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第26章

 兄への手紙を書き終えた後、私は寝床で横になって、今後のことを考えた。

 私とエドワード殿下は結婚まで漕ぎつけられるだろうか。


 エドワード殿下と単純に結ばれるだけなら、私が彼の愛人なり、召人になればいい。

 だが、幾らこの世界で生まれ育ったとはいえ、まだ15歳の私にはそこまで割り切れない。

 せめて、エドワード殿下の第二夫人に私はなりたい。


 この世界の帝国の国教、真教は、私の前世のイスラム教と同様、一夫多妻婚を認めている。

 もっとも私の前世のイスラム教は4人の妻を認めるが、この世界の真教は2人の妻までだ。

 だから、原作の中でも本来のヒロインの姉、メアリが第二夫人に落とされるところがあった。


 本来からすれば、誰かの第一夫人を目指すべきだろう、と言われるかもしれない。

 だが、私の立場がそれを困難にしている。


 この世界の第一夫人は、実家の力等を背景に夫を支えたり、跡取りの子を産んだりするのが、その地位の大前提だ。

 子どもも産んでいない、実家の力等もない女性を第一夫人を選ぶ男は誰一人としていない。

 原作の本来のヒロイン、アンが原作でヘンリーの大公妃になれたのも、まめまめしくヘンリーに尽くしたのもあるが、大公家の跡取りエドワード殿下のご生母であり、本来の血筋も皇帝の孫娘と言う高貴な生まれであったというところがある。

 一方、アンの姉のメアリは子どもを産んでいないのを最大の理由に、第二夫人に落とされてしまった。


 私は、「帝都大乱」の実働部隊の事実上の長、ボークラール子爵本宗家の娘。

 私の財産等、一切ないと言っても過言ではない状況に「帝都大乱」によって陥ってもいる。

 私と結婚したら、金も無いし、私の実家に力が無いどころか、帝国に反乱を起こした一族の娘と結婚したということになる以上、大抵の男が、私を第一夫人にしてくれるわけがない。

 だから、第一夫人などに、私がなれるわけがないのだ。


 それに私がなれるとしても、自分と同格の相手と結婚する以上、男爵夫人が関の山だ。

 結婚後は帝都と地方を行ったり来たりする人生になる、そんな人生は絶対に私は嫌だ。

 私は宮中の甘い生活を味わってしまった。

 このまま、宮中と関わりが絶えない上流貴族の一員としての生活を私はしていきたい。


 そして、私はエドワード殿下と結ばれるなら、召人は絶対に嫌だ。

 エドワード殿下と関係がしっくりしないキャサリン皇女殿下とも私は同居して、お二人に侍女として私は仕えることになる。

 幾らこの世界では珍しくない事とはいえ、前世の倫理観が完全に抜け切っていない私には、妻妾同居どころか、エドワード殿下の正妻キャサリン皇女殿下にも侍女として私が仕える等、背筋が思いきり寒くなる嫌な事態だ。


 では、エドワード殿下の通いの愛人に私がなるというのはどうか?

 それも私は避けたいことだ。

 その場合、キャロライン皇貴妃殿下のお側を私は離れねばならなくなるだろう。

 幾らキャロライン皇貴妃殿下がエドワード殿下を弟として可愛がっているとはいえ、自分の宮中女官である私が弟の愛人になったら、公私のけじめをきちんとつけるあのお人柄から言っても、私は宮中女官からの自発的退職を命ぜられてしまうだろう。

 エドワード殿下の通いの愛人では、宮中と縁のない生活になってしまう。


 となると、私はエドワード殿下の第二夫人を目指すしかない。

 我がまま極まりない望みだが、エドワード殿下の私へのあの態度からすると、私を愛人では無く第二夫人に迎えたいとエドワード殿下は考えていると私はそう思いたい。

 キャロライン皇貴妃殿下等、大公家の方々に、エドワード殿下が私を第二夫人に迎えたいと言った時に賛成してもらえるように頑張ろう、私はそう決意した。

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