表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クレーター  作者: 朧塚
15/26

#005 宿命の決戦 4

「あったな、地下シェルター」


 ベレトは、錠の鎖を切り付けて壊す。

 扉は開いた。

 そこは、冷たい死の臭いがしていた。

 二人が地下シェルターと呼んでいたのは、トゥルーセの屋敷にもあった処刑場の事だった。何か問題がある人間を処刑する為の『井戸』へと通じる場所がある。此処はカジノ店だ。不正客や大きな問題を起こした客などは、地下へと処理されているだろうと、二人は踏んでいたのだった。


「『井戸』の中はどうだった?」

「トゥルーセのトコに侵入する時は、ミュータントや腐乱死体をいくつか見た。それだけだ。何か問題のあるものは、俺のマスター・ウィザードか、お前のフレイム・ウルフが遮断すればいい」

 暗い洞窟へと続いていた。


「何かヤバイぞ、何かいる」

 パラディアは、フレイム・ウルフを先頭に立たせて走らせる。

 炎の狼は、即座に、二人のいる場所に戻ってきた。

 二人は、息を飲む。

 それは、巨大な口だった。

 牙がびっしりと生えている。

 眼球は見当たらない。

 臭いや音で反応しているのだろうか。

 唸り声だけを発していた。

 そして、その音は確かに、一人の男の名前だった。


 ……ベリーア……。

「なんだ?」

 直感的に、二人は理解する。

 道を空けるように、この新たに現れた怪物は告げているのだ。

 二人は洞窟の壁に張り付く。

 その怪物は、二人の横を通り抜ける。

 巨大な装甲に覆われたイモムシの怪物だった。


 二人には興味を示さずに、何者かを追っていた。確かに、ベリーアと述べていた。怪物の正体は分からない。だが、その怪物は、この巨大賭博場のオーナーに何か遺恨がある事だけは分かった。


「どうする?」

 パラディアが訊ねる。

「先に進んで、とにかく身を潜めよう」



 ベリーアは、怒り散らしながら狼藉者二人を追っていた。

 彼は人間離れした身体能力で跳躍して、一階のホールに戻る。


 ベリーアは絶句する。

 彼の楽園は炎上していた。

 空からやってきた奇形の怪物が口から吐息を吐き、この建造物を炎の海にしていた。ホール内は火の海になっていた。


 空飛ぶ怪物が翼を広げ、この場所を火葬場にしようとているのに、パチスロの催眠状態に掛かっている客の一部は、台の出す轟音の音と蛍光色の光の点滅によって、客達はパチスロを行い続け、まるで事態を把握出来ず、何事も無かったかのように台を睨み続けていた。くるんくるん、と、スロットの回転が店中で続いている。


 炎が燃え移って、のたうち回っている男がいた、だが、そんな事態を気に掛ける事もなく、一部の者達は未だに台で打ち、他のものが何も見えず、スリーセブンが出るのを待っていた。更に、空の災厄が口を広げ、二撃目の火炎放射を放つ。


 

 ベリーアは一人、外に出た。


 彼の栄華は、空飛ぶ災厄によって焼き尽くされていく。

 彼のボディーガード達も炭化していく。

 ベリーアは泣き、そして笑っていた。

 そして、同時に、自分の命がまだある事に気付く。空飛ぶ怪物は、彼を狙っていない。ベリーアはひとまず、この場から逃げようと走る。


「ああ、ひひひひ、あああ、ひひひひ。金庫、金庫も燃えちまったよなあ。沢山、沢山、金を金を貯めていたのに」

 彼は泣きながら笑っていた。

 空飛ぶ怪物は燃え盛る炎を眺めながら、辺りを巡回していた。何かを、あるいは誰かを探しているみたいだった。


 突然。

 炎の中から、新たなる怪物が現れる。

 それは、巨大な装甲を纏ったイモムシだった。

 イモムシは、ベリーアの方を向いていた。


「おい、なんだよ……?」

 彼は地面に尻を付ける。

「一体、何なんだよ……?」

 イモムシは、彼へと向かってくる。

 ベリーアは涙と鼻水で、顔がぐしゃぐしゃになる。



 ベリーアの胴体を食い千切った巨大イモムシは、しばらくして、役目を終えたとばかりに、元来た炎の中へと戻ろうとした。


 それを見て、奇形のドラゴンは激情に駆られ、イモムシの怪物を襲撃する。

 二対の怪物は、しばらく互いに尻尾や鉤爪などで激突していた。ドラゴンは炎を吐く、装甲を纏ったイモムシは耐熱の皮膚を持っているのか、まるで炎の攻撃を受け付けなかった。


 だが、最終的に勝利したのは、ドラゴンの方だった。奇形の竜は、イモムシの身体をバラバラにした。だが、イモムシは死の間際に、全身から毒の腐食ガスを放つ。

 それを浴びて、奇形のドラゴンは燃える炎の中へと落下していく。そのまま、ドラゴンは沈静化する……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ