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【黄泉帰里編18】 『またね!』

 げこげこ、とカエルの鳴き声が聞こえた。異世界ではほとんど聞かなかったその声で、ぼんやりとかすみ掛かっていたミナミの頭がだんだんとはっきりしてくる。カエルの鳴き声はどんどんと強くなり、やがてこちらもびっくりするような大合唱になったが、始まった時と同様、突然途切れてあたりが再びしんと静まり返る。


 ミナミはゆっくりと起き上がる。自分にひっついていたクゥとイオを起こさないように細心の注意を払いながら、くぅっと大きく伸びをした。


 朝のかなり早い時間。それこそ日が昇ったかどうかと言ったところだろう。窓から見える空は明るくなってきてはいるものの、太陽の姿は確認できない。


 本来ならば、これくらいの時間であればレイアやソフィのどちらかは起きていてもおかしくなかったが、昨日はしゃぎ過ぎたからか、あるいはこの田舎帰り──ミナミの、だが──で疲れていたのか、二人はミナミの布団の中であどけない寝顔を晒しながら小さな寝息を立てていた。


 なお、ミナミのベッドはお姫様とレン、メルが占拠している。狭い部屋にこれだけの人数がいるとさすがに圧迫感があるが、慣れ親しんだ自分の自室と言うことを差し引いたとしても、ミナミはこの雰囲気が好きだった。


「……」


 どうにも目が覚めてしまったので、ミナミはこっそり部屋を抜け出すことにした。洗面所でバシャバシャと顔を洗い、冷蔵庫からよく冷えた麦茶をぐいっ一杯だけ呷る。


 いちいち井戸にいかなくても身支度が整えられるのはやはり便利だ。日本がどれだけ恵まれているか──否、この現代がどれだけ進んでいるのかミナミは再確認する。


「今日もいい天気だな、と」


 なんとはなしに縁側に腰かけ、ミナミはひとり呟いた。なんだかんだでお日様は昇り、スズメがちゅんちゅんと朝を告げる音楽を奏でている。八月とはいえけっこう涼しい空気が満ちており、それらすべてが早朝の雰囲気を形作っていた。


「ああ、まったくだ。……おはよう、三波」


 そんなミナミの隣に腰を掛ける老人が一人。


「あ、じいちゃん」


 ミナミの祖父──三条 一光はにっこりとほほ笑んだ。


「早起きだな? いつもはもっと遅かったと思うんだが……」


「なんか目が覚めちゃって。じいちゃんだって早起きじゃんか」


「山だと日の出とともに起きて日没とともに眠ってる。いつもこれくらいだよ」


 お盆の時はこうして三条家にやって来るとは言え、一光は普段は山の方で今どき珍しい猟師として暮らしている。自給自足……とまではいかないものの、現代人から見ればかなりワイルドな生活を営んでいることは間違いない。


 そのため、仏壇はミナミたちが住んでいるこの家にある。単純に一光の家はお盆に家族みんなで過ごすにはかなり不向きだということもあって、こうして一光のほうがやってきているというわけだ。


「……今日、だよな?」


「……うん」


 一光は少し寂しそうに聞いてきた。ミナミはそれに頷くことしかできない。


「……こうして喋っていると忘れてしまいそうになるが、お前はもう、死んでいるんだもんなあ」


 今日はお盆四日目。すなわち、お盆の最終日である。それは同時にまた、ミナミたちが異世界に帰る日であるということも示していた。


「でも、でもさ! 送り火は夕方でいいはずだから! 神様、こっちのタイミングでいいって言ってくれたし!」


 ミナミたちは送り火を焚くことで向こうに帰る手はずになっている。具体的にどうすればいいのか、周りを巻き込んだりしないのか、行きと同じように室内でやらないといけないのか──などと考えるべきことはいくつかあったが、いずれ神様の神通力によるものだから大丈夫のはず、とミナミは考えていた。


 むしろ、こうして自分たちでタイミングを決められるだけサービスしてもらっているのだろう。


「当たり前だ。おれだって、かわいい孫ともっとしゃべっていたい。朝で返すわけないだろう? ……出来ることならこのままずっとお前をこの世にとどめておきたい。だが、それは敵わんことなんだろう?」


「……うん」


「なら、しょうがない。こうしてまたお前と喋ることが出来る……それさえ、本来あり得ないことなんだ。むしろその神さまには感謝せにゃならん」


 一光は手を合わせ、なむなむとつぶやいた。果たしてその祈りがあの神様に届いたかどうか不明だが、その真摯な姿勢だけはきっと伝わった事だろうとミナミは思う。


「ああ……それにしても、本当に不思議な気分だよ。あのとき確かに仏さんになったお前を見届け、そのお骨だって確かにこの目で見たのに、そんなお前が今こうしておれの目の前にいるなんて、な」


「改めて聞くと結構すごいな。おれ、死んだあとほぼそのままあっちに行ったから、自分の仏壇見ても全然信じられないよ」


「おれたちはもっと信じられないっちゅうに。……そうなると、今のお前の体はどうなっとるんだ? 体は火葬したんだ、黄泉路からそのまま帰るにしたって、そっくりそのままの姿ってのは……」


「さあ? 神様がなんとかしてくれたんじゃないかな」


「そういうものなのか?」


「そういうものなんじゃない?」


「そうか」


「そうだよ」


 ミナミはおじいちゃんっこであった。祖父はいつも頼りになるし、その背中からは父とは違う力強さを感じる。厳しいことには厳しいし、時にはゲンコツだってもらったことがあったけれども、基本的には子供に甘いし物事の道理を言うものを踏まえて接してくれる。尊敬できる人を一人だけ挙げろと言われたら、ミナミは間違いなく祖父の名前を挙げるだろう。


「……じいちゃん?」


 だから、そんな頼りになる祖父が、ここまで寂しそうな顔をしていることに動揺を隠せなかった。


「……三波」


「どうしたの?」


「特別じゃあ。膝のせたる」


 ミナミは小さいころ、よく一光の膝に乗せてもらっていた。大きな体を背もたれにして、いろんなお話を聞かせてもらったのをよく覚えている。そうやって遊んでもらったことが何回もあるし、時には一光の膝を巡って一葉と喧嘩したこともあった。


「いや、さすがに無理だよ」


 とはいえ、最後に膝に乗ったのはおそらく小学校三年か四年の時だろう。当然のことながらミナミの体は大きくなって、バリバリ現役とはいえ高齢の一光の膝に乗るには少々不安が残る感じだったし、なにより男の子特有の羞恥心もあったのだから。


 今はもちろんそんな羞恥心なんてなかったが、それでも高校生である。物理的にかなり厳しい。


「はん、お前はまだまだ子供だろうが。ついこないだまで転ぶ度にビービー泣いて、夜の度に厠に付き添わにゃならなかったというのに」


「じいちゃん、それ何年前の話だよ……おれ、もう十八のはずだよ?」


「ええい、いいから乗れい!」


 老人とはとても思えない力で引っ張られ、ミナミは少々不格好ながらも一光に背を預ける格好になってしまった。膝に乗るというよりかは一光が座りながらミナミを抱きしめているかのような格好になっている。


 久しぶりに触れた祖父の手は、記憶にある以上に節くれだち、カサカサで、そして細い。だけれども、その温かさは全く変わっていなかった。


「もう、今だけだからね!」


「はっはっは! 小童が吠えよる!」


 一光はその枯れ木のような手でミナミの頭をガシガシと撫でた。


「……なあ、三波」


「どうしたの、じいちゃん?」


「──おれも、死んだらお前と同じ場所に行けるのか?」


「──っ!?」


 祖父の口から出たとは思えない言葉に、一瞬ミナミの頭は真っ白になった。


「な……何言ってるんだよじいちゃん。じいちゃんまだまだ元気じゃんか!」


「今はまだ、な。だが、おれももう年だ。いつ何時何があってもおかしくない。明日おっ()んだとしても不思議はなかろうよ。十年後はもう確実にこの世を去ってるだろうなあ」


「じいちゃん……」


 一光は悲しそうに笑い、そして再びミナミの頭を撫でた。


「そう悲しそうな顔をするな、三波」


「でも……」


「おれは、うれしいんだよ」


 ミナミの胴に回された腕がきゅっときつくなる。細く、何本もの血管が浮き上がった骨と皮ばかりのへし折れそうな腕なのに、それは力強さに満ちていた。


「死んだ、もう二度と会えないはずの孫に──お前にまた会えた」


「……」


「正直見られないとあきらめていた、孫の嫁っ子を見られた。それどころかあんなにたくさんのひ孫だって抱くことが出来た。……うん? ひ孫でよかったのか?」


「……ひ孫でいいんじゃない?」


 一葉は子供たちのことを甥姪と見るか、弟妹で見るか悩んでいたが、いずれにせよ一光から見ればどちらも似たようなものである。孫もひ孫もそう大して変わらない。


「五樹は浮いた話がまるでなかったからなあ……。一葉が嫁に出るまで生きてられる自信はなかったし、ひ孫を抱くのはあきらめてたんだ。なのに、五樹と同じく浮いた話のまるでなかったお前が嫁を二人に孫を四人も連れて帰ってきたんだ。うれしくないはずなかろう?」


「レイアとソフィは嫁じゃあない……と思うけど」


「ああン? 嫁じゃないならなんだってんだ。お前がそう思わなくても世間じゃありゃあ嫁っちゅうんだ。あまりふざけたことを抜かすと、山姥の出る山ン中に置き去りにするぞ?」


「わ、わかったってば! ……でも、今のおれなら山姥くらい返り討ちできるよ。ふっとい腕を何本も持った複眼の巨人を倒したこともあるし。こう見えて地平線を埋め尽くす魔物どもを返り討ちにしてるからね」


「……」


「レイアも山姥──包丁持った怪力のババアくらいなら楽勝で倒せる。むしろ山姥のほうが泣いて逃げ出すんじゃないかな」


「……そうか」


「じいちゃんからみればひょろひょろなパースも魔法使いだからね。ついでに学者だから、生態を明かそうと喜々として解剖しだすかもしれない」


「……すごいな」


「一応おれ達、冒険者だから」


「……昔はこれで一発だったんだがなぁ」


 余談ではあるが、三条家の子供たちはみな『悪い子は山姥の山の中に捨てるからね!』と言われて育ってきている。祖父の生業が生業だけに、その迫力も信憑性も段違いだったのだ。


「……まあ、ともかくだ」


 ごほん、と一度咳をしてから一光は言葉をつづけた。


「そんなありえないことが重なったものだから、おれも少しばかり欲張りになっちまったんだよ。寿命を全うした先で、もしかしたらまたお前たちにあえるんじゃないかってな」


「……」


「ごろすけと、ピッツだったか。彼奴らはなかなか賢いし、面白い。その異世界とやらにはそんな獣がいっぱいいるんだろう? 単純に、猟師としても興味がある。再び孫にあえて、未知の獣がいる新しい世界で生きることが出来る──そう思うと、聞かずにはいられなかったんだ」


 それは果たして本音なのかどうか、今のミナミにはわからない。まだ二十年も生きずに──成人すらする前に死んで、死んだ後も一年しかたっていない、すなわち人生経験が著しく貧相なミナミにわかるはずもない。ましてや、相手は何十年と生きている祖父なのだから。


「……で、三波。おれは、死んだらお前の所に行けるのか?」


 一光が穏やかな笑みを浮かべて再びミナミに問いかける。


「……わからない。けど、神様は一生懸命生きる人間の味方だって言ってた。頑張ったら報われるって。だから、たぶんじいちゃんなら行けるよ」


「そうか! そりゃあいいことを聞いた! あと何年生きられるかわからんが、もっとまじめに、人様の役に立つように生きるとしよう!」


「……」


 無邪気に笑う祖父を見て、ほんの少しだけミナミは悲しい気分になった。だって、ミナミが言ったのはあくまでミナミの希望的観測に過ぎないのだから。それどころか、ミナミの記憶が正しければ、どう頑張っても──


「──なあ、三波」


「じい、ちゃん?」


 ふいに、先程とは異なる声音で声をかけられた。それはミナミが今まで聞いた一光の声の中で一番優しく、同時に暖かな手の平がミナミの頭を優しくなでていた。


「──大きくなったなぁ。うんと、大きくなったなぁ……!」


「……うん!」


 祖父と孫の温かい時間。少しばかり涙声が混じっていたのは、二人だけの秘密である。











「兄ちゃん、朝早くから何してたの?」


「じいちゃんと喋ってただけだ」


「ふーん……?」


 そして朝食の時間。もう慣れたもので、みんなが座って大きなちゃぶ台を囲んでいる。さすがにこの人数だとかなりぎゅうぎゅうだが、子供たちは大人の膝の上に乗ることでそのスペースを確保していた。


「それはそうと三波、お前、今日はどうするんだ?」


 ミナミの父──八雲がメルを膝に乗せ、せっせと魚の小骨を取り除きながら聞いてきた。


「送り火は夕方にやるんだろ?」


「うん、最後だしさ、今日は家でゆっくりしようかと。──あ、エディたちは時間までに戻って来るなら自由でいいと思うよ」


 本来ならば朝方に送り火をすることで帰還するのがお盆の習わしではあるのだが、ミナミはそんなつもりはさらさらなかった。別に必ずしも朝に送り火をしなければいけないという決まりはないし、そもそも神様自身がお盆のことをよくわかっていない。ハロウィンあたりとごちゃ混ぜにして覚えている節さえ見受けられる。


 さて、そうなるとおよそ一日ほど時間が空くことになるわけだが、今更遠出してバタバタするのも嫌なため、こうしてゆっくりダラダラしようとミナミは思ったのである。


 なんだかんだでこの三日間、お盆だというのに家でゆっくりしていない。うってつけであった。


「自由、か……。つっても俺、どこに行けばいいかわかんねえんだよな。迷子になりそうだし、たぶんまたあの警察にしょっぴかれるわ」


「それに夢中になりすぎて時間を忘れてしまいそうです。出かけたいのはやまやまですが、ご迷惑でなければ滞在させていただけると……」


 賢明な判断だろう。一応観光も買い物も済ませてあるから、エディたち自身にはそこまでして外出したいという強い意志はない。珍しいものを多く見過ぎてしまったため、今回はもう十分お腹いっぱいだったのである。


「なあ、俺の部屋で昨晩の続きしないか? 今日のうちに出来ることは全部済ませておきたいんだ」


「おや、奇遇ですね。実は私も……」


「おいおい、イツキとパースの話はつまらねえんだよぉ……。俺だけ除け者にするのか?」


「DVDもゲームも好きにしていいぜ?」


「よっしゃ!」


 五樹、エディ、パースの三人組は部屋でなにやらいろいろやるそうだ。聞けば、昨晩から五樹とパースは日本の技術や現代科学、さらには異世界の技術や魔法について白熱した議論を交わしていたらしい。すでにパースはパソコンやコンピュータについてある程度理解しているそうで、異世界で役立ちそうな情報収集を行いたいそうだ。五樹は五樹で魔法に関する知識をパースから学びたいらしい。


「私は荷物の整理かしらねぇ……。いろいろ戦利品も確認しておきたいしぃ……あ、コンビニくらいは行きたいわぁ。どうせ最後だし、ありったけ買い占めてみたいのよぉ」


「それなら私が付き合いますよ!」


「私も行きたいです!」


「あら、ありがとぉ……それじゃ、女三人でコンビニで贅沢しちゃいましょう!」


 一葉とミルとフェリカはコンビニに行くらしい。実質家でゆっくりするのと大して変わらないだろう。とはいえ、この近くだけでも数件のコンビニがあるから、見ているだけでも結構面白いはずだ。それにミルとフェリカはかなりのお土産を買い込んでいる。整理するだけでも時間がつぶせることは疑いようがない。


「レイアとソフィはどうするよ?」


 黙々とぶどうと桃を──どちらもミナミの仏壇に供えられていたやつだ──を食べていた二人にミナミは話を振った。


「あ、それなんですけど」


「その、もしよろしかったらでいいんですけど、お義母さん、私たちに料理を教えてくれませんか?」


 何気なく放たれたその一言に何人かのテンションが急上昇する。どうやら二人もすこし意識していたらしく、言い終わってからうっすらと首筋と頬を赤くしていた。


「ど、どうしたんだよ? ソフィはともかく、レイアまでなんて珍しいじゃないか!」


 どすっと小気味よい音が朝の食卓に響く。レイアがミナミの脇腹を小突き、ごろすけがミナミの太ももを突き、一葉がミナミの腹を蹴り上げたのだ。もちろん、ゾンビであるミナミには痛覚なんてないのでそれに大した意味はないのだが。


「う、うるさいわね! 私だって料理の一つや二つくらい……!」


「いっつも食えればなんでもいいって言ってたじゃないか!」


 レイアは調理ができる。ただし、それは冒険者としての調理だ。どんなゲテモノでもそれなりに『食べられなくもない』状態にできるとはいえ、一般的な料理とは言えない。限られた条件下の中で安全かつ食べられるものを作ることは出来るのだが、料理的な意味で『おいしい』かと言われれば話はまた別であった。


「と・に・か・く! せっかくだからこの日本の味ってのを覚えていこうと思ったのよ! 材料だけあっても肝心の技術が無ければ意味がないじゃない!」


「それにほら、ミナミくんだってこっちの料理が恋しくなることもあるでしょう? ……正直、私の料理ってこっちの料理に全然敵わないし……」


 確かに恋しくなる時もあるが、基本的にミナミはべっぴんさんが作ってくれた料理……というその事実だけで満足していたりする。愛する家族の料理に不満なんて持つはずがないのだ。


 もちろん、あちらでも日本の料理──それも母の味を楽しめるのだとしたら、それは願っても無いことである。


「あらあらあら! まあまあまあ! 私はむしろ大歓迎よ!」


「本当ですか!」


「ええ、もちろん。実はね、息子の恋人やお嫁さんとこうして一緒にお料理するのって夢だったのよ~! ……誰かさんは全然その気が無くて、もしかして一生叶わないんじゃないかって思ってたんだけど」


「う、うるさいな! 俺が悪いんじゃなくて環境が悪いんだよ! 理系大学の男女比率が悲惨過ぎるのは知ってるだろ!? そもそも遊べる時間だって全然ないんだ! 平日は朝から晩まで講義に実験、休日はレポートや資料作成! そんな中でどうやって……!」


「高校の時に連れてくればよかったのよ」


 五樹の悲痛な叫びを、明海は見もふたもない一言で終わらせた。


「……こほん。それじゃあ今日はちょっと遅めのお昼ご飯にしましょうか。二時か三時くらいにして、そのあとちょっとゆっくりしてから送り火でどう?」


「はい! よろしくおねがいします!」


 レイアとソフィがそろって頭を下げる。なにはともあれ、そういうことになった。








「やっぱり女の子はいいわよねぇ」


 明海はふんふんと機嫌よく鼻歌を歌いながら自分の隣に立つ二人の娘を見る。


 死んだはずの息子が家に戻ってきたというだけでも驚きなのに、あろうことかその息子は、浮いた話の一つもなかったはずの息子は嫁(?)を二人も連れて帰ってきたのだ。これで上機嫌にならないほうがおかしい。


「お義母さん、ナイフの使い方はこれであってますか?」


「そうそう。ここにうまい具合に隠し包丁を入れて……うん、上手じゃない!」


 レイアと名乗った少女。緑色と茶色が混じったような不思議な髪の色をしている。体もすらっとひきしまっていてスポーティな印象も受けるが、明海からしてみれば、その顔立ちだけでもう本物のお人形さんなんじゃないかと思えるくらいの器量が良い。


 時折義父を彷彿とさせる目の鋭さを放つことがあるこの少女。冒険者などという猟師の真似事をしていると言っていた通り、なるほど、料理の腕はお世辞にもそこまでうまいとは言えない。包丁の扱いだけはやたらと上手いけれど、基本的な調理の知識が不足している。


 切る、煮る、焼く……知っているのはそれくらいで、とりあえず安全に食べられればなんでもよかったとはにかみながら話してくれたのを聞いたときは、明海は本当にこの少女が別世界の人間なのだと思い知った。


「お義母さん、こっちの……味噌は、どういうふうに扱うんですか?」


「そうねぇ……。汁物に使うことが一番多いかしら。それとそっちの醤油を味付けに使うだけで、だいたいのものは和風になると思うわよ?」


 ソフィと名乗った少女。光の当たり方にもよるけれど、紺色の髪をした少女。いかにも女の子らしい雰囲気を放っていて、幼稚園の先生だとか、近所の面倒見の良い優しいおねえさんだとか、ともかくどこか母性的な何かを感じさせた。


 実際、レイアよりも全体的に料理は出来るらしい。動作の一つ一つが手馴れている。料理に関する知識もあるし、そもそもの手際が良い。何か一つのことをしながら同時に別のことまでちゃんと考えている。


 ただ、あちらにはこちらほど食材が豊富に無いから、いつもシンプルで同じようなメニューしか出せないんです……と申し訳なさそうに言われたとき、明海はついつい、とりあえずお腹に入れておけばなんでもいい味音痴な息子にそこまで気をかけなくてもいいと言ってしまいそうになった。


「やっぱりちゃんと料理するっていうといろいろ大変なのね……」


「そもそもレイちゃんの場合、料理って言えないと思うけど……。基本、その場で仕留めてその場で食べるやつでしょ? わたし、逆にそれはちょっと自信ないなぁ」


 それは多分明海も無理だ。仮に仕留められたとしても捌くことが出来ない。そりゃあ、魚くらいならもう目をつぶっていたって捌くことが出来るけれど、話を聞く限りでは、それはウサギや猪と言った非常にワイルドな禽獣たちである。


「まぁ。でも、そうでなくとも今作っているのは豪勢な、手間暇のかかるやつだから落胆することなんてないわよ?」


「……はいっ!」


 レイアが嬉しそうに笑うのを見ると、明海も嬉しくなってくる。


 明海がこうして義娘と一緒に料理をしたかったというのは紛れもない事実だ。だけれども、それ以上にこの二人の……特にレイアの熱意がすごい。最初は全然できなかったことでも、一度言えばすぐに理解してマスターしてしまう。


「……あっ! 飾り切りできた!」


「レイちゃんすごい!」


 ほら、これだ。とにかく手先が器用なのである。むしろ単純に包丁を任せるだけなら、ソフィよりも信頼感がある。明海だって苦戦するようなものでも簡単にスパスパ切ってしまうし、その使い方にも一切の無理が無い。同じ包丁を使っているというのに材料の方から勝手に切れていくようにすら見えてしまった。


「お義母さん、味付けはこんなかんじですか?」


「……うん! バッチリだわ!」


「ソフィ……あなた、どうしてここまで合わせられるの……?」


 もちろん、ソフィだってすごい。いい舌を持っているのか、細かく教えたわけでもないのにもう自分と同じみそ汁の濃さを身に着けてしまった。味噌の量もさることながら、ちょびっと入れている醤油までしっかり見抜いている。一朝一夕では身に付くものじゃないとはいえ、これなら肉じゃがだって同じ味を再現することができるだろう。


 二人とも、教師として教えるのに申し分ない相手だった。同時に、夢見ていた嫁と姑の家族トークにも相応しい相手であった。


「ねえ、ソフィちゃん、レイちゃん。あっちでの夕食ってどんな感じなのかしら?」


 手早く鍋の中身をかき混ぜ、フライパンの中身を気にしながら明海が話を振る。


「一番喜んでくれるのはやっぱりシチューですね。パンにも合いますし、お肉も野菜もたっぷり入りますから」


「私がうまく稼げた時は串焼きとかを屋台でかっておかずに加えたりします……ミナミ、冒険帰りだと大体お土産で買うんですよ」


 まあ、とほほ笑みながら明海はレイアが作っていたハンバーグの種にパン粉を少し加え、ソフィが作っていた肉じゃがに砂糖を大匙で加えた。


「いいわねえ、そういう話! ……お砂糖はもうちょっとしっかり入れても大丈夫よ? ああ、お砂糖がなかったんだっけ」


「無いわけじゃないんですけど、お砂糖を料理に使うって発想が無くって……。お砂糖は直接舐めたり果物にかけたり、後は紅茶に入れるくらいしか聞きませんね」


「だから私、こっちでの『甘辛い』味にすっごく感動したんです! できれば、これをちゃんと覚えてあっちでもミナミくんに食べてほしいなって!」


「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃない!」


 五樹も三波も、自分たちの息子は基本的に味音痴だと明海は思っている。何を出しても『うまい』しか言わないし、お腹さえ膨らめばよほどのことが無い限り文句は言わない。逆に、どんなに手を込んだものを出しても、やっぱり『うまい』の一言だけで、どこがどう美味しいのか、どうよかったかなんて言ってくれないのだ。


「……あなたたち、ちょっと苦労をするかもね」


 不思議そうに見つめてきた綺麗な色の瞳に、明海はなんでもないのよ、と手を振った。


「でもま、こんなにいい子たちが来てくれて、私も本当にうれしいわ! あの子になんてもったいないくらい!」


「大袈裟ですよぅ。私たちこそ、ミナミくんには助けてもらってばっかりですし」


「ううう……ソフィなんてまだいいじゃないのよぉ……! 私なんて、いまや父親役をミナミに取られかけてるんだから! 家事もそれなりに出来てお金も稼いで、なにより疲れない体ってのがずるいわ! このままじゃ私、ただの性格の悪いダメ女よ!」


「「そんなことないと思うけど……」」


 ソフィと明海の声が重なった。明海は子育ての苦労はわかっているつもりだし、女の子二人で家庭を養う苦労も想像できるつもりである。自身もまだ幼い中、家族全員の命を背負って文字通り命懸けで稼ぐことのつらさなんて、家事しかできない自分が想像するのもおこがましいくらいのものなのかもしれないと感じている。


「それとも、いっそのことレイちゃんもソフィちゃんと同じようにお母さん役になればいいんじゃないかしら? ミナミならこき使っても大丈夫よ?」


「そ、そんなわけにはいかないですよ! 私がそっちになっても足手まといだし、まだまだミナミには先輩冒険者として教えることがいっぱいありますから! ……それにあいつ、金使いが荒いってわけじゃないけど、金銭感覚とかその辺がなんか抜けてますし……」


「ミナミくん、全然自分のお金使わないもんね……。たまに使ったかと思えば、みんなのための何かだし」


「ああ……」


 明海にはその言葉の意味がよくわかった。ミナミはいつも、変なところでみみっちいくせに、変なところでむきになったりする。使うべき時にお金を使わず、結局そのままチャンスを無駄にするタイプなのだ。


「……うん、やっぱりあなたたち三人がそれぞれ出来ることをするのが一番よ。今の段階でお互いバランスが取れてると思うわ」


 三人はわいわいと話しながら調理を進めていく。明海はそれが堪らなく楽しくて、ついついクスリと笑ってしまった。


「お義母さん?」


「ああ、ごめんなさい……本当にもう、こうしているのが楽しくて楽しくて!」


「……それは、私たちも一緒ですよ」


 レイアとソフィが一瞬見せた暗い表情を、明海は見逃さなかった。


「私もソフィも、両親を小さいころに無くしていますから。こういうのってほとんど全部独学なんですよ」


「普通はお母さんから習うんですけどね。そうやって味や技術を継いでいくんです。でも、私たちは……」


 村を襲った魔物のせいで、レイアは独りぼっちになった。ソフィはかなり早い段階で両親を亡くし、叔父に引き取られることになった。本来あるべきはずの、両親との楽しい思い出を、この二人はほとんどもっていないのだ。


「だから、こうしてお母さんから料理を習うの、すっごく楽しみにしてたんです!」


「お義母さんは料理を教えるのが夢だって言ってましたけど、私たちも教えてもらうの、夢だったんですよ!」


 明海は限界だった。なんかもう、耐えられなかった。


 だから、明海は二人の少女を思いっきり抱き締めた。料理中だとかそういうのを抜きにして、とにかく今すぐ抱きしめたくなってしまったのだ。


「お、お義母さん?」


「く、苦しいですよ……!」


「私を本当のお母さんだと思っていいからね……! 私が教えられることなら、何でも教えてあげるからね……!」


 明海はもともと涙もろいところがある。その上であんな台詞を言われてしまっては、もうどうしようもない。おまけにこの二人は息子の嫁(?)なのだ。いっそ本物の嫁にしてほしい──というかなんでここまで状況証拠が出来ているのに『嫁(?)』であるのが不思議なくらいだが、ともかく抱き締めても何ら問題ない相手なわけだ。抱きしめないほうがおかしい。


「よかったわぁ……! 本当によかったわぁ……! あの子と出会ったのがあなたたちで……!」


 レイアはミナミを引っ張ってくれるだろう。ソフィはミナミを支えてくれるだろう。


 それはミナミに取って何よりも大事で、そして必要な事であるのだ。この二人以上にミナミのことを想ってくれる人がいるなど、明海にはとても想像できない。


「ホント、なんでも相談していいからね……! こう見えても私、三人も産んで育ててるし……やり方知らないなら、教えてあげるからね?」


「「へ?」」


 レイアとソフィの声が重なった。


「あの、お義母さん? 教えるってその、何を?」


「やあねぇ、わかってるくせに!」


「え、ええ、ええと、その、参考までに何のことか……!」


 レイアとソフィがぎくしゃくと、ほんのりの頬を染めながら明海を見つめる。明海はすごくにこにこした表情で、半分本気で、半分イタズラとして二人の耳元で囁いた。


「──」


「「お義母さんっ!?」」


 二人の少女は今度こそ真っ赤になった。先程まで残っていたなけなしの他人行儀な部分はすっかり砕け散り、二人してパニックになりながらパンパンと明海の背中を叩いている。


「あら、いずれ必要になることじゃない?」


「そそそ、そうかもしれないけどっ!」


「でも、だからって、その……っ!」


 ひとしきり二人をからかった明海。調理を手早く終えたレイアとソフィは、もはや遠慮の一切をする必要なくなった明海に正義の鉄槌をくだそうとにじり寄っていく。


「あら、怖ーい!」


「あっ! 待ちなさい!」


 明海はきゃっきゃと笑いながら逃げた。こうして娘たちと戯れるのもまた、明海がずっとやってみたかったことなのだ。今までこういう話ができる相手なんて一人もいなかったのだし、一年に一度くらい、こうしてふざけてもいいじゃないか、と自分で自分に言い聞かせる。


「あら?」


「お義母さん?」


 そして、逃げ込んだ和室。明海は見てしまった。


 土気色の肌。聞こえない呼吸音。明らかに生きているとは思えない状態の息子が、畳の上で横たわっていた。










 ミナミは手持無沙汰だった。五樹やエディたちは部屋でなにやら難しいことを話しているし、一葉やミルは荷物の整理をしたりしている。レイアとソフィは母と一緒に料理に励んでいるし、子供たちと遊ぼうにも、『最後くらい譲ってくれよ!』と聞かなかった父がワガママを言って一緒にテレビを見ている。じいちゃんもまたそれにまじっていた。


「なにこのそこはかとない疎外感」


 ミナミはなんとなく和室で座り込んだ。畳の手触りが実に心地いい。この落ち着く感じがミナミは本当に好きだった。


「あー……」


 思えば、異世界には畳が無い。故にこの感覚もすごく久しぶりである。ほぼ無意識のうちにごろりと寝転がると、お盆バージョンの仏壇がちらりと目に入り、さらには自分の遺影を正面から見つめることとなってしまった。


「……」


 しかし、ミナミはあまりそういうのを気にしないタイプだった。別に自分の写真が目の前にあっても、だからどうしたという話である。


「たたみさいこう……」


 そしてミナミは畳にほおずりし、ほぼ一年ぶりとなるその感触を楽しみながらまどろみに落ちた。実はミナミは夏の午前中、畳と線香の匂いがする中、扇風機を回してお昼寝するのが大好きなのである。



 で、だ。



「……んぅ?」


 ミナミはそこまでは覚えている。お気に入りの場所でお昼寝したのは覚えている。そこは良い香りのする畳の上で、ついついまどろんでしまったのははっきりと記憶にある。


 だが、だ。


「……あり?」


 良い匂いは良い匂いだが、畳の匂いじゃない。もっとこう別の、違う意味で懐かしさを感じる匂いだ。ずっと嗅いでいると安心できるような、ともかく本能レベルで癒される香りである。


 そして、それ以上におかしなことがある。畳特有のざらざらした感触が頭から感じられないのだ。それとは到底似ても似つかない、ふわりと柔らかい何かを感じるのである。程よい固さと柔らかさをもった、まさに至高の枕と呼ぶにふさわしいものだ。


 ミナミはその感触に少しだけ心当たりがあった。


「あら、起きたの?」


「……あ」


 まさかとは思ってそろそろと目を開ける。そこには母がいた。


「……母さん?」


「ん、なあに?」


「……何やってるの?」


「やあねえ、膝枕に決まってるじゃない。あなた、昔から好きだったでしょうに」


 程よい高さ。なんとなく暖かい感じ。何年ぶりの感覚かはわからないが、ともかくミナミは母に膝枕されていた。


「恥ずかしいんだけど……」


「別にいいじゃない」


 明海はミナミの頭を優しくなでた。もしミナミがはっきりと目覚めていて、あるいはいつも通りの日常であれば──すなわち一年ぶりの奇跡的な里帰りという状況でなければ、すぐさま飛び起きていたことだろう。


 だけど、ミナミはその感覚がすごく懐かしくて、嬉しくて、口ではそんなことを言いながらも気持ちよさそうに眼を閉じた。


「ホント不思議。鼻をつまんでも口をふさいでも大丈夫なんだもの」


「何やってたのさ」


「胸を触っても全然動いてなかったし」


「ゾンビだからね」


「そのくせ、お腹だけはちゃんと上下するのね」


「なんか癖でそうなるっぽい」


 ミナミは目を瞑ったまま母の膝の感触を楽しんだ。もう何年ぶりになるだろう。高校三年生にもなって──正確には高校二年の時に死んだわけだが──母親の膝枕でお昼寝する男子なんて普通はいないはずだが、それでもミナミは母の膝から離れたくない気分だった。


「あー……」


「いつになく甘えん坊ねえ?」


「別にいいじゃん」


 何のことはない。ミナミはただ、ちょっと甘えたい気分になっただけだ。もう二度と会えないはずの母に出会えて、そして今から数時間後にはまた別れなければいけないのである。だったら、少しくらい甘えてもいいだろう──と寝ぼけた頭でそう考えたわけだ。


「あなたも昔はすごく可愛い顔していたのに……いつの間にかこんなパッとしない男の子の顔になっちゃって……」


 明海はミナミの頭を撫でながら大げさにため息をつく。言葉とは裏腹にその瞳は優し気で、母というそれが持つ慈愛に満ちていた。


「それ、何回も聞いたよ」


 ミナミは母の膝に頭をこすりつけた。小さいころはよくこうやってお昼寝に付き合ってもらっていたのだ。どんなに目が冴えている時でも、どんなにむずがっているときでも、ミナミは母の膝枕さえあればとたんにころりと眠りにつく子供だったのだ。


「こういうところは、昔と変わらないのね」


「ちょっと違う」


「違う?」


「おれは母さんに膝枕されてるんじゃなくて、これから寂しがるであろう母さんのために、膝枕を使ってあげているんだ」


「ナマイキ」


 ぺん、と明海の手のひらがミナミの額を打った。そのまま明海は、ミナミの頭を抱えるようにしてその体を抱きしめる。


 ミナミはその心地よさのせいで、不覚にも再び眠りの淵に入ろうとしてしまった。


「嫌がらないのね?」


「甘えさせてあげているんだ」


「甘えん坊が、デカい口を叩くようになったわね」


 ふいに、明海の腕の力が強くなった。そのことに若干の違和感をミナミは覚える。なんとなく、感極まったのかな……なんて思ったのだが、どうにも様子がおかしい。全然振りほどいてくれる気配がない。別段不快ではないし、むしろ甘えたい気分である今嬉しいことこの上ないのだが、なにかがおかしかった。


「甘えん坊のミナミくん?」


「なんでしょう?」


「そろそろ頭ははっきりしてきましたか?」


 はて、どういうことかしらん、とミナミはだんだんと意識を覚醒させた。母に抱かれているから周りがよく見えないのはしょうがないとして、なぜこうも体が動かしにくいのか。


「さっきまでの全部、みんなに見られてるわよ?」


「なぬぅ!?」


 ぎぎぎ、と首を回した。


「あ……えーと、たまには甘えたい時もあるわよ! 別に恥ずかしいことなんかじゃないわ!」


「ミナミくんは膝枕が好き……と」


 レイアとソフィがとても微笑ましいものを見る目でミナミを見ていた。しかもあろうことか、それぞれ明海の隣に座っている。母とのやり取りすべて、その一挙手一投足、挙止動作の全てを間近で見られていたということだろう。


 はっきりとわかる。ちょっと顔をずらせばすぐに気付くくらい、二人は近くにいた。というか、明海と同じようにミナミの寝顔を覗き込んでいたのだ。それに気づかなかったのは、寝ぼけていたことを差し引いたとしても、ミナミが母に夢中になっていたためである。


「ええと、その、これは……!」


「可愛い寝顔してたわよ? うちじゃ見せないくらいにね?」


 レイアがにこにこと笑いながらミナミの頭を撫でた。前髪をさらりと払い、いつも子供たちにするように優しく髪を手櫛で梳いていく。それは母の手つきとは似ても似つかないはずのものなのに、同じくらい心地よいものだった。


 あまりの恥ずかしさに、ミナミの顔は真っ赤になった。


「膝枕、そんなに好きなら言ってくれればよかったのに。……ちょっと恥ずかしいけど、それくらいなら好きなだけやってあげるよ」


 ソフィは自分の膝をぽんぽんと叩いた後、レイアと同じようにミナミの額を撫でた。まるで本当の子供扱いされたことが堪らなく悔しく、同時に自分でも思っていた以上に心地よかったことがミナミの心を羞恥とはちょっと違った何かでいっぱいにさせる。


 ミナミは恥ずかしくなって、母の胸とも腹とも言えないところに顔を埋めた。


 埋めた瞬間、恥ずかしさの原因をはっきりと自覚し、同時にその最たる行為をしたことに頭が爆発しそうになった。


「あなた、意外と甘えん坊だったのね。お義母さんから聞いたときは信じられなかったけど……」


「うん。でも今はすごく納得したよ! これからはいつでも私たちに甘えていいからね!」


「すみません。今見たことは忘れてください。みんなには言わないでください。ちょっとテンションがおかしかっただけなんです。別にこれが通常ってわけじゃないんです」


 明海もレイアもソフィもものすごく優しい笑みを浮かべていた。ミナミはなんだかとても、とってもいたたまれなくなった。


 そして、そんなミナミに取っては追撃となる一言が明海から発せられる。


「うん、もう無理だと思うわよ? あなた、一人でお昼寝してたわけじゃないもの」


 ぎゃあ、とミナミは悲鳴を上げそうになった。


 子供たちが、きょとんとした顔……あるいはレイアたち同様にこにこした表情でミナミの体に引っ付いていた。


「にーちゃ、こどもみたいだったね~! ……メルのこと、ねーちゃってよんでもいいよ!」


 ミナミの脇腹に引っ付いていたメルが、にこにこしながらそのぷにぷにの手でミナミの頭を撫でた。


「にーちゃ……」


 かける言葉が見当たらないのだろうか。レンはびっくりしたかのように呆然として、ただただミナミの腕に自らの尾っぽを擦りつけていた。


「なんか……なんかちょっとちがう……かも?」


 イオはすでにミナミの顔の近くまで来ていた。ひょいっと明海と同じようにその顔を覗き込み、何か納得できないのか一人でぶつぶつ呟いている。


「…クゥも、こんどひざまくらしてあげるね?」


 クゥはミナミの腹の上にまたがっていた。あどけない瞳でじっと見つめてきて、嬉しそうに胸に頬をこすりつけてくる。なんだかとてもいたたまれなくなったので、ミナミは泣いているような笑っているような表情のまま、その頭を撫でておいた。


「ちくしょぉ……!」


 大黒柱としてあるまじき醜態を見せてしまったことに、ミナミは心の中で涙した。これがレイアやソフィだけだったらまだよかったのだ。だというのに、よりにもよって子供たちの前で子供のように母に甘える姿を見せてしまったのである。その大いなる威厳がガラガラと音を立ててぶっ壊れたと言っていいだろう。


「さて、嬉しいお知らせと悲しいお知らせがあるけど、どっちから聞く?」


 まだあるのか、とミナミは泣きそうになった。


「……嬉しいお知らせから」


「ご飯出来たわよ。最後だから頑張っちゃった。しかも、レイちゃんとソフィちゃんの手料理もいっぱいあるんだから。喜びなさい」


「……わーい、やったー」


 もうどうにでもなれ、とミナミはヤケクソになった。もうこの時点で、悲しいお知らせの内容を察することが出来たのだから。


「準備できていないのはあなただけ。もうみんな待ちくたびれてるわ。ほら」


 母は、ご飯の準備ができたからミナミを呼びに来たのだ。いったいそれからどれだけの時間が経ったのかは知らないが、膝枕なんてしていたらそれなりに長い時間がかかるに決まっている。


 つまり、何かあったのかとみんなが覗きに来てもおかしくない。ミナミは、最後に一縷の望みを駆けながら居間の方──正確にはその開け放たれたふすまの先を見た。


 何か見てはいけないものを見てしまったかのように視線をさまよわせ、真っ赤になりながら手で顔を抑えるミル。


 今まで見たことが無いくらいにいたずらっぽい笑みを浮かべたフェリカ。


 穏やかな、慈愛の表情を浮かべながらビデオカメラを回しているパース。


 もはや声すら出せないほど、ひたすら腹を抱えて笑い転げるエディ。


 みんながミナミの痴態を最初から最後まで見ていたらしい。もちろん、一葉も五樹も腹を抱えてパンパン机をたたきながら笑っている。家の中にいる全員がそこにそろっていた。


「嘘だろぉ……!?」


 魔物の大襲撃から王都を救った英雄もこれには敵わない。最後の晩餐の間、ミナミはずっと家族からからかわれ続けたそうな。











 そして、夕方。赤々とした夕日がまぶしいけれど、かといって黄昏と言うにはまだちょっと早い時間。三条家の庭に、帰り支度をバッチリと整えた異世界人たちと、三条家の面々が揃っていた。


 彼らはほうろくとその上に載せられたおがらを囲むようにして立っている。ただそれだけのはずなのに、そこにはどこか神秘的で荘厳な、奇妙な雰囲気が満ちていた。


「兄ちゃん、行っちゃうんだね」


 一葉が拗ねたように、そして寂しそうに言った。


「お盆だからな。まあ、来年また来るからさ」


「本当の意味でその言葉が使われるの、初めて聞いたよ」


 ミナミの家族は何も言わない。いや、言いたいことはいっぱいあるのだろうが、胸が詰まって言えないのだろう。エディやソフィたちも、その空気を読んだのかただただ黙ってミナミのやり取りを見ていた。


 本来ならばおがらに火をつけて送り火をしなくてはならない。だけれども、誰も火を点けようとしない。消火用の水はあるというのに、誰もマッチもライターも持って来ていなかった。


「しょうがない、おれが魔法でつけてやるよ」


「待って。私が魔法でつける」


「おいおい、弟たちよ。そういうのは長男の役目だろ?」


 三兄弟は最後のひと時を楽しまんとばかりに軽口を叩きあった。別にこれが今生の別れでもないし、また来年会えるはずだというのに、もっと一緒に時間を過ごしたいと思ったのだ。


 が、もちろんそんな付け焼刃の時間稼ぎが通用するはずもなく。やがて三人の言葉は途切れ、辺りに沈黙が落ちる。


「……おれが点けるぞ」


「まって」


 一葉がミナミの腕をぎゅっと握った。その瞳には涙がこれでもかと溜まっている。ありていにいって、泣き出す一歩手前の顔だった。


「ねえ、別に送り火なんてしなくていいんじゃないの? しなければ兄ちゃんはずっとこっちにいられるんでしょ?」


 それはおそらく、一葉の心からの願いだったのだろう。


「ダメだ。おれは本来死んだ人間だ。こうして話せるだけでありがたいんだよ」


「でも……!」


「また来年会えるだろ? これ以上望むのはダメだって。こっちに来れたのも、神様が気を効かせてくれたってだけなんだから」


 別にそう酷い人ではないとミナミは信じているが、もしもお盆の約定を違えてずるずると送り火を先延ばしにしていたら、神さまは来年以降ミナミを日本に送ってくれない可能性もある。どのみち神様なのだから送り火を先延ばしにしようと強制ログアウトされるだろうし、だとしたらミナミ自身、家族の手で送り出してもらいたかった。


「ねえ、兄ちゃん」


「どうした?」


 一葉は不安そうに告げた。


「なにかさ、兄ちゃんがここにいたって証をちょうだい? うん、異世界のなにかがいいな」


「別にいいけど……どうして?」


「不安なんだよ。実は私たちずっと、夢を見ていたんじゃないかって。兄ちゃんが死んじゃったのが信じられなくて、都合の良い思い込みをしているだけなんじゃないかって」


「……変なのしかないぞ?」


「それでいいから」


 ミナミは黙って巾着の中を漁った。一葉の気持ちがなんとなくわかったからだ。実際、ミナミだってこうして再び会えることなんてできないと思っていたのだから。


「……お」


 確かな手応え。同時にそれは、ミナミに取って思い出深いものでもあった。


「こいつをやろう」


「なにこれ?」


「ウルリンの牙だな。おれが最初に狩った魔物だ」


 ギザギザの、ちょっと黄色味かかった大きな牙だ。いかにもそれっぽいかんじではあるけれど、どこぞのエスニックな雑貨屋で売られている小物に見えなくもない。常に携帯するには聊か不自然だが、手頃と言えば手頃だろう。


「三波、俺にもなんかくれよ」


「じゃあ……あっ、これでいい? 何かの魔物の魔石なんだけど」


「最高だ」


「ずるいよ、五樹兄ちゃん!」


 ミナミが五樹に渡した色とりどりの魔石──綺麗な宝石のようにも見えるそれに対し、一葉が文句を言う。まあ、武骨な牙と綺麗な宝石だったら、どちらが女の子に対する贈り物として相応しいか一目瞭然だろう。


「うるせーなあ。俺は三波に個人的にプレゼントと依頼があるからこれでいいんだよ」


「なにそれ初耳だけど」


「おれも」


「そりゃそうだ、今言ったんだから」


 五樹は先程から意味ありげに持っていた紙袋をミナミに手渡した。中をのぞくと、高級そうなデジカメに充電器と思しきもの、さらにはバッテリーやメモリーカードなんかがこれでもかと入っている。


「兄ちゃん、これは?」


「見ての通り、デジカメだ。俺のなけなしの貯金全部使った。あっちじゃ充電できるかわからねえけど、バッテリーをいっぱいつけておいたからな。一年くらいなら持つだろ。出来れば予備のバッテリーを使って自分で充電できるか試してみてほしいところだが、とりあえず壊さないことを念頭にな」


 そんなのは見ればだいたいわかる。問題なのは、なぜミナミにカメラを渡したのかと言うことだ。


「あっちでの風景とかをさ、撮ってほしいだよ」


「風景?」


「ああ。出来れば異世界っぽいのをなにもかも、だ。家の造りや魔法の道具。武器や防具ももちろん、獣人や魔法使いもほしい。こっちにはない食べ物にも興味がある。異文化交流ってわけじゃないが、異文化研究に相応しいものは全部だ。そしてこれが一番重要なんだが──」


「魔物、だね?」


「ああ」


 五樹は大仰にうなずいた。


「ちょっと興味がある……というか夢があってな。お前にわからないかもしれないが、異世界での魔物の写真なんてものは、すっげえ貴重だぞ? 正直、どれほどの価値があるか……!」


 それはミナミにもわかる。なんだかんだで魔物を見るのは結構楽しい。自分がファンタジーの世界にいることが実感できるし、まさにゲームの中に入り込んでいるかのような気分になるのだ。


「ゴブリン、オーク、ドラゴン……メジャーなやつらはもちろん、俺の知らない魔物を見てみたいんだ。オウルグリフィンやミスリルウォームなんてのもいるんだろ? きっと、俺の想像をはるかに超えた魔物だっている」


「図鑑でも作るの?」


「売れるぞ? たぶん、こっちでもそっちでも。創作界隈に新しい革命が起きるさ。……だが、俺の目的はそこじゃない。いや、ある意味ではそこなんだけど」


「……まあ、楽しみにしておくよ」


「……あと、せっかくだから子供たちのアルバム用の写真を撮っといてくれ。デジカメは好きに使っていい。それこそ、向こうのお偉いさんとかギルドとかで必要だってんなら、お前の判断にすべて任せる」


「わかった」


 同じことを頼んでいるからあんまり気にしすぎるな、と五樹はパースを指さした。言われてみれば、パースも同じようにデジカメを回していたのをミナミはついさっき見ている。ほかでもない恥ずかしい姿をばっちり撮られているのだ。


「あと、この四日間で撮った写真、プリントアウトして入れておいたから」


「ありがとう、兄ちゃん」


 元気でな、と五樹はミナミの頭をガシガシと撫でた。一葉もまた、最後にミナミをぎゅっと抱きしめる。


 それが終わるのを見計らって、八雲、明海、一光がミナミのそばに寄ってきた。


「──あ」


 しかし、言葉は交わさない。父は笑ってミナミの肩を叩き、母は思い切りその背中を抱きしめた。祖父はミナミの背中をぽん、と叩いただけだ。


 だけど、それ以上は必要ない。それ以上なんていらないくらい、ミナミには三人の気持ちが伝わってしまった。


「じゃあ、またらい、ね、ん……!」


 思わず泣きだしそうになって、ミナミはそっぽを向きながら火を放った。ほうろくの上でおがらがもくもくとと白い煙を上げていく。少々煙かったのだろうか、風下にいたごろすけがほぉ──ぅと少し不機嫌そうに鳴いた。


「じーちゃ、ばーちゃ、またね!」


「またあそぼうね!」


「にーちゃはボクたちにまかせて」


「…ばいばい」


 子供たちが手を振る。白い煙がよりいっそう湧き出て、辺りをどんどんと白く染めていった。それは夕焼けを染め上げる闇のように、あるいは夜を切り開く朝日のように広がっていく。


「楽しかったぜ! 縁があったらまたよろしくな!」


「イツキ。貴方からもらった科学の知識、必ずや役に立てて見せますよ」


「次があったら、今度はこっちのお酒をたくさん持ってくるわぁ!」


「叶わないかもしれませんが、今度はこちらに遊びに来てくださるのを心よりお待ちしております!」


 冒険者とお姫様が楽しそうに告げる。もう庭の外の風景はすっかり煙で閉ざされ、白い空間の中にミナミたちしかその姿を認めることが出来ない。


 辺り一面を白く染め上げる煙。いや、もう煙と呼んでいいのかすらわからない。まるで雲の中に迷い込んでしまったかのように、ほんの一メートル先の光景すら見えないくらいになっていた。


「また会おうぜ、三波!」


「ウチの兄ちゃんをよろしくお願いします!」


「家族を泣かせるんじゃないぞ!」


「元気で過ごすのよ!」


「達者で暮らせ!」


 そんな中で聞こえてきた兄妹の声。父の声も母の声も祖父の声も、ミナミにははっきり聞こえた。


 それはおそらく、ミナミの隣にいたレイアにもソフィにも聞こえたのだろう。ぎゅっとしがみついてきた二つの腕はそういうことだミナミは理解した。


 だからこそ、最後に。


 三人は、おなかの底から声を振り絞った。






「「またね!」」










 そして気づけば、ミナミたちは王城のいつもの部屋にいた。最初に迎え火で迎えられた時同様に、そのふかふかのカーペットの上で座り込んでいる。本当に一瞬のことだったからか、子供たちはきょろきょろと所在なさげに辺りを見渡していた。


「戻ってきた……のかな?」


「そうみたい、だな」


 ミナミたちは今、日本の服を着ている。それがこの王城のちょっぴりゴージャスな調度品と奇妙なギャップを作り出していて、逆に妙なリアリティを与えていた。


「時間はあっちと同じくらいだな。部屋の様子も変わっていないっぽい」


「とりあえず、罠の類もなさそうよぉ?」


「魔法の気配も感じませんし、あの部屋と見て間違いないでしょう」


 さすがと言うべきか、エディたちはミナミがぼうっとしている間にも周囲のチェックを済ませたらしい。神様のやることだから別にそんな確認する必要はないとミナミは思ったが、それこそが特級の特級たる由縁なんだろう。


「なんか、長いようで短い四日間だったね」


「ああ。いろんなことがあったな。……でも、楽しかっただろ?」


「「うんっ!」」


 子供たちが笑って答えた。お姫様もまた、元気良くうなずいていた。


「おおい、もしかして帰ってきたのか?」


 外からトントン、と扉が叩かれた。まず間違いなく王様だろう。この部屋には近づかないように言ってあるはずだし、帰りの時間を知っているのも王様くらいしかいないはずなのだから。


「はい! 今開けます! お土産いっぱい持って来ましたよ!」


 ミナミは扉に向かって歩いていく。


 とりあえず、これからみんなでお土産の検分をしなくてはならない。使い方や効果を説明する必要もあるだろう。王様は特にお土産を楽しみにしていた節があったし、もしかしたら今夜は寝られないかもしれない。


 それに、せっかく買ってきたレシピなんかもある。本や写真集だってたくさんあるのだ。それを楽しみにしてくれるだろう人に、そのステキなお土産を出来るだけ早く渡したい。


 それだけじゃない。ミナミはほかでもない五樹から依頼を頼まれているのだ。まず手始めに王様の写真を撮って、王城のありとあらゆる部分をレンズに収める必要があるだろう。それでさえ、王様の知的好奇心を満たすのに大いに役立ってくれるはずだ。


「なんか、明日から普通の生活に戻るってなると、ちょっと寂しいなあ」


「何言ってるのよ、ソフィ。いつもの日常があるから、たまの特別が楽しいんじゃない?」


「そうだぞ。それに、まだまだ終わりじゃないんだ。せっかく買ったお土産を有効に使う方法を考えないと。そろそろエレメンタルバターの工事も終わるだろうし、そっちのことも考えないとな。やることはいっぱいだ」


「……そうだね!」


 そうだ、やることはいっぱいなのだ。ミナミはまだまだ、満足するつもりはない。それに、時間なんて腐るほどある。


 ほぉ──う、と夜獣が長く鳴いた。ミナミはなんとなく気分が良くなって、勢いよくその扉を開ける。


「おっ! 全員無事みたいだな。早速土産話を頼むぜ!」


「ええ、よろこんで」


 買ってきたお土産に料理の知識。未知の技術に革新的なアイデア。話すことなんてたくさんある。


 いや、それだけじゃない。こっちのセカイにも、魔物との戦いや心躍る冒険、不思議な体験など、たくさん楽しいことがある。


 ミナミはそのすべてを楽しむつもりでいる。そのすべてを、愛する家族と共に体験するつもりでいる。まだ見ぬ未来を、家族と共に幸せに生きていくと決めている。ありとあらゆる幸せが自分たちを待ち受けていると信じている。


 なぜなら──




 後ろを振り返り、ミナミはそこにある大切なものを見てにっこりと笑った。





「話したいこと、たくさんあるんですよ」






 ──ミナミの物語は、これからも紡がれていくのだから。






【黄泉帰里編:おしまい】




20160827 誤字修正


 これにて番外編の黄泉帰里編はおしまいです。おつきあくださいましてありがとうございます。


 また、以上をもって【ハートフルゾンビ】は完結です。おそらく、番外編も含めて投稿することはもうないでしょう。2012年の3月からおよそ二年半で本編完結、2014年の9月からおよそ2年で番外編の完結、連載開始から4年半近くかけてようやく完結することができました。


 ずいぶんと長いことかかりましたが、ここまで続けられたのはひとえに皆様方のおかげです。今までお読みくださった皆々様、本当にありがとうございます。長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。


 【ハートフルゾンビ】は完結しましたが、ミナミと子供たち、レイア、ソフィの物語はまだまだずっと続いていきます。いつかどこかでまた会いましょう。


 繰り返しになりますが、長い間お付き合いくださいまして、本当にありがとうございました!

             【ひょうたんふくろう】

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[気になる点] マジでボケたのか照れ隠しか、それが問題だミナミ。
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