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一撃

 スペースコロニーからミサイルが飛んで来た。

 ホーネッカーは、この事態を想定していたようだった。通常、スペースコロニーからミサイルを発射する装置は存在しない。

「反撃。」

 カザミ艦長の言葉と同時に、迎撃用のミサイルが発射された。練習艦も準備していたのだ。お互いの距離が短いため、相討ち狙いのミサイルかと思われた。そして、ミサイルがすれ違う瞬間にピースメーカー側のミサイルが爆発した。それに伴い、コロニー側のミサイルも誘爆した。

 大きな爆発の中から、ピースメーカーから時間差で発射されたミサイルが、すり抜けて行った。驚いたのは、クーデター軍である。さすがのホーネッカー、苦い顔をした。ミサイル一撃では、コロニーは潰れない、その確信はあった。

 ミサイルがスペースコロニーにぶつかった。大きな円筒形のコロニーが激しく揺れた。だが、爆発ではなかった。赤い塗料がスペースコロニーの一部に付着した。

 ペイント弾?

 さらに、爆風の中からピースメーカーが現れ、コロニーに接近する。ぶつかるぐらいの距離をスペースコロニーを舐めるようにして航行した。第一コロニーを通り過ぎると、ピースメーカーは「潜行」した。


 ホーネッカーは、怒りよりも笑いが止まらなかった。コロニーの警備をしていた艦に、戦闘行為の停止を指示した。

「追撃しなくてよろしいのですか?」

部下のハンスは、揺れが収まるまで、まっすぐ立っているのは難しかった。

「今の段階では、潜られたら探しようがない。」

 ホーネッカーは、対抗手段を考えていた。宇宙機雷を撒くことができれば、こんなに接近されることはなかっただろう。ただ、時間がなかった。むしろ、それも計算してあの艦は接近したのだろう。

「たかが、一隻と考えていたが・・・。こうなってくると邪魔だな。」

ホーネッカーは冷静な言葉を呟いた。


 スペースコロニーに一撃を加えたことで、ピースメーカーの中は異様な熱気に包まれていた。完全に勝利でもしたかのようだった。ただ、艦長のみ、あまり浮かない顔をしていた。

副長が尋ねた。

「どうしたのですか?」

「結局、クーデター軍を制圧したわけではないからな。」

もし、こちらの立場ならホーネッカーは、スペースコロニーに本格的な攻撃を加えていたのだろうか?カザミは自分が正しいのかどうか自問自答した。

クーデター軍からブリタニアを取り戻したいが、今の戦力では、無理がある。カザミ艦長は、自分の目標を明確にした。それは、今より悲惨なアルテミスとブリタニアの全面戦争を回避することである。自国の不満を戦争によって外に向けさせることは、歴史が証明している。革命の力に酔っている人々に、ピースメーカーから放たれた渾身の一撃は、現実に引き戻す一手になったのだろうか?

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