安中の戦略的撤退
青い小鳥は歌いながら俺たちを先導し始めた。
「あースバルー、私のために泣かないでー♪」
ひどい歌詞だが、良い歌声だ…..
「あの…..小鳥さん? さっき言ってた報酬のことなんだけど….」
小鳥はちらっとこちらを見る。
「報酬はね…. 後で頂くよ。あなたたちとはまた会う気がするから、その時に僕のお願いを聞いてもらうよ!」
そう言うと小鳥は尚も先導する。
「また会うって…..そんなにこの世界は狭いのか?」
すると、今度は小鳥はこちらに飛んできた!
「ハハ! 世界は狭い!確かにそう言えるかもしれない!でもね、世界が狭いというよりは、僕らが狭く感じるだけなのかもね!生き物や人間っていうのは縁でつながってるものさ! 道中、もう二度と会わない人もいれば、不思議にも何度も会う人もいる….! それは偶然ではなくて、縁というやつなのさ! だからね僕は君たちともう一度会える気がするんだよ!」
小鳥は愉快そうに、俺たちをさらに誘導する。
* * *
しばらく行くと川のせせらぎが聞こえてきた。
「そろそろかな…。 僕は誘導できるのはここまで!ここから一本道で、ある村につけるはずさ!少しかかるけどね!そこからさらに街に行くにはさらに時間がかかるけども、村まで行けば、まあ、ひとまず森は抜けれるから!」
「そっか!ありがと!小鳥さん!!めっちゃ助かったよ!!」
安中が笑顔で言った。
「ああ!ありがとな!」
「ハハ! お安い御用さ! 報酬の件、忘れるなよー!」
そう言うとまたしても小鳥は飛んで行った。
「じゃあ行くとしますかー!スルメちゃん!川行けるよね?」
安中がスルメに変なことを言っている。
「はい!推定4、5メートルっすかね、飛びますわ」
え….?
するとするめイカちゃんは助走を取り始めた。
「いや、ちょっと待て!危ない危ない!」
「ビビるなって!渋崎―!」
「ちょっとタイムーーーーーー!」
しかし、するめイカちゃんは難なく飛び越える!
「イかー!!!!!」
そんな叫び方があんのかいいいいいいいいい!
そして、無事着地し、その反動で尚も奴は走り続ける。
「なんか気分がノッテきやした!!道なりっすよね!走りますね!」
「おおー!走っちゃえー!」
「イかー!!!」
いきなりのスピード運転に酔いそうになる….!
「イかー!!!」
その時…..
ずっこ!
鈍い音がする。。。。。
「足….くじきやした。。。。」
「だ、大丈夫!? するめいかちゃん!?」
「ちょっとはしゃぎすぎだったんだよお前…..!」
するめイカちゃんは足を本当に痛めたらしく、足首をひねったりしている。
「じゃあちょっと休むか….」
「それもそうね」
俺たちがちょうど交互に馬から降りた時だった。
「やはり人間の気配がするぞ!!!!!!」
「こっちのほうで間違いない!!!次こそとっ捕まえてやる!!」
突然、いくつかの音が近づいてくる。
「え!?なんか来てない!? ってか、なんかやばくないか?安中?」
「た、確かにね….!! これは…. ある村とかでは、よそ者に対して 厳しいとか聞いたことあるなあ。ある時はひどい仕打ちをされるらしい…..」
ひどい仕打ちってなんだ。。。。。? パニックになる暇もないほど早く近づいてくる音達。
「なんとかできないのか!?安中!??」
「えっとね….. こ、これかな!!」
そういうと、こいつはまた叫ぶ。
「秘術!その3!!透明化!!」
いや、こいつやっぱ何でもできるな…..っておい!?
みるみる安中のみが見えなくなった。
「ごめん!これ、一人しかできないの!!後で、たぶん助けに行くから!!」
そう言って、安中は音もなく消えていった。俺とするめイカちゃんを置いて。。。。
「おい!!いたぞ!!馬と人間の男が一人!!」
もう絶対、安中とは旅をしたくない!!
「あ、自分、馬っすけど両生類っす」