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東京2044  作者: mimi
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エピローグ

セナを乗せた飛行機は、日本へと無事到着した。


長旅で疲れ果てていたにも関わらず、飛行機のゲートを降りた瞬間、日本の懐かしい空気に、くすぐったいような喜びがこみ上げてくる。


飛行機の中での、長く退屈な時間は、セナに様々な事を考える為の時間を与えた。


そのせいか幾分気持ちの整理がついており、頭もすっきりとしていた。


首にかけたペンダントにそっと触れながら、セナは空港の床を、一歩一歩踏みしめ前へと進む。





セナは空港の中のカフェで遅めの朝食をとった。


身体はだるかったが、食欲は良好で、それほど落ち込んでもいなかった。


まるでイースの強さが自分の中に宿ったようだ、そんな事を考えてセナは一人微笑む。







朝食をあらかた食べ終えてから、セナはおもむろにモバイル取り出した。


人工プラスチックのキンと冷えたた久しぶりの感触に、少し戸惑ってしまう。


セナは暫くそのまま、悩ましげな表情でモバイルを見つめた。


しかし、思い切った様子で、何処かに電話をかける。


一回だけ連絡してみよう。出なければ、金輪際の別れでもいい


コールの音を聞きながら、セナはそんな事を考えた。


ーーたまには運命の選択を運に任せてみるのも悪くないーー


七回コールがなった。


相手は電話に出ない。


諦めて切ろうとしたその時。


「はい……」


呟く小さな声が、セナの耳に届いた。


久しぶりに聞くその声は、妙に懐かしかった。






二時間後、セナは待ち合わせ場所にいた。


待ち人はまだ来ない。


もうかれこれ、約束の時間から三十分が経過している。


こないのだろうか、待ちくたびれてそう思い始めた時だった。


遠くに、人混みを掻き分け必死に走ってくる令人が見えた。







セナは久しぶりの再開に、どういう顔を合わせたら良いのか分からず、令人の姿から目を反らす。


しかし令人の方はそのような事は気にも止めていないようで、セナの姿を見つけると、間髪をいれず抱きつく。


「こんな時に限って電車が遅れてよ、もう会えないんじゃないかと思ったぜ」


人ごみも気にせず強く抱きしめる令人の腕の中で、セナは何処かで感じていた緊張感が溶けてゆくのを感じた。


言葉は出てこなかった。


しかし急に泣きたいような気分に襲われる。


令人は身体を離すと、今にも泣き出しそうなセナの顔を見て優しく微笑む。


「俺はセナが別に誰を好きになろうが誰と結婚しようが構わない、だけどできるなら、一生側にいてくれよ。本当に血が繋がってる兄弟みたいにさ」


それを聞いて、セナの顔は更にくしゃりと歪む。


令人はそれを見ていられなくなったのか、もう一度セナを抱き寄せた。


「勝手にいなくなんなよ」


セナは何も言わずにその背中を一度だけ抱きしめ返した。


頬を撫でる風は暖かい。


駅の出口の方へと目をやると、遠くに満開の桜が白い花吹雪を散らしているのが見えた。


柔らかな花びらと暖かい春の空気に包まれた東京の街を、二人は再び明日に向かって歩き出した。






なんとか完結させる事ができました。

お見苦しい点が多々あったにも関わらず、お気に入り登録して下さった方、感想下さった方、読んで下さった方、ありがとうございました。

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