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幕間ーエドワード

女主人公では無く、男主人公側の視点の話です。


 園遊会の翌日、私が参議として仕事をしていると、キャロライン皇貴妃殿下から手紙が届いた。

 私が園遊会で素晴らしい弓の腕と笛の音を披露したことに免じて、自分の所を訪れることを許すとのことだった。

「姉さん」は意地っ張りだから、と私は内心で笑った。

 手紙の末尾に、追記があった。

 アリス・ボークラールとのことが、本気なら、私は反対しません、とのことだった。

「姉さん」のことだから、わざわざ、そう書くということは、自分が彼女と本気で付き合うのなら、賛成してくれるということだろう。


 キャロライン皇貴妃殿下が、自分の異母姉だということを知ったのは、私が10歳くらいの時だった。

 1歳下の弟のリチャードにせがまれ、かくれんぼをしていたのだ。

 イタズラ心を起こして、わざと遠くに隠れようとこっそり動いている内に、気づかれずに養父母が話をしている場に近づいていた。

 養父母は驚くような会話をしていた。


「あなた、あの侍女を第二夫人にする気はないの」

「ないよ、あくまでも召人止まりにする気だ」

「子爵家の次女よ、実家としては、第二夫人にしてほしいと願っているわ」

「もし、男の子が出来ると厄介だ。自分としては、エドワードに大公家の跡を継がせたいが、第二夫人にして男の子が出来たら、そちらを大公家の跡取りにという声が起こりかねない」

「まあね。召人なら、私の養子にすることで、兄弟の順序があるとして周囲を押し切れるものね。エドワードをあなたの実子と公表できたらいいけど、それは決してできないし」


 私は固まってしまった。

 母アンは、養父チャールズと不倫関係にあったのか。

 そして、自分を身ごもって、表向きの父ヘンリーに嫁いだ。

 少し早産のために私が生まれる際に難産になったというのは嘘だったのか。

 私は養父母に会話を聞いていたことがばれないように、こっそりと動いてその場から離れた。


 その後、私は聞き間違いではないか、と思い込みたかった。

 でも、真実を何としても知りたい、という想いは徐々に抑えきれなくなった。

 12歳の時、キャサリン皇女との婚約の事を告げられた私は、この際、自分の出生の秘密を養父母に問いただすことにした。


「キャロライン姉さんと結婚したい」

「それはダメだ」

「それは許されません」

 私の願いを、養父母は一蹴した。

 私は切り札を出した。

「私の異母姉だからでしょう」

 養父母は固まった。

「どうして、知っている」

 チャールズ父さんは思わずそう言った。

 語るに落ちるとはこのことだ。

 知っている、と言う時点で、私の異母姉だと認めてしまっている。


 メアリ母さんは、チャールズ父さんに腹立ちの余り、肘鉄を食らわした後、私に事情を説明してくれた。

 アン母さんが、チャールズ父さんを誘惑し、不倫関係になったこと、それを知ったメアリ母さんが奔走してヘンリー父さんとアン母さんを結婚させたこと、だが、既にアン母さんは私を妊娠していたこと。

 チャールズ父さんもそれが本当だと認めた。


 そうだったのか。

 血がつながっていなかったら、キャロライン姉さんと自分が結婚したかったのは本当なのだが。


 私が武芸に本当の意味で打ち込むようになったのは、それからだ。

 不倫で生まれたという誰にも明かせない秘密を、武芸に打ち込む間は忘れていられた。


「アリス・ボークラールか」

 私は、ふと思いを巡らせた。

 彼女は本当に前向きだ。

「帝都大乱」で父を失ったにもかかわらず、大公家出身のキャロライン姉さんにまめまめしく仕えている。

 過去に捕らわれている妻のキャサリンとは全く違う。

 同じように父を失っているのに。

 彼女と付き合えば、出生の秘密、過去の事を自分は少しは心の中で整理できるのではないだろうか。

 私はそう思った。


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