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第一話
涙は出なかった。
もう枯れ果ていた。
今でこそ流すべきものだと思うけど
今まで無駄に流しすぎてもう給水信号が出ている。
マナはこちらを向いていない涼平の写真を静かに伏せた。
2001年4月25日
この日はマナの人生の中間路を大きく変える日となる。
涼平と出会った日
運命というものだろうか。
中学初めての部活。
マナは絶対テニス部と決めていて、四日あった仮入部期間を全てテニス部にあてた。
しかし本入部手続きの日、マナが向かったのはテニスコートではなく体育館だった。
母からも友人からも驚かれた。
「絶対テニスに入るって、小学校の卒業式にさんざん言ってたじゃない」
「バスケ部なんて仮入どころか見学すらしてないのに。どうして?」
不思議がられた。
しかしマナ自身もわからない。
球技は嫌いではなかったし、根っからの運動音痴というわけでもなかった。
テニスが不満になったというわけではないし、バスケが大好きというわけではないけれど
この気まぐれな決断がマナの人生をやや傾けたのである。
こうしてマナはバスケ部新入部員の十一人の中の一人として中学校生活をスタートさせた。