幕間ーエドワード2
予め、姉のキャロラインから聞いてはいたけれど、本当に彼女が私の目の前に来ると、彼女が自分と姉の取次役になったことを実感する。
彼女は喜びの余り笑みを浮かべている。
自分もつられて笑みを浮かべてしまった。
彼女、アリス・ボークラールが美女かというと、そんなことはない。
どう見ても、自分の姉のキャロラインの方が明らかに美女だ。
彼女は、平均より上、と言ったところか。
だが、それ以上に魅力的なのが、これまでに辛酸を舐めた人生を歩んできたにも関わらず、そんな翳を少しも他人には感じさせない明るさだ。
3歳にして父を失い、全財産を失った。
更に父は帝国に対して反乱を起こした中で、主導的役割を果たしたという汚名を被った。
4歳で母も失い、頼るべき親戚もおらず、教会付きの孤児院で成長した。
彼女が歩んできた人生の一部を要約するとそう言うことになる。
だが、彼女はそういった人生を歩んできたことを微塵も感じさせない明るさを纏っている。
本来なら父の仇の一族の一員として敵視されても仕方のない自分や姉に対しても、きちんとした前向きの態度を執っている。
正直に言って、自分の内心では、彼女のようになれたら、と少し思う。
彼女、アリスにはこの間、嘘をついてしまった。
実母のアン母さんに何となく隔意を私が覚えるのは、私が産まれてすぐにアン母さんから引き離されたこともあるが、それ以外に大きな理由がある。
自分は、実母のアン母さんが「帝都大乱」の際に焼き殺されたことに、素直に涙を流せないのだ。
何故なら、実母のアン母さんは、私を不倫の子として産んだからだ。
よく私の育ての母であるメアリ母さんが、私の実父チャールズと実母アンの不倫を穏便に表向きは誰も傷つかないように処理できたものだ。
本来なら、大公家全体に傷がつくほどメアリ母さんが怒っても仕方ない。
夫と自分の妹が不倫をし、しかも妊娠したのだ。
自分が産まれるまで、メアリ母さんは流産を1回、早産を1回し、キャロライン姉さんがいることから、夫のチャールズに問題は無い以上、夫に早く第二夫人を娶らせるなり、愛人や召人を勧めるなりすべきだと圧力を周囲から受けていたらしい。
そんな時に、自分の妹が夫を誘惑し、しかも妊娠したのだ。
よく育ての母、メアリ母さんが耐え忍んだものだと思う。
そして、アン母さんは私の名義上の父ヘンリーと結婚したら、チャールズ父さんとの関係を忘れ去り、仲睦まじい夫婦になってしまった。
アン母さんのその心理が、私にはどうしても理解できない。
チャールズ父さんとは、仮にも自分と言う子どもができた仲ではないか。
夫のヘンリーが死んだことから心身を病んでしまい、自邸から動けないところに、帝室軍の兵士の失火により発生した火災により、アン母さんは焼け死んだそうだが、私はどうにもアン母さんの死に心からの涙は流せない。
そんな自分の内心の想いを知らずに、彼女、アリスは私に笑みを向けている。
「これからどうかよろしくお願いします」
彼女は頭を下げながら言った。
まるで、これから自分と彼女が結婚するみたいだ。
「よろしく頼むよ。アリス」
自分も思わず答えた。
これでは、本当に婚約を交わした男女の会話ではないか。
アリスは更に笑みを大きくして言った。
「まるで、婚約が調ったみたいですね」
言った後で、我に返ったのだろう、アリスは、慌てふためいた。
「すみません、すみません」
「いや、いいよ。私もそう思ってしまった」
私は笑いながら言った。
本当に彼女と結婚できればいいが。
だが、そう簡単にはいかない。
姉のキャロラインは彼女との結婚に賛成してくれるかもしれないが、養父母は賛成してくれるだろうか。
私は内心で少し考え込んだ。
旧作と本来のヒロインのアンの描写が違うと思われそうですが。
これは旧作の主人公のメアリらが、エドワードに正確な情報を伝えていないせいです。
ここの描写は、あくまでもエドワードの主観に基づくものです。
正確な情報を伝えることは大公家の大醜聞になるので、メアリやチャールズは隠せることは隠してエドワードに伝えています。
キャロライン等、他の登場人物も正確な情報を知らないことが多いです。
活動報告で、そのことは明日にでも詳しく説明します。




