第48章
私とエドワード殿下の結婚式は、私がお世話になった修道院長様が執り行って下さることになった。
私は所詮はエドワード殿下の第二夫人だ。
本当なら、私達の結婚式は、教会の司祭様が行って下さるのが普通なのだが、院長様が名乗りを上げて下さった。
次期枢機卿と呼び声が高い院長様が、私達の結婚式を執り行って下さることに、私とエドワード殿下は心から頭を下げてお礼を言った。
ちなみに、私達の結婚式に先立って、キャサリン皇女殿下は、表向きは3人の子を産み、体調を崩しがちになったことから、暫く1人で療養することになったということで、修道院付の病院に入られた。
しばらくしたら、キャサリン皇女殿下は修道尼にそのままなられる予定だ。
キャサリン皇女殿下が、いきなり修道尼になられたら、周囲に巻き起こす波紋が大きすぎることから、そういったことになった。
そのために、私達の新居は、結果的にエドワード殿下とキャサリン皇女殿下が住まれていた住居を引き継ぐことになった。
まだ幼いとはいえ、お二人の間の3人娘(最年長のアイラ様でさえ満でいえば3歳になられていない)が慣れ親しんでいる家から引っ越すのはどうか、と私が言いだし、エドワード殿下も君がそういうのならば、と同意してくれた。
私達の結婚式に参列する私の身内は誰もいない。
私の両親も兄弟も皆、亡くなっている。
私の叔父叔母や従兄弟にさえ、生きている身内は私にはいないのだ。
そのために、私達の結婚式の際の私の介添人は、孤児院で私と一緒に育った先輩の修道尼の1人が務めることになった。
エドワード殿下も気を遣い、私と自分の結婚式の参列者をどうしようかと悩まれたらしいが、メアリ大公妃殿下が動いて下さった。
エドワード殿下の第二夫人とはいえ、キャサリン皇女殿下が修道院に入られては、事実上、第一夫人を私が務めることになる。
そう言った場合を考えると、身内に顔見せをきちんとすべきだとメアリ大公妃が言われたことから、エドワード殿下の御兄弟全員が私達の結婚式に参列されることになった。
でも、チャールズ大公殿下はいろいろ口実を言われて、私達の結婚式には欠席だ。
やはり、アン先代大公妃殿下の一件の心の整理がどうにもつかないらしい。
仕方ない、時間を掛けて義父になられるチャールズ大公殿下の心を溶かしていくしかないだろう。
そのために、結婚式の際のエドワード殿下の介添え人は弟のリチャード殿下が務められることになった。
「アリス、幸せになるのよ」
「ありがとうございます。マーガレット皇后陛下、キャロライン皇貴妃殿下」
本当にいいのですか?と私は内心で疑問を覚えなくもなかったが、エドワード殿下と私の結婚式には、マーガレット皇后陛下とキャロライン皇貴妃殿下が揃って参列されている。
確かにエドワード殿下は、お2人の弟だが、皇后陛下と皇貴妃殿下が揃って第二夫人の結婚式に参列するなんて、前代未聞の気がする。
「これからはアリスを妹として可愛がってあげるから」
「あなたが言うと別の意味に聞こえるわね」
「酷いです。マーガレット様」
マーガレット皇后陛下とキャロライン皇貴妃殿下のお二人が談笑されるのを見ると、この世界はいい方向に回っているのだと私は思いたい。
「こんにちわ」
私はエドワード殿下との結婚式を終えた後、新居に移動した。
私の目の前には、これから面倒を見る3人の娘がいる。
その3人に対して、私は挨拶をした。
「この人も、君たちのお母さんだよ」
エドワード殿下のその言葉に、最年長のアイラ様が首を傾げられた。
私は思わず、アイラを抱きしめた。
アイラは私の抱擁を嫌がらず、抱き返そうとしてくれた。
この娘達の母としても頑張ろうと私は誓った。