一人の友人
俺たちは青い馬に二人で乗りながら、森をさまよっていた。
「おいー。これからどれくらいだ?」
「もー、せっかちな男ねー。そのうち着くわよ。それよか、渋崎君!さっきから黙ってて面白くない!もっとあなたのことを教えてよ」
安中はそう言いながら顔だけを後ろに向けて、俺のほうを見てきた。
「俺のことってどういうことだよ。お前はいろいろ調べたんだろう?だったらそんなに話すことなんてないだろう」
俺は自分のことを話すのが好きというわけではなかった。家族のことだって、友達のことだって面白いことは一つもない。
「いや、一人聞きたい人がいるのよ!あのあなたが唯一友達だと言えていたあの子の話が。名前確か….ま、ま、」
「真だ」
「そうそう!真君!どういう子だったの?」
「あいつは良い奴だったよ。アイツがいなけりゃ、俺は自分の意志なんか持たなかった。母さんから塾と勉強しかやらしてもらわなかったから、遊ぶってことを知らなかった」
「へー!!」
安中は珍しく、いたずらっぽくない、輝いた笑顔を向けた。
「でもそれでいてアイツは変に大人っぽかったんだよなあ。….てかよ、今気づいたんだが、俺たち、同じ道を歩いてないか?」
「そうかしら?そんな感じしなかったけど…あ!ちなみにここは迷いの森って言って、普通に歩いてたら、簡単には出れないらしいわ」
「それ先言えよ!!てか、大丈夫なのかよ!お前、ちゃんとルートわかってんのか?」
「え?ルート?そんなのどうとでもなるわよ」
自信満々にそう言う安中が頼もしいような、いや、とっても不安な気持ちだ。
「ってことは、何回かこの森通ったことあるんだよな?」
「え…..アハハ! ないわよ!」
「ないのかよ!」
やっぱりこいつと旅をするのは不安だ…..
「なんか手がかりを探さないとやばいぞ」
「えーなんとかなるんじゃないのー」
テキトウなこいつに任せるわけにはいかない。たぶん、もし真がここにいたら、率先して何か手がかりになるものを探すだろう…..
「スルメいかちゃんは何かわかることないか?」
「うちはよくわからないっすーウィー」
こいつどうしてこんなしゃべり方なんだ….
しばらく考えていると何かさっきから視線を感じるような気がしていた。
「なんか誰かに見られてる気がしないか?」
「え?そんな、誰も居る感じじゃないわよ」
「いや、確かに見られてる気が….あ!」
よく見ると、木の上でささやいている小鳥たちがいつも同じような動きをしながら俺たちについてきている。
「なあ、安中、お前の魔法で動物と話すことってできないのか?」
「できるわよー」
なんでもできるなこいつ!!
「あ!なるほどね!!動物に話を聞いて道を知ろうってわけね!!」
「ああ。あそこにいる鳥に話しかけてくれないか?」
俺はそういうと右上にいる1匹の青い鳥を指した。
「しょうがないわねー!じゃ!秘術!その3!スピーチ!」
そういうと安中は口笛を吹いた
「ヒューーーーー」
「ねえ!小鳥さん!どっちに行けばこの森を抜けられるのかしら!」
安中が小鳥に声をかける。
「ハハ!遂に人間が声をかけたよ!これは不思議だねえ!久しぶりだねえ!」
確かに小鳥は人の言葉を話している。
「ねえ!小鳥さん!教えてくれない!?」
「しょうがないねえ!暇だから僕が導いてあげるよ!でも、報酬はしっかりと受け取るからね」