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東京2044  作者: mimi
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レトロカー・レディN

夜に染まりかけた冬の寒空の下。


トーキョーの街を切り刻むように張り巡らされた高速を走る、レトロカー、レディ・N。


薄藤色うすふじいろのその車体は、緑のロード・ライトに染まりながら、周りの車をどんどん追い超してゆく。


セナは助手席で体育座りのまま、事務所との連絡用のデバイスを弄んでいる。


さっきまでの自身に満ち溢れたいい女の演技をやめて素の自分に戻ったセナに、網タイツに黒いマイクロミニのドレスといういでたちは、何か違和感を感じさせる。


横でハンドルをにぎる令人は、いわばセナの用心棒だ。


セナをいざという時は身を捨ててでも危険から守る、その役目を令人は実によくこなした。


「東レイルの副社長の娘とヒモ男を別れさせる任務、終了しましたって報告しとくね」


セナは膝の上にデバイスを抱えなおすと、慣れた手つきでそれを操作する。


「次の仕事は、連続強盗の手掛かりを掴む、だって」


「手掛かりを掴むって、強盗なんだからとっ捕まえたら駄目なの?」


低い落ち着いた声でそう言うと、令人は車に備え付けられた小さな灰皿に煙草の灰を落とす。


車は、令人がよそ見をして僅かにずれた軌道を自動で修正する。


「うん、調べて報告書を作成って書いてある」


ふーん、令は面白くなさそうに相槌をうつ。


「あっ、でも見て超きれい」


そういうとセナは画像を見せる為にデバイスを令人の方に向ける。


「どれどれ」


そこに映し出された、彫の深い端正に整った顔立ちの女性の画像を見ようと、令人が身を乗り出す。


その瞬間を狙って、セナが令人のくわえていた煙草をぱっと取り上げ、窓から放り投げた。


「あってめェふざけんなよっ」


「だって未成年でしょ」


腕を組み憮然とした態度をとるセナを、令人はさらに汚い言葉で罵る。


そのオーバーリアクションな態度に、セナは何か感じたようだ。


令人の左の胸ポケットから、素早く煙草の箱を取りさる。


その煙草の箱には、日本語でも英語でもない文字がびっしり書かれている。


成分の書かれた場所を探していると、令人が箱を奪い返した。


しかしそれは、セナが箱の表記の文字列の中に、決定的な証拠を見つけてしまった後であった。


令人はばつが悪いのを隠すように、すました顔で煙草の箱をしまう。


「おかしいと思ってたのよ、給料は一緒の筈なのに令人はいつもお金ないし」


セナが心底悔しそうな顔をする。


「こんな所にお金使ってたなんて」


令人はセナの苦しそうな横顔を見て、どうするべきか迷った。


「まぁそんなに怒んなよ」


しかしセナが不意打ちをかけ箱を奪おうとすると、それを鮮やかに片手で制した。


セナはさらにむきになる。


「やめなさいよ!ヤク入りのタバコなんか!!」


「おっちょっおまえ危ねぇだろ!!」


レトロカーの中はセナのマンションに着くまで、戦場と化した。
















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