテーブルにつくのではないかと、ホーネッカーは考えていた。
あの艦が手に入れば・・・。
どのぐらいまで妥協できるのか、あの艦長は何を要求してくるのか?
艦長がダメなら、誰かを良い条件で引き込こもう。
「さて、どう動くつもりだ。」
ホーネッカーは、低い声で呟いた。
自室にて久しぶりにカザミ艦長は、リラックスしていた。
どんなに勝利を続けても、味方がいない状態では勝ちはない。
戦っている間に、クーデター軍に対抗するグループが出てくるのを期待していたが、完全に掌握されているようだった。
「最後の手段を使うしかない。」
今、目的の地に向かって動き出している。