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恋愛感情

静かにドアが開けたのに葵はシャーペンを持つ手を休めこっちの向いた。


「おはよ」


ニヤっとした後、恥ずかしそうに頰を膨らます。


「も〜思いっきり寝ちゃった」


「プール行って来たんだって?」


絨毯の上にリラックスした体勢で座り、椅子を回転させて勉強机に背中を向けた。


「うん。南海から誘われたの」


「2人で?」


「ううん、他のクラスの女子1人と…あと同じクラスの男子が2人…」


「そうなんだ」


葵にバレないように小さくにやけた。


「さっきさ、さくら先生に会ったよ」


「え!嘘!さくら先生に!?どこで?」


葵は座ったままジャンプして椅子が小さく暴れた。


「うん。先生も買い物来てたみたいで」


「えー!先生…何か言ってた?」


「褒めてたよ〜葵のこと。真面目で勉強もできて友達もたくさんいるってさ」


ニコニコしながら話すと、葵も釣られたように笑顔になる。


「そうなんだ。…そんなことないけど」


「あと…俺のこと話してくれたんだな」


シュンとして小さくなってしまった。


「え、あぁ…ごめんなさい。勝手なことして…」


責めるつもりはなかったのに…慌てて葵の顔を笑顔で覗き込んだ。


「ううん、葵がいいなら誰にだって話したっていいさ。先生、何か困ったことがあったらいつでも言ってくれって。本当にいい先生だな」


すぐに葵の表情は晴れた。


「うん。なんでも話せるさくら先生だから話せたんだ。とってもいい先生だよ」


話しながらもずっと考えていた。

葵に何かとんでもない秘密があるのか、と。

しかし、いくら考えても家に血の繋がりのない12個上の男がいること以外普通の女の子にしか見えなかった。

だとすると学校で何かあったのか。

男子が苦手だったことで何かトラブルがあったのでは、と。

確かに男女間のトラブルは親には話しにくいかもしれない。

友達にも恵まれているならばいじめられているとも考えにくい。

さくら先生が最後、もう一度話したいと言った時の表情を思い出してもあまりいいことにも思えなくてどうも落ち着かなかった。



「何?」


いつの間にか夕食の時間になっていた。

お母さん特性のハンバーグを気付けば半分ほど食べていた。


「何って?」


異常に気付いた葵が箸を置いた。


「だってずっと見てくるから」


気付かれないようにしていたつもりがこのザマだ。痒くもない頭を掻きながら麦茶を飲み干す。


「あ、いや別に…お母さんに似てるなぁって思って」


慌ててお母さんを会話に巻き込む。


「娘ですからね」


「何それ、今さらー?」


大したことないと思ったのか、笑いながらごはんを食べ始める。


「しかし偶然に会うなんて運命じゃねーのかそりゃあ」


すっかり酔いが回ったお父さんが枝豆を食べながら冷やかす。


「デートの話はなかったんか?」


いつの間にかさくら先生の話になっていた。


「まさかありませんよ、本当に挨拶と葵の話をしただけですから」


少し嘘をついた。

先生と喫茶店まで行ってたことを言えばややこしくなってしまうに違いない。

見てくれはデートだった。


「勿体ねぇなぁそりゃ、俺が蓮くんなら絶対口説いたけどよ」


「蓮さんはあんたと違って誠実なんです」


お母さんが睨みながらごはんを食べた。


「にしてもよー、蓮くんは本当によく仕事頑張ってくれるわ」


「もう本当にねぇ、ありがとうございます」


「いえいえ、仕事ですから」


「今日だってよぉ、蓮くんのおかげで予定より一時間以上早く終わっちまってよ〜大助かりだわ。力はあるし覚えるのは早しい。武田のバカヤローに教えてやってくれや」


武田 憲司(たけだけんじ)

年齢は俺の一つ上で髪の毛は長めの金髪、ピアスもして見た目の印象は決して良くない。おまけに仕事は手抜き癖があってお父さんはその度に注意して手を焼いていた。

しかし、


「でも武田くんだってほら、頑張ってるじゃない」


彼女との間に新しい命を授かりおめでた婚することになってからは意識を変えて休まず仕事に来ている。

最初はその容姿から話しかけにくかったがいざ話してみれば年が近いせいもあってかすぐに仲良くなった。

年が近いんだから敬語は無しにしようぜと今では先輩でもあり友達でもあった。


「まぁ、前よりはな」


お父さんは缶ビールの最後の一口を飲んだ。


「確かにちったぁマシなツラにはなったがな」


結婚が決まってからの武田さんのことしか知らない。

確かにお父さんに言えないような文句を言ったりはするが見た目とは想像もつかないくらい真面目に働いていると思う。仕事だって教えてくれるし。


「蓮くんとは比べ物にならねぇよ。頑張りが違うわ。ホントにこれで蓮くんが家庭持つなんて言ったらどうなっちまうんだろうな」


家庭を自分が持つなんて…


「あ、そうだ蓮くん!蓮くんが嫌じゃなかったらなんだけどよ…うちの葵もらってくれぇかな?」


「え?」


驚いて固まってしまった。


「だから、将来葵と結婚してくれねぇかい」


ようやくお父さんが言っていることが理解できた。

隣の葵を見る勇気はない。

横目では箸が止まっていることだけわかった。


「ちょっとお父さん、年齢考えて下さいよ」


と、お母さん。


「だから高校卒業しちまえばあとはいつだって俺はいいぜ。なぁ葵!お前も蓮くんならいいだろ」

「バカ!!!!!」


葵からこんな大きな声が出るなんて知らなかった。

息を切らしながら立ち上がりお父さんを一瞬睨むと電気も付けずに階段をダッシュで駆け上がった。


「ちょっと葵!」


お母さんの呼び止めもむなしく扉を閉める音が家中に響いた。


「も〜!そんなこと本人の前で話さなくたっていいでしょ!」


お母さんも珍しく怒鳴った。


「何なんだアレ!蓮くんと話してる時あんなに楽しそうな顔してるくせによ」


「も〜…ほんとに余計な事言って!ごめんなさいね」


眉間に皺を寄せて怒ったお母さんはそのまま謝ってきた。


「いえ僕は全然…ただ葵が…どうしましょう」


「いいんだいいんだあんなのほっときゃすぐ元に戻るから」


「年頃なんだから!もうその辺ちゃんと気遣ってくださいよ!あ、できたらなんだけど…蓮さんからまたいつも通り話しかけてもらってもいいですか?蓮さんにはあんな風に怒らないと思うの」


「分かりました。またあとで話しかけてみます」


お母さんは食べ終えた食器を片付けている最中にお父さんは顔を赤らめながらいつになく真剣な表情でこちらを見た。


「蓮くん、真面目な話蓮くんが葵と結婚してくれるなら本当に嬉しいんだ。俺だけじゃねぇ、母ちゃんだって同じ意見なんだ。俺たちは前から蓮くんのことは気に入ってるけどよ、最近じゃ葵だって蓮くんと話してる時が何より楽しそうにしてる。仕事だって蓮くんがずっと居てくれればいいってみんな思ってる。だから結婚してくれりゃ何も気にしないでここにいれるだろう。もちろん、二人の人生だからさ、それぞれの歩みたい道があればそうしたらいいしな」


目を細めたお父さんに釣られる自分がいた。

娘をよろしくだなんて最高峰に気に入ってもらえなければ言われない。

でも…


「ありがとうございます。でも葵とは兄妹として接してきてここまで仲良くなれたので…それをいきなり結婚だなんて…」


お父さんは笑いながら首を横に振った。


「別にいつまでに答えだせなんて言わねーし娘もらってくれないんだったら家出てけとも言わねー。ただ俺たちがそうなったら嬉しいって思ってることは頭の隅にでも置いといてくれな」



居間で一休みしてからお風呂に入り、葵の部屋の前まで来た。

部屋の明かりは漏れていたので起きてはいるはすだが物音はしなかった。


「俺だけど…入っていい?」


「うん」


元気のない声が向こうから聞こえた。

扉を開けるとスマホを片手に持ったままうつ伏せになっていた。

扉を閉め部屋の真ん中であぐらをかいて座るとスマホを枕元に置きそこで起き上がり座った。

唇は波打たせたようなラインで薄いのに目はパッチリと開き目が合った。

これから泣くのか笑うのかわからない表情だった。

お母さんから話しかけるように言われたがいざ本人を前にすると何を話したらいいかわからなかった。


「さっきはごめんね。大声だして」


「大丈夫だよ」


「大っ嫌い…お父さん」


「そうかぁ、少なくともお父さんは葵の事大好きだと思うけどな」


葵は首を大きく横に振った。


「いっつも余計な事ばっか言ってさ、それで周りの人にも迷惑掛けるし声でかくてうるさいし」


「そんだけ葵の事が大事だって」


葵はまた首を横に振った。今度はゆっくり。


「にしても中学生に結婚の話は早すぎるよな」


「早いしお父さんだけには絶対にそんな話したくない」


表情は晴れなかった。


「そっか」


言葉に困った。

元気付けようと余計な事言えばさらに傷付けてしまいかねない。

ただ、ここにはいなきゃ。


「蓮くんだって嫌でしょ?あんな事言われて…」


「別に…むしろ嬉しいくらい」


「え!なんで?」


「だって大事な娘と結婚してくれなんて本当に気に入ってくれなきゃ言われないもん」


「お父さんが蓮くんの事気に入ってるのはわかる」


「ありがたい話さ。何か恩返しできたらいいんだけどな…」


「いいよ、あんな親父に」


頭を叩く振りをして頭を撫でた。


「そうはいかない。まぁ葵の気持ちもわかるけどお父さんは葵の事を想ってあんなこと言ったってことはわかって欲しいな。ま、お酒もあるし許してあげてね」


葵は目を見ずにコクリと頷いた。

別に言うほどお父さんのことを嫌いになったわけじゃない。

それくらいわかるよ。兄貴ならね。





その日は突然やってきた。

仕事のスケジュールを確認したがしばらくは朝から夕方までの仕事が続いてさくら先生に連絡ができずにいた。

が、それから一週間後午前中にお父さんが


「今日はここまでやってくれりゃあとは午後遊びみてーなもんだから蓮くん上がってくれや」


と、お昼には退勤時間を迎える日が来た。

すぐに事務所の電話を使い常に持ち歩いていたさくら先生の電話番号のメモを取り出した。


「もしもし」


数秒後に出たその声は電話だとどこか子供っぽくて可愛さが増す。


「あ、さくら先生ですよね?蓮ですけど」


「あー、蓮さん。お電話ありがとうございます」


「あの、この間の話なんですけど今日って空いてますかね?仕事が早く終わって」


「大丈夫ですよ。お疲れ様です。お時間はどうされますか?」


「僕もこれから家に帰って着替えるくらいなんで本当にいつでも大丈夫です」


「では、1時半にこの間会った自動販売機の前集合でどうでしょうか」


「わかりました。了解です」


「では、またあとで」


準備を済ませ特に急がずともさくら先生の指定通りの時間に声を掛けられた自動販売機に着いた。

あたりをキョロキョロしていると左の方から軽快な足取りで歩いてくるさくら先生を発見した。

ノースリーブにロングスカートとこの間よりも涼しげでセクシーな服装で薄めのメイクをしている事は俺にもわかった。

ただでさえ綺麗な女性のイメージが強烈なさくら先生だったが今日はプラスセクシー要素が加わりドキっとした。


「お疲れ様です」


「お疲れ様です。お疲れのところありがとうございます」


「いえ、こちらこそ急に呼び出しちゃってすみません」


「呼び出したのは私ですよ。気になさらないでください」


俺は笑顔で頭を下げた。


「あ、あの…どこで話しますか?」


「はい、えっと蓮さんが嫌じゃなければなんですけど…家に来てもらえませんか?」


またさくら先生はこの間の最後の様に目を合わせずおどおどし始めた。


「え?僕は構いませんけど…逆にいいんですか?」


「大丈夫ですよ。一人暮らしなので誰もいませんからどうか気を遣わずに来てください」


そう言うとさくら先生は自分の車に案内し乗せ走らせた。

道中、この間の様な他愛もない話を俺がしても笑顔で答えてはくれるものの会話は続かず運転に集中していた。

さくら先生からすれば深刻な話の前にくだらない話なんかできないと思っている可能性を考え途中から話しかけるのをやめた。

そしてついにさくら先生の住むアパートに足を踏み入れた。


「お邪魔します」


「どうぞ」


部屋に入ると涼しい空気と薄くて淡い花の香りが出迎えてくれた。

どうやら最初からここで話す事を決めていた様でエアコンを付けっ放しにしていたらしい。

ここのアパートは2LDKで一人暮らしには充分の広さだった。

どこもかしかも綺麗で整理整頓されていた。急に今日お邪魔することが決まったので普段から綺麗にしているに違いない。

居間にある丸いテーブルに座るよう案内された。

さくら先生はアイスティーと小さなケーキまで用意してくれてテーブルにひとつずつ置くと正面に座った。


「ありがとうございます。この間といい、またご馳走になってしまってすみません」


「いえいえ、どちらも私がお話したいとお願いした事なので当然ですよ」


アイスティーを一口だけ飲み緊張で乾いていた口を潤し、本題を切り出した。


「あの、どうしても聞きたい事ってなんですか?」


「はい、葵ちゃんの事なんですけど…」


「…はい」


「どう思ってます?」


「え?」


頭の上に大きなクエスチョンマークが出た。

葵に何の秘密があるのか心の準備をしていたところへかなり大雑把な質問が来た。

日を改めて話すことには思えず眉をひそめた。


「どうって…普通にいい子だと思ってますけど」


さくら先生眼差しは真剣なまま俺を離さない。


「そうではなくて女の子…女性としてどう思っているか聞いてるんです」


「ええ?女性?」


少し呆れてさくら先生を見返した。

何を言っているんだ?

葵の事を異性として意識しているのかどうか聞いている…しかない。


「それって…まさか恋愛感情があるかって事ですか?」


「そうです」


さくら先生は先ほどとは違い真剣な顔でこちらを見つめてくる。

負けじと目をそらさないで質問の意図を考えた。


「あー…なるほど、そういう事かー」


閃いてゆっくり笑いながら何回も頷いた。

さくら先生の返事と共に謎が解けた。

もし、葵の事が好きと言えば27歳が15歳の中学生に恋をした事になる。

そんなカップルが世間ではどんな目で見られるか想像に難くない。

いや、それ以上に今の世の中は物騒でいい年した大人が小中学生の女の子に猥褻な行為を強要したなんてニュースもよくある。

さくら先生はずばりそれを心配していたに違いない。

自分の生徒がそんな目に合う可能性が少しでもあるとすれば予防に努めるのが普通かもしれない。

確かにこんな話周りに人がいればできないしましてや両親にも聞きづらい。


「大丈夫ですよ、葵とは一応兄妹としては仲良くしてますけど恋愛対象としてはお互い観てませんから」


「お互い、というのは葵ちゃんもそうだと」


「はい」


「じゃあ2人でそういう話はしたことがあるんですね?」


「ないですよ。そんなのわかるじゃないですか」


「じゃあもし仮に葵ちゃんに好きだと言われたらどうしますか」


「ないでしょ」


「蓮さんは断れるんですか?」


「年齢考えてねって言います。まだ中学生ですよ?これから高校、社会人って素敵な出会いが待ってるに決まってるじゃないですか」


「もう葵ちゃんは普通の家庭の中学生じゃないです」


「それはわかりますよ。正直、2人で犬の散歩や買い物はしますけど、本当にそれだけです。疑っているのであれば監視でもなんでもしてください。松永家に迷惑にならない程度でお願いします」


「そうさせていただきます」


何を言ってもさくら先生の表情は変わらない。

もしかしたらこの先生おかしいんじゃないか。

普通ここまでするか?


「でもこの間父さんには葵と将来結婚してくれたら嬉しいって言われましたけどね」


突然、さくら先生は立ち上がった。

え?トイレかなと思いながらも何も言わず見上げた。

一歩、テーブルの横まで歩くと突然、勢いよく俺の胸に飛び込んできた。


「ダメ!」


支えないと一緒にひっくり返ってしまいそうな勢いに思わず抱きしめたような形になる。

細い腕は上半身に巻きついてくる。


「は!?ちょっと、え?」


「ダメだよ…そんなの…」


「ちょっと!いきなりどうしたんですか」


さくら先生の顔を見ようとしても胸元に顔を擦り付けるようにして離れない。


「まだわからないの?好きでもない人にこんな事しません!」


「え…」


想像よりも小さかった両肩を掴んだ。


「好きって…俺のこと?」


さくら先生は胸の中で頷いた。


「ちょっと待って!話そう」


抱きつくさくら先生を半ば力付くで離した。

綺麗な瞳から涙が溢れそうだった。


「好きなの。あなたのこと…」


「でもなんで?一回お茶しただけで?」


「初めて見た時から頭からあなたの事が離れないの。過去の話もすごいなって思ってて。それでこの前初めて2人で逢えて…その時からドキドキが止まらないから…やっぱり好きなんだなって…」


「でも…そんなすぐに…お互いのことだってまだ全然知らないのに」


「…信じてくれないんだね」


さくら先生はもう一度、背中に手を回した。

でも今度は顔が胸元には行かなかった。


「やめ、、ん!」


さくら先生の手は俺の頭にまで上がってきていた。

唇が激しくぶつかり合った。

2人の呼吸と心臓の音が大きくなっていく。


「何してんの…」


「嫌なら突き飛ばせば?」


さくら先生は見上げてお手の心臓付近に手を当てた。


「こんなにドキドキしてる」


「そりゃ…するよ」


「もし付き合ってくれるならここで一緒に暮らそう。結婚だっていつでもできます」


目を閉じて考えた。


「ごめん」


「え?」


「付き合えない…」


さくら先生はようやく俺から離れた。


「どーして…?」


涙がまた溜まっていく。


「俺には結婚なんてする資格はない」


さくら先生の頬に涙が伝った。

そして顔を歪ませ、声をあげながら胸にまた飛び込んできた。


「どーして!…どーして…」


よほどの自信があったんだろうか。

またさくら先生の両肩を掴んだ。

そのまま抱きしめることも突き放すこともできずに。

せめて、さくら先生が泣き止むまでこのまま…。


「私じゃダメ?」


さくら先生は泣いていて見てないが俺は小さく首を横に振った。

そうじゃない…と。

これは自分自身の問題なんだ。


「話しただろ…」


「…うん。それでも私は」

「ダメだ!」


至近距離でお互い真剣な顔で見つめ合う。


「俺だっていつどうなるかわからないんだ。もしかしたら…俺はこの手で人を…殺してるかもしれないんだぞ」


「それでも私はあなたを守る…」


黙って首を振った。

噂通りの美人がどうして俺なんかを…。


「あなたにはもっと素敵なふさわしい人がいますよ。大丈夫、あなたは必ず幸せになれます」


だってこんなに綺麗なんだから。

また鼻をすすりながら泣きそうになるが涙が流れる前に今度は俺が抱きしめてしまった。


「ごめんね…でも、ありがとう」


涙が止まるまで。

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