好奇心は隠せず
女の子は俺を柵越しに覗き込んでいる。
「あ、あのう....」
「君.... ここはどこ...かな?」
女の子はあたりを見回して声を潜めて 囁く。
「ここは村の古小屋だよ。 ここに悪い人は連れてこられて、いれられちゃうの。 あなたは 街から来た悪い人なんでしょ?」
「いやいや!俺は 街から来たわけでもねえし、悪い奴でもない!」
「そ、そうなの....」
俺の張り上げた声にびくついて、少し 顔を下げる。
「悪い.... ちょっと興奮しちまって....驚かせちゃったな」
今度は女の子は目を丸くして こちらを見ている。
「なんで 謝るの?」
「そりゃあ、男が女の子を脅すようなことはあんま良くないだろ。 俺の同級生でも女子を いじめる奴はいるけど、いつも胸糞悪かったんだよ。 父さんも....女の子は丁重に扱えって言ってたな...」
するとこの黒髪の少女はさらに顔を近づける。
「女をそんな風に扱うなんて、やっぱりあなたは変ね。それはあなたが街の人間だからなのかしら...?」
「街の人間だから...? 何 言ってるの?」
少女の目は俺の真意を見ようと必死だ。
「さらに聞いたことあるわ....街では女の子も学校に行くそうね....」
彼女は目を細める。
「私、一度で良いから 学校に行ってみたいの! お話で聞いたの....学校はすっごく楽しいところなんだって!」
彼女の目はキラキラしながらどこか悲しげだ。
「この村には学校が無いのか?!」
「あるけど....女の子は学校には行かないの.... 。 だけどね! お父さんが街の事を色々話してくれるの! お父さんは月に一度 街に村の野菜を届けに行くのだけど、その時にたっくさんお土産話を持ってきてくれるのよ!!」
「君は...街に行ったことないの?」
「メルでいいわよ!」
「え?」
「私の名前はメル! 生まれて15年、村を出たことはないわ..... 街に一度でいいから行ってみたいて思ってるの!!」
メルは無邪気に語る。
「ねえねえ! あなたが知ってる 街のことを教えて!!例えば...」
「しぶさき....」
「え?」
「俺は渋崎!!シブとでも呼んでくれぃ」
少女は身を乗り出す。
「シブ! 街のこと!教えて!」
「だから...俺は街から来たんじゃないんだど....」
少女の必死さに答えないと後味悪そうだ。