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エピローグ

「それでは、行ってきます。アリス母さん」

「キャサリン様によろしくね」

「分かっています。さあ、行きましょう」

 そういった後、私の養女アイラは、実母のキャサリン皇女殿下が修道尼として入られている修道院へ、妹と馬車に乗って向かった。

 これから10日程、娘2人とは、私とエドワードは別れて暮らすことになる。


 あの結婚式から16年余りが過ぎていた。


 その間に、私とエドワード殿下との間には、8人の子が産まれた。

 だが、その内3人は夭折してしまい、5人しか残っていない。


 エドワードとキャサリン様との間の娘3人の内1人も亡くなってしまった。


 16年余りの歳月が流れる間に、キャサリン様も落ち着かれた。

 修道院での生活がいい方向に作用したのかもしれない。

 最初の内は、月に1日、昼間に少し実の娘のアイラ達と会われるだけだったのだが、少しずつ、もう少し長い間、娘と過ごしたいと言われるようになった。

 だが、皮肉なことにそれまでに娘のアイラ達の方が、私により懐いてしまい、アリス母さんといたいというようになってしまった。

 何回か試行錯誤した末、今では1月の内20日をアイラ達は、私とエドワードの下で過ごし、残りをキャサリン様の下で過ごすようになっている。

 だが、アイラにとって、それもこれが最後のキャサリン様の下で過ごす日々になる。


「本当に良かったのかな。アイラを従弟と結婚させて」

「4歳程年下になるけど、いいと思うの。キャサリン様も別に構わないと言ってくれたし」

 私と夫エドワードは、アイラ達を見送りながら会話した。

 その傍には、私達の実子4人もいる。


 先日、アイラは、エドワードの弟リチャード侯爵と私のあの恋敵フローレンスの間の息子フレデリックとの結婚が正式に決まった。

 フローレンスは、夫エドワードへの横恋慕を断念したすぐ後に、リチャードにアプローチを掛け、あっさり落としてしまった。

 マイトラント伯爵家の娘なので家格的にも問題が無く、リチャードの第一夫人にフローレンスは収まっている。

 結婚後、夫を武芸で鍛え上げようとして、それに悲鳴を上げたリチャードが何回か家出をしたのはご愛嬌と考えるべきなのだろうか。

 最終的に夫に武芸の才能は無いと諦めるのだが、その代りにフレデリックをフローレンスは鍛え上げた。

 そして、フレデリックが15歳になるのを機に、アイラと結婚が決まった。


 本当はトマス皇太子とアイラを結婚させることも、かなり考えたのだが、やはり真実では父方からも母方からも従兄弟関係になることから、止めることにしたのだ。

 そして、トマス皇太子と結婚するのは。


「アイラ姉さん達は、もう出発したの」

「あなたが愚図愚図したからよ」

 その場にいなかった私達の娘シャーロットが慌てて出てきて言ったのを、私はたしなめた。

「本当に宮中で、皇后が務まるのかしら。将来が心配だわ」

「大丈夫。マーガレット皇后陛下でも務まるのだから」

 私の言葉にシャーロットは朗らかに答える。

 シャーロットが、トマス皇太子と結婚することになっていた。


 実の娘を贔屓していると言われそうだが、アイラも宮中生活を嫌がった。

 どうも実母のキャサリン様に宮中生活の気づまりさを吹き込まれたらしい。

 トマス皇太子は22歳、シャーロットは15歳だ。

 仲の良い夫婦になってほしいものだ、私は心から願った。


 私達の長男チャールズが口を挟んだ。

「お母さん、シャーロット姉さんが何かしたら助けるから安心して」

「本当によろしくね」

 私は少しおどけて答えた。

 それを見たエドワードや他の子達も笑顔を見せた。


 その光景を見て、私はあらためて思った。

 本当に幸せだ。

 この幸せがいつまでも私の生きている間、続きますように。

 私は神に祈った。 

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