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渋崎康太という人

ただ暗い道を手を握りながら歩いていた。なにも見えないが、安中は道がわかるのか、何の迷いもなく、まっすぐ進んでいく。 

しばらく歩くと、だんだんと森林にいるような香りがしてきた。


「ここだ。」


ふと安中は止まった。そして、安中は暗闇の中から、ドアノブを見つけ出し、ドアを開いた。そして、急に光が差し込んできた。光に慣れていない目は、一瞬めんくらったがそこに開けていたのは、映画の世界にでも入り込んだような光景だった。


目の前に大きな池があり、その水は澄んでいた。何かの神殿の中にいるのだろうか、大理石のような、よくわからない石の床と壁がある。もとは白い石なのだろうが、コケに囲まれているからか、床も壁も緑色だ。 

中庭なのか、天井は無く、太陽が差し込んでいた。


「なんだ?ここは?そろそろ説明してくれよ安中」

ついに安中は手を離した。


「そうだね。話してあげるよ。渋崎康太君」


安中はいたずらっぽい笑顔をこちらに向けた。

安中は教室じゃあ、いつも浮いていた。何か中二病的な発言をしたと思ったら、変にまじめくさったことも言う。そんなやつだ。


「さっき言ったように、ここは異世界。そして、私は魔法使い。あなたは、この世界を救いに来た。そんな感じかな」


「いや!説明になってねーよ!その意味が分からないって言ってるんだ!」


「えー。なんでわからないのー。さっき見せたでしょ?私の魔法。」


こいつ本当に話にならねえっと思っていたとき、大きな池の真ん中に泡が出始めた。

と思ったら、


「てこずってるのう。安中」


長い白いひげを垂らしたおじいさんが出てきた。


「老師様!!聞いてくださいよ!こいつ、ホントにわからづ屋なんですよ!」


「それはこっちのセリフじゃ!」


それを聞いていた老師様は笑い出した。


「ホッホッホ。威勢の良いのう。見たところ、起きている状況が呑み込めないといったところじゃな」


「はい….まあ、普通そうっすよね」


「まあ、気持ちもわかるがのう。でも変に硬い頭はそっちの世界の一つの悪い部分でもあるのう。」


「どういうことっすか?」


「何でも素直に信じることが良いとは言わない。でもな、自分が見ているものが当たり前、常識、そう考えることが実に傲慢とも言えるし、無知とも言える。君たちは、君たちが思っているほど物事を知らない。知っている気になっちゃいけないのじゃ。そんなわしも世界のほんの少しのことしか知らない。」


確かにそうかもしれないと思った。大人たちは何でも知っている気になっているが、重要なことを答えてくれなかったりする。そんな大人になりたくないと思っていたものだ。

それに対して、このおじいさんは自分の無知を認めている。


「まあ、それはあるかもしれないですね。確かにこいつは、魔法を使って見せた。まだ、全部を信じられるわけじゃないですけど、話を聞きます。で、俺が世界を救うっていうのはどうゆうことっすか?」


「安中ちゃん、それちゃんと話してないの?」


「ああ…ちょっとめんどくさくって!」


適当だなこいつ!


「じゃあ、話をしよう。渋崎康太君。わしには予知の力がある。なに、細かい未来が見えるわけではないし、予知夢として不定期に見ることがあるのじゃが、そう、ちょうど半月前に、「わしはある人物をあっちの世界から連れてくることで、この世界が救われる」と見えたのじゃ」


「私たち、魔法使いだけは、特殊な能力で、あっちの世界とこっちの世界をつなげることができる。だから、こっちの世界の多くの人物も二つも世界が存在することは知らない。ってわけで、私はあっちの世界に行って、転校生として編入して、その人物を探してたってわけ」


確かに安中が転校生としてやってきたのは半年前だった。


「でも、何で俺なんだ….?」


「ちゃんと調べたんだよ、君のこと」


そう言うと、安中は指を鳴らし、何か紙みたいなものを取り出した。


「渋崎康太。17歳。両親は幼いころに離婚し、母親と二人暮らし。しかし、教育ママの母親とはうまくいかず、中学三年くらいから、よく反抗するようになる。その中でも成績は常にトップ。部活には所属せず、友達はいるものの、心を許せるような仲の良い友達はいない。唯一、友達と呼べる人がいれば….」


「ちょっと待て!なんだそれ!なんでいろいろ知ってるんだ!?」


「まあ、魔法でいろいろと!?」


「魔法怖いな!!!」


またしてもいたずらっぽい笑顔をみせる安中は実にうまく人をイラッとさせてくれる。


「まあまあ、その辺でいいんじゃないの、安中ちゃん。 渋崎君、なんで君が選ばれたかって言ったね。それを教えてあげたい気持ちもあるけれどね、あえて言わないでおくよ。君は君自身で、何が君にとっての強みであり、何が君の使命であるのかを探し出すんだ」


「俺自身で…ですか….」


俺は逃れられない難題をもう一度突き付けられたことに気が付いた。


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