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ハートフルゾンビ  作者: ひょうたんふくろう
ハートフルゾンビ
58/88

58 王都大襲撃

エタる気なんて、ないんだぜ?


 暖かな日差しを受け、王都グラージャの門はキラキラと輝いている。ちりばめられたガラス片のように、それはあちこちへと光を乱反射させた。


 もちろん、本来ならばそんなことなどありえない。グラージャの門は石造りであり、見るものに無骨さと厳つさを感じさせるものであるからだ。美しさを求めての装飾などは一切なされていないのである。


 王城の門であれば多少の芸術性は認められるが、出入り口である──防衛の要である、都と外とを隔てるこの門は、芸術性よりも実用性を遥かに重視しているのだ。


「……見えてきました!」


「報告を!」


「事前情報どおり、視認による敵数の確認は不可能! 地平線は埋め尽くされ、空にも数百匹の影を確認!」


 魔晶鏡(めがね)をつけた伝令兵が大声で告げる。その言葉は門のガラス片──騎士や冒険者に緊張を与えた。


 がちゃり、とにわかに武具を構えなおす音が響き、そしてその刃や鎧に反応するようにチラチラと光が瞬く。


 誰もがみな、不安や焦燥、勇気に満ち溢れた表情をしている。騎士は小隊に分かれて事前情報や戦術の確認をし、冒険者は仲間同士、砕けた口調で冗談を言いながら準備運動をする。


 戦力差、およそ五倍。


 明らかな負け戦の割には、みな落ち着いていた。


『冒険者諸君に告ぐ! 最初は騎士団側ででかいのを一発ぶち込む! 突っ込むのはその後だ!』


──うぉぉぉぉ!


 拡声の魔法により騎士団長の声が門に響き渡った。了解の印に、それに負けないくらいの大きな雄たけびが上がる。戦術指示にしてはいささかそっけないものではあるが、むしろ冒険者にとってはこれくらいわかりやすいほうがちょうどいいのだ。


『弓や魔法を使えるものは率先して空中の敵を! 上級冒険者は大物を! 低級は無難に小物を狙え! いいか、勝つ戦いではない、負けない戦を心がけろ!』


 今度はあまり大きな声は上がらなかった。冒険者なら、みな誰だって戦果を挙げたいと心の奥底で思っている。死ぬのはいやだが、情けないのもいやなのだ。


「んじゃ、俺も外行ってくるわ」


「ええ。気をつけて」


 水色に煌く大剣を背負って出て行くエディ。パースはその背中を見送って自らの持ち場へつく。


 もしかしたら今生の別れになるかもしれないというのに交わす言葉は短く、ちょっと川にでも行ってくる、とでもいうかのように気楽な、気取った様子もない空気。


 二人とも、死ぬ気なんてさらさらなかった。


「お待たせしました。よろしくお願いしますね」


「うむ。こちらこそ頼むぞ」


 かつんかつんと靴を響かせてパースが向かったのは城壁の上。何人もの弓士や魔法使いが迫りつつある敵を目前に矢を番えたり、魔法の触媒の準備をしたりしていた。


 城壁の一番見通しのよい所には、魔導騎士隊の精鋭十人が妖しげな魔法陣を刻んで何かの準備をしている。髭を蓄えた、いかにもそれらしい老人がにこやかな笑顔でパースを迎え入れた。


「首尾は?」


「上場じゃ」


 じゃらり、と老人の首飾りが鳴った。


 魔法陣の中央、および周囲には点を打つように大小さまざまな、色とりどりの魔石がセットされている。半径三メートルにもなるその魔方陣は城壁の幅いっぱいまで使ってしまっており、そこだけ事実上の通行禁止になっていた。


「まさかはじめてが実戦になるとは」


「戦じゃ。そういうもんだ」


 この老人はどれだけの戦を経験したのだろう。そう頭の隅で考えながらパースは魔法陣の中央に立つ。新調した水色の長杖──ミスリルを惜しみなく使ったロッドを構え、迫りつつある敵をギンとにらみつけた。


 ここからだと、敵の牙も、味方の剣も、どちらも非常によく見えた。


「それじゃあそろそろ」


「行きましょうか」


 経験と知恵による老隊長のタイミングと、パースの冒険者によるカンが告げたタイミングが一致した。


 パースはぐるりとロッドを回し、ガツッと魔法陣の中央に突きつける。


 次の瞬間、魔力が陣に張り巡り、キィィ、と耳鳴りに似た音が静かに響いた。


 魔法陣は紫色にちかちかと瞬き、そしてどんどんその光を強くしていく。濃厚な魔力の気配がその場を渦巻き、つむじ風のようにパースのローブをはためかす。


 目を閉じて集中しているパースには、それに気づかない。


 あまりにも夥しい魔力に、城壁の上にいた全ての人間の注目が集まった。はっと息を呑む声と、カタカタと手を震わせる音。


 輝きの真ん中にいるパースは、ある種の神秘性すら持っているように見えた。


(まさかこれほどまでとは……)


 老隊長は心の中でつぶやく。


 この魔法陣は鬼の市からもたらされたものだ。最近仕留められたというオウルグリフィン。その体内機構を元に作り上げられたものらしく、術者の魔法を今までにない増幅率をもって強化させるらしい。


(こりゃ、意外と楽になるかもしれん)


 魔物の雄たけびが近づくなか、そう思えてしまうほどには強力だ。魔石をバカ喰いするところだけはいただけないが、これも改良すればもっと効率的になるのだという。どのみち、今回は予算無制限なのであまり関係はない。


「行きますッ!」


 そしてその瞬間、パースは目をカッと開いた。


 ミスリルロッド、ミスリルのアクセサリー、オウルグリフィンの魔法陣。鬼の市にあったありとあらゆる種類の魔石。


 これほどまでにお膳立てされている上に、術者は特級の魔法使い。その威力は歴史に残り、後の彼に二つ名がつけられるには十分なものだった。


「はぁぁぁぁぁぁっ!」


 おそらく、城壁の上も下も、その場にいた全ての人間の注目が集まったことだろう。渦巻く魔力はいよいよをもって激しくなり、つむじ風というよりかは颶風となって暴れまわる。


 魔法陣の輝きはパースの雄たけびに応えるように強くなり、耳鳴りな音は警報のようにけたたましい。


 そしてとうとうその瞬間が訪れた。


 荒れ狂う魔力が静かなる水となり、パースの視界を埋めていく。じわりと浮き出てきたそれは瞬く間に震え、全てを飲み込まんばかりに侵食し、増殖していく。


「おいおいおい……」


 老隊長から声が漏れ出た。


 増え続ける水は止まるところを知らず、爆発的な勢いを持って成長を続ける。最初はせいぜい人一人を包み込める程度だったいうのに、今ではロックゴリラを五匹まとめて飲み込まれるほどの、建物にしてギルド本部そのものを飲み込めるほどの大きさの水球になった。


「まだ続けるのか!?」


 しかしそれでも、成長は止まらない。


 魔法陣とミスリルによって加速された魔力は、その程度ではとまらない。当然それを制御するパースにも相当な負担がかかり、全身から脂汗を流しているが、それでもまだ足りないのだ。


「おおおおっ!」


 空に浮かぶ水球は、もはや王城を飲み込みそうなほどにまで成長した。勇み足だった冒険者もそれをみて思わず足を止めてしまう。目のよいものでなくても確認できるほど近くに敵がいるのに、ぽかんと口を開けて固まってしまった。


 巨大な影が日差しを遮り、揺らめく水は下から見るものに海底に来てしまったかのような錯覚を与えた。この巨大水球は避難所のほうからも視認でき、王都の人々を大いに驚かせているのだが、現時点でパース本人がそれを知る術はない。


 ──そして、唐突にそれは形を変える。


 ぐにょんと両端から引っ張ったかのようにそれは伸びた。アレだけ大きかった水球だというのに引っ張りすぎて細い線のようになっている。細いといっても冒険者の平均身長の二倍くらいの太さはあるのだが、下で見ている冒険者にそこまではわからない。


 そしてそれは、ゆっくりと冒険者たちの目の前に降りてきた。城壁全体をぐるっと囲むように、やや弓なりにカーブを描いている。想像以上の太さと長さをもつ水のチューブに低級冒険者は度肝を抜かし、上級冒険者は獰猛な笑みを浮かべた。


 さて、もちろんパースの狙いは水のチューブで王都を守ることではない。これだけの大きさと長さがあれば確かに防壁として申し分ないものがあるが、敵を殲滅させることには繋がらないし、維持だってできない。


 ならば、どうするのか?


「いっけぇぇぇぇ!」


 答えは簡単だ。


 維持できないのなら、しなければいい。


 腹の底からのパースの叫びとともに、水のチューブが弾ける。わずかな指向性を持たされたそれは、巨大な荒ぶる波となって行軍する魔物の群れへと迫っていく。


 ただひたすら、静かに、ゆっくりと、されど大きなうねりをもって。


「今じゃ、やれぃっ!」


 そこに老隊長の声が響いた。


「《閃く紫電よ、荒れ狂え!》」


「《恐れろ、怯えろ、閃光に! 平伏せ、かしづけ、轟音に! 破邪の光を胸に刻んで、今こそ呼ばん、雷鳴を!》」


「《滅べ、消えろ、なぎ払え! 黄金こがねの力に朽ち果てろ! 慄く愚者のすべてを喰らう、荒ぶる牙を突きたてろ!》」


 魔導騎士隊が雷の魔法を放つ。十人の精鋭が放ったそれはパースの水球と同じく増幅され、黒い暗雲と轟く雷鳴を呼んだ。


 ぴしゃり、という甲高い音とゴロゴロという重低音がさながらオーケストラのように戦場に広がり、猛り狂う巨大な雷が、全てを飲み込む激流に注ぎ込まれていく。


 荒れ狂う水の奔流は全体が白く黄色く輝き、表面に雷をまとわせバチバチと音を立てるようになった。


 ──水と雷の、暴虐のうねりが完成した。


ギャァァァァ!


 遥か彼方から魔物の悲痛なが聞こえてくる。どどど、と地鳴りのような音が平原に木霊し、焦げ臭いにおいとイオンの匂いをあたりにばら撒いた。


 水雷の波は全てを飲みこまんばかりに平原を侵食していく。草は倒れ、木は折れ、一切がごみのように、いや、まさにごみとして波に流されていく。


 漣と雷の音が地獄の亡者の呻き声にも聞こえ、終わることのない残酷な嵐の片鱗を見せ付ける。


 それに飲み込まれた最初の魔物──ブルータルスクイッドは一瞬で全身をしびれさせ、そして黒焦げになり、物理的な障害物として波と一緒に遠ざかっていった。激流により複数あった足は全てバラバラに千切れ、その切り口から黒いような、赤いような何かがぴゅるぴゅると飛び出ている。


 頭の悪いゴブリンどもはその脅威を理解できず一瞬で消し飛んだ。


 賢い魔物は逃げ惑おうと将棋倒しになり、無残に飲み込まれた。波を飛び越えればなんとかなると踏んだ月歌美人は、空に跳んでから目の前に広がる水雷の渦に顔を引きつらせ、怨嗟の叫びを上げながらガボガボと口から泡を吹き、沈んでいく。


「えげつねぇ……」


 冒険者側から見ても、その威力は脅威に感じるものだった。


 自らの身長の倍ほどの高さのある水の壁。触れたら一瞬で感電し、仮に耐えられたとしてもその圧倒的な水量にはなす術もなく飲み込まれる。


 加えて、逃げ場がない。遮蔽物のないこの平原では、どれだけ横に逃げても意味がない。後ろに逃げてもいずれ追いつかれる。


 上級冒険者も低級冒険者も、分け隔てなく肝を冷やし、そしてその効果に期待した。


 水雷の波に飲み込まれた魔物は一切の区別なく押し流され、広がる電撃と荒れ狂う水流、そして死んだ魔物そのものが暴力的な質量となって大群をじわじわと蝕んでいく。


 波が通った後は全てがなぎ倒され、生命の一つも残っていない。


 パースは、この広大な平原に大洪水を引き起こしたのだ。


「ほ、補助ありとはいえ結構きついですね……」


「なに、それだけの仕事はできたであろうよ」


 城壁の上という、戦場でありながら身の危険の少ない、ただ結果だけを臨める場所でパースが息を吐いた。


 圧倒的な質量をもつ水雷は、もう術者の制御を離れても形を失うことはない。空を飛ぶ魔物こそ落とせていないものの、視認できる範囲にいる大半の魔物は、だいたいが波に飲まれてその生涯を終えてしまっているだろう。何匹か生き残っているものもいるようだが、いずれにせよ大きな損害を与えたことだけは間違いない。


 もし彼らが水雷の波の爪痕を見ることが出来たのなら、黒焦げになったゴブリン、体全体がねじ切れひしゃげたグリーフサパー、全身をぬらし、白目をぎょろっと剥き出しにして溺死した月歌美人に、首が明後日の方向にこんにちはしたスラッシュホースを見ることが出来たはずだ。


「では、締めはよろしくお願いします」


「まかせろ」


 老人にしてはしなやかな動きで老隊長はパースの隣に立ち、その節くれだった指を煌びやかな杖に絡め、ゆっくりと前に突き出す。熟練の、隙のない構えだった。


「魔法の秘術か……まさかこの老いぼれにその役目を譲ってくれるとはな」


 少しだけ魔法陣の補助を使い、老隊長は魔力を練り上げる。


 足から腹、腹から胸、胸から腕……そして杖へ。


 杖、体、魔法陣が魔力を通して繋がり、老隊長は兵器になった。


 老隊長のこめかみに一筋の汗。ゆらりと、杖の先に炎の弾が浮かび上がる。


 彼が使うのは新人がはじめて覚えるような、そんな初歩の初歩の魔法。意外なことに、この老隊長が最も得意とするのはそんなごく普通のありきたりな魔法だった。


 ただし、その規模や精度は新人とは比べ物にならない。


「むぅん!」


 掛け声とともに炎球が爆発的に大きくなった。まるで太陽が具現したかのような圧倒的な熱量に、一般的な家屋くらいだったら簡単に飲み込めそうなほどの大きさ。


 傍目からは気づかないが、炎の魔術に造詣が深いものならば、圧縮と拡張を無理やり繰りかえして作られた超高密度の炎球だということを見抜けただろう。


 先の水球ほどの大きさはなかった上、たいていの人間は水雷の波に飲み込まれた魔物を見ていたため、それに気づいたものは少ない。


 されど、それは魔道騎士隊の隊長にふさわしい威力を持っていた。


「どおりゃあっ!」


 裂帛の気合とともに老隊長はそれを放った。


 狙いはもちろん、水雷の波の近く。また何匹か生き残っている場所だ。


 その炎球は一筋の光となって目標地点まで飛んで行くも、明るくなった空と先ほどのインパクトのせいで魔物にも、冒険者にも気づかれない。もしわかる者が見ていたら、その規模と飛距離に腰を抜かしていたことだろう。


 彼らがそれに気づいたのは着弾の直前だ。冒険者としての、危険を告げる何かがそれを知らせたのだ。


「耳をふさげぇっ!」


 誰かの声が響き渡る。その声が聞こえない範囲にいた冒険者も、生物としてのカンからとっさに耳をふさぎ、地面に伏せた。


ドォォォォ……!


 雷が同じ場所に十個落ちたほどの轟音。太陽と月が喧嘩したのではと錯覚するほどの閃光。


「うわっぷ!?」


「やりすぎだっつーの!」


「派手だなぁ、おい!」


 そして、爆炎。


 確実に千メートルは離れているというのに、それでもなお巨大といわざるを得ない大きな爆発があがり、零れるように炎が燃え広がっていく。水雷の波に耐え切れた魔物もその爆風に吹き飛ばされ、下にいる冒険者たちからも手足や首が散り散りになって飛散していくのが見えた。


 空を飛ぶ魔物は制御を失い、大地へと熱烈なキスをする。あまりに熱々だったのか、それとも恋の味を知らなかったのか、ともかくそいつは初めての衝撃にあっという間に昇天していった。


 そんな墜落してやつらを掃除するかのように、紅の炎の舌が大地を嘗め回していく。ボルバルンでもいたのだろうか、小規模の爆発が断続的に続いていた。


 なんとか生き残れたやつも、炎の舌と同属の最後っ屁に巻き込まれては敵わない。水雷に飲まれるよりかはマシだったと、そう思うほかないだろう。


 血潮と臓物を孕んで赤黒くなった水雷の波はここでようやく消えうせる。内容物がドバッと大地に撒き散らされ、周囲に異臭を振りまいた。あつらえたように、汚いそれらは爆発によって生まれた王都の一区画がすっぽり入りそうなほどの大きさのクレーターに納まっていた。


 黒焦げになり、鱗がべろりと剥がれたリンガースネーク。ばらばらになり、もはや生物としての原型を留めていないホールスパイダー。首がねじ曲がり、白く鋭い骨が肺を突き破って飛び出ているグラスウルフ。ハラワタをぶちまけ、ピンクの長い袋が鎌に引っかかっているインセクトキマイラ。


 その他多数の魔物の死体が、まさに死屍累々とつみあがり、地獄のような様相を醸し出している。


 確認のために魔晶鏡をのぞいた伝令兵は、あまりの凄惨さに酸っぱいものが腹の底からこみ上げてきて、無理やり飲み込んだ。


「し……視認できた魔物の六割の殲滅を確認! されど、まだまだ後ろから大量に迫っています!」


「ふむ、六割ですか。これだけ準備したのに、多いような少ないような、中途半端なところですね」


「何言っとる。視界の全てを洗い流すなんてそうそうできんよ」


 状況確認の伝令が城門に響き渡る中、パースと老隊長はゆったりと息をつく。戦はまだ始まったばかりだが、最初の作戦は成功したのだ。少しくらい休みたい気持ちであった。


「魔法の秘術を使ったんですがね。水が多すぎたか、拡散してしまったのか」


「ようわからんが、炎の魔法を増幅する……だったな」


 パースが使ったのは、霊鋼蚯蚓を爆殺する際にも用いた、水の電気分解により発生する水素爆鳴気を利用した水素爆発である。魔法の秘術と偽っているものの、異世界の──ミナミの科学知識だ。


 一瞬だけ、今この場にいない友人にパースは深く感謝した。


「ええ、まぁ──」


 異世界の知識だろうとなんだろうと、今この場では使えるか使えないかだ。多量の敵を屠ったとはいえ、それをさらに上回る敵が迫ってきている。戦いの本番はまだまだこれからなのだ。


「──鬨としては、十分すぎるほどでしょう?」


うぉぉぉぉ!


 敵の殲滅に勢いづいた冒険者たちが、やたらめったら、むちゃくちゃに叫びながら突っ込んでいく。


 剣を持つもの、槍をもつもの、ナイフをもつもの、弓をもつもの。


 がちゃがちゃという金属音と、何千もの人間が走ったことで発生した地響きは、波の追い討ちをかけるように魔物へと雪崩れ込んでいく。


「勝鬨もこれくらい派手にあげたいもんだな」


 老隊長がぐるりと肩をまわす。


 城壁より彼方で、盗賊の青年がウルフゴブリンの首を掻っ切った。それを合図としたかのように、魔物の鳴き声と剣戟の奏でる金属音が平原にどこまでも響き渡っていく。



──戦いが始まった。


20160809 文法、形式を含めた改稿。


減り続けるポイントとトップに出てくる『更新されていません』に耐えられなくなった。


とりあえず一話だけ。

本格的な更新はぼちぼち。

久しぶりの三つ同時更新だね。

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